PMプロの知恵コーナー
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プロジェクトマネジャーの知恵 (6)
「「困ったときの知恵」とは何か (2)」

渡辺 貢成:12月号

1. 前回の復習
1.1 知恵は困らないと出てこない
1.2 困っても知恵の出ない人が多い
1.3 知恵の出ない人には知恵の出せない基本属性がある
1.4 知恵の出る人にも基本属性がある
ということで、夫々の基本属性を示し、次回は知恵の出る人の基本属性を説明するとしてエッセイを締めくくった。

2. 知恵の出し方
今回は知恵の出し方の説明をする。とこまで書き始めて困ったことに出会った。困った理由を示すために、前回示した「知恵の出る人の基本属性」を再度記載する。
2.1 知恵の出る人の基本的属性
1)好奇心の旺盛な人
2)意欲のある人
3)本質を捉えることを心がけている人
4)コンピテンシーのある人
5)コンテキストを理解でき、目的展開のできる人
6)切羽詰ると力を発揮できる人
7)問題解決に価値観を見出す人
8)ポケットにたくさん知識を持っている人
9)考えることが好きな人
10)柔軟な脳の持ち主
11)可能性を信じる人
12)無邪気な脳の持ち主(無意識脳の活躍できる人)

上記の基本属性は正しい。しかし、「好奇心が旺盛」、「意欲のある人」でも知恵が出るとは限らない。この基本属性から知恵の出し方の説明は不可能であることがわかった。ここで筆者は重大な原理を発見した。「成功者のマネをしても成功はできないが、失敗者の行動を反面教師とすると、知恵を出す知恵が出るかもしれない」ということである。
そこで再度「知恵の出ない人の基本属性」に再登場願った。
2.2 知恵の出ない人の基本的属性
1) 問題発見力不足
@日頃問題意識を持っていない人
A問題が起きても自分の問題と考えない人
2) 課題認知力のない人
@失敗を恐れる人、極度の出世願望者
A難問に直面するといなくなる人
Bできない理由を整然と述べる人
C最初からできると考えない人
D制約条件を先に認定してしまう人
3) 問題解決力のない人
@知っていることと、できることを勘違いしている人
Aツールでモノを考える人
Bものごとを表面的にしか捉えられない人
C問題の本質をつかめない人
Dコンテキストを理解できない人
E目的展開のできない人
F企画力のない人
G人を説得することが苦手な人
H行動力のない人
なぜ、知恵の出せない人の基本属性を書くかというと、サラリーマンの80%はこの基本属性の持ち主だからである。しかし、あなたは怒ってはいけない。この基本属性に逆らって仕事をすれば、残りの20%の仲間入りが出来るからである。

なんとこの基本属性に逆らって行動すれば知恵が出るようになると前回示している。そこでこの手法で、知恵を出す実践的訓練法を提供することにした。

1) 問題発見力不足解消
問題発見力不足を解消するには、常に問題意識を持って、日常の仕事に努めていると色々なものが見えてくる、ということだとわかる。そこで問題が発生したら、自分だったらどうして解決するか、常に頭の中で考えてみる。これで人に知られずに知恵を出す訓練ができる。この方式は筆者が業界を変わるたびに新規参入者となったために、業界の習慣を学び、提案が受け入れられるための訓練法として採用したものである。
2) 課題認知力増強法
失敗を恐れず、難問に直面し、自分でこの問題は処理できると心に言い聞かせ、どうすれば課題が解決できるか考える。最初に「問題の本質は何か」とゼロベースで考えることである。多くの問題は多くの制約条件がある。制約条件は@幾らで、A何時までに、Bこのような内容でと仕様書に書かれている。これを頭に入れて考えると、必ず解決不能になる。この際この制約条件を忘れる必要がある。忘れるとゼロベースの発想で問題が解決できる案が見えてくる。次に問題解決案から制約条件を眺めてみると、納期変更や、コスト増加をしてでもやりたい案であったら、制約条件は交渉事項となる。このような発想ができる人材が知恵の出る人である。
3) 問題解決力を高めるには
 第一段階で問題の本質を掴めばよい。最近はツールでものを考え、ツールにないことは解決できないと本気で考えている人が多くなった。ツールを使って、わかりやすく進める講座が増えた結果かも知れない。残念ながら問題の本質が都合よく手持ちのツールで理解できるとは限らない。「まちぼっけ」という歌がある。ツール依存症は「木の切り株に獲物がぶつかり、猟ができたことに味をしめた猟師が、その後切り株の前で獲物がぶつかるのを待つ猟師」と同じであることに気がついていない。
第二段階では、「問題の本質」がわかったら、次の要求を出す側のコンテキスト(問題の背景)を理解することである。解決の幅が広がり、答えが出しやすくなる。
第三段階では、要求者のコンテキストを理解することによって、「その目的だったら、このように展開できます」と企画、提案できる。
第四段階は要求者に対する説得力である。問題の解決案が優れていても説得できる論理構成と、情による納得感を提供できないと最終的には解決できない。

さて、上記の事項ができるのは、勇気を持って行動できる信念と気力を充実させる日頃の心構えが必要ということになる。また、ここに書いたプロセスは知恵を出す手順と考えていい。
なお、筆者は昔、エンジニアリングビジネス誌で芝 安曇氏が書いた「プロジェクトマネジャー自在氏の経験則」を思い出した。次回以降は自在氏の知恵を拝借する。
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