PMRクラブコーナー
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合意形成の大切さと進め方

藤澤 正則 (PMR) [プロフィール] :11月号

 皆様、こんにちは、キユーピー(株)の藤澤です。
 私は、食品製造業に関っていて、サービスモデルでの価値創出が事業の主な業務です。
 従来から各部門では、各種改善活動やQCなどの様々な現場活動が行われている。
 現場においては、事業環境の変化の直接的な影響を受けることが少ないため、これまでの部門内での積み重ねが中心であり、あまり、外の環境(例えば、マーケットの動きや資源の動きなど)の影響を受けずに進めてきた。近年、事業環境の変化が早く、激しく、外の影響が直接的な形で見える状況になり、事業環境の変化に適用していくには、部門を越えて、プロジェクトを行う必要がある。しかし、従来の方法では、時間軸で考えると、市環境の変化に適用しにくい可能性もあり、P2Mの見方・考え方を取り入れて、サービスモデルの事業改革を進めている。
 早い速度に適用するには、すぐに動くことが得策のように考えられる。しかし、実際には、認識のギャップがある状態で動くことは、良い結果を生み出されない。認識のギャップは、「実施時」「運用時」「評価時」に多く発生するので、入り口での合意形成のプロセスの導入を提唱する。

1.合意形成する必要性への理解
 会社や部門を越えた取り組みを行うには、入り口で、全体の価値観と各部門が、持っている価値観を共有し、共通認識にしていく必要性がある。しかし、各個人がそのレベルになるには、時間を要する。実際、日常業務において、事業が何をもって、価値創出をしているか、それを実現するために各部門、個人とのつながりがどうなっているかを意識して、行動はしていない。
 そこで、認識にギャップがあること、ゼロベースでの「見て」「感じて」「話し合い」そして、「動く」ことで構築していくことを合意する。

2.合意形成する内容の確認
 話し合うことを合意できたら、次に、合意する内容を構築する。
 例えば、ステップ1として、「方針」、ステップ2として、「いつ、どこで、だれに、どのようにして、サービスや商品を提供して価値創出を行っているか」、ステップ3として、「そのサービスや商品が価値となるまでの業務プロセス」、ステップ4として、「それに関わる組織の役割」、ステップ5として、「お金、情報の流れと行動、結果、評価のメカニズム」などが考えられる。

3.合意形成の進め方
 合意形成する内容について、「見て」「感じて」「話し合う」、そして、「動く」形にしていくのは、まず、現状の「ありのままの姿」について、前述の内容を進めていく。その後、「あるべき姿」を同じように進めていき、「ありのままの姿」と「あるべき姿」の間のある課題を抽出して、実際の行動計画を構築していく。
 現状の「ありのままの姿」から入るのは、日常の業務がこの範囲であり、提供しているサービスや商品を実際に見ることや感じることができるので、それを同時に経験することにより、話し合いをしやすく、イメージしやすいからである。

4.まとめ
 会社や部門を越えるようなプロジェクトでは、進んでいくにつれて、認識のギャップが大きくなり、進まなくなることが多い。
 入り口での合意形成(認識のギャップと合意する必要な事項があること)を行うことは、関わる人や組織に実現できるイメージが伝わり理解しやすく、その結果、行動しやすくなる。人は、自分自身がイメージできない変化を嫌い、現状維持や安定を望む傾向がある。組織では、更に、その傾向が強くなり、組織自体が独自の価値観を持って、未知の事象に対して、拒絶反応を起こすので、どうイメージできるかが重要なポイントであり、それができると、同時に多くの組織で、早く、進めることが可能になる。
以上

「参考文献」
@P2Mプロジェクト&プログラムマネジメント標準ガイドブック
A東京P2M研究会資料2007年度、2008年度
B製造業向けP2M活用ガイド
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