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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
〜チャレンジする力〜

井上 多恵子 [プロフィール] :1月号

 2010年のスタートにあたり、「チャレンジする力」について語ってみたい。長年惰性に流される日々を過ごした結果、挫折を経験し、その反省からチャレンジし続けることの大事さを実感した私からのメッセージとして。
 会社では数年前に研修の担当になり、「学び」の世界に突入した。そして、2009年、研修から人財開発へと担当領域が広がり、今、興味が尽きない「学び」の旅の途上にいる。新しい仕組みを導入し、手法を試み、PDCAを回す。新しい仕組みの導入は反発を伴う。できれば避けたいと思いつつも、否定的な反応をした人にコンタクトし、対話を通じて理解と協力を求める。少しずつでも信頼関係が構築できることを期待して。
 社外では、PMAJ協会を通じて、このオンラインジャーナルの執筆と大学院での講義にチャレンジできた。出来栄えはさておき、ジャーナル用の原稿を毎月提出する、というのは大変だ。書きたいことはあっても、言葉にするのは難しい。そんな中、先日嬉しいことがあった。PMなどの研修を英語で提供している会社から送られた資料に、「ジャーナルの記事を読んで」というレターが添えられていたのだ!読んでくれている人がいるという事実は、書き続ける力になる。
 講義は、「国際化時代のプロジェクトコミュニケーション」と題して、東北大学 大学院 高度技術経営塾で実施した。先方のニーズのヒアリングに基づき一から案を作成し、フィードバックを受けながら仕上げていく過程で、PMAJ協会の古園理事に多くのアドバイスを頂いた。「完成した!」と思った資料に対して、「いい線いっているので、これをベースに仕上げていきましょう」という返事が返ってきて、「エー!まだ手を入れなきゃいけないの?!」とがっくりきたこともあった。しかし、それを乗り越えたからこそ、いい講義ができたのだと感謝している。
 そして、2010年。不景気でリソースが限られる中、会社では新しい施策を打ち出さなければならない。PMAJ協会関係では、コミュニケーションに加えて、リソースと関係性マネジメントの講義を担当させてもらう。両方とも、日々の業務を通じて大事さを痛感している領域なので、リアリティを持って話せるが、ちゃんとした講義にするには、リハが必要だ。2月には、財団法人海外技術者研修協会(AOTS)で、PMAJ協会のメンバーと共に、フィリピンの技術者に対し、講師をする。海外の著名な先生方から一目も二目もおかれているPMAJ協会の田中理事長を見習い、私なりに、できる範囲でP2Mの海外普及の一翼を担いたいと思っている。
 オンラインジャーナルの執筆も、続けていきたい。そのためには、私自身が新しい経験をし、考えを深めていかなければならない。そういう意味で、これまで接点が無かったフィリピンの技術者に対して講義ができるというのは、幸せな話だ。実は、今回の原稿は、休暇先のタイのプーケットで書いている。ここ数年はアジアに行くことが多く、アジアの人が話す英語の発音にも随分慣れてきた。タイ人の英語は、最後の子音をはっきりと発音しないせいか、ソフトだ。海外のリゾート地に行くとたいてい日本人が多いのだが、ここプーケットは欧州人が多い。飛行場の待合室では、ノルウエーとスエーデンの人に会った。滞在中、できるだけコミュニケーションを取り、反応を観察し、刺激を得たい。
 もう一つのチャレンジが、3冊目となる共著本の出版だ。ここ数年間抱き続け、この出版不況の中で一時はあきらめかけた夢が、ようやく実現する。グローバルと英語をキーワードとするこの本、今を生きる日本人に必要なエッセンスをぎゅっと入れ込むつもりだ。会社やレジュメプロでの仕事、講義、通訳、翻訳に加え、中学生、高校生、主婦、ビジネスパーソンに至るまで幅広く英語を教えてきた経験を踏まえている。グローバル化された社会でプロジェクトに携わる皆さんにも、きっと役に立つと信じている。だからこそ、一日も早く、オンラインジャーナルで出版のご報告ができるようにしたい。その為には、この原稿を書き終えた後、数時間はPCに向かわなければならない。一日中、プールサイドでのんびり寝そべっていたいという甘い誘惑に打ち勝って。
 皆さんも、今年はぜひ、グローバルをキーワードに、何か一つチャレンジしてみたらどうだろうか?チャレンジする力、そして、グローバルと言っても、難しく考えることは無い。皆さんの身近にチャンスはあるはず。例えば、私は先週、近所にできたスーパ銭湯で台湾の方との会話を楽しんだ。黙ってお湯につかっているのもつまらないから、声をかけてみたら話がはずみ、台湾についての新たな知識を得ることができた。そんなちょっとしたことを続けていくことで、力になる。反対に、かつての私のように何もしないと、ある日、自分に力が無いことに気づき、狼狽することになる。どうぞ、チャレンジングな良い年をお過ごしください!
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