図書紹介
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「日本人の知らない日本語」
(蛇蔵&海野凪子著、メディアファクトリー社、2009年7月31日発行、第12刷、141ページ、800円+税)

デニマルさん:11月号

今回紹介の本は、今年の夏に一時期ベストセラーとなった。筆者も日本語教師の勉強をしていた時期があった。過去に実習で教壇に立って似たような経験をしたので、懐かさもあって読んでみた。現在、日本に滞在する外国人は220万人である。これらの外国人は、永住者を除いて殆んど日本語を知らないで来日するケースが多いという。彼等は、世界共通語の英語で何とかなると思っているのかも知れない。しかし最近では、英語も全く話せない外国人が多いと聞く。こうした外国人に日本語を教えるのが日本語教師である。そこで教える語学教育法は、日本語による直接「読み、書き、話す」教育が一般的である。だから日本語学校での共通語は、英語ではなく「日本語」である。ここで紹介の会話が飛び交っている。日本語学校で外国人から学ぶことが多い日本語は、異文化交流の原点である。

日本語学校で学ぶ日本語   ―― 素朴な疑問の応酬 ――
日本語学校では、子供が言葉を覚える時と同様に物を見て単語を覚える直接法でやっている。本を見せて「本」と覚える。勉強が進んでくると身の回りのものが話題となる。その中でも物を数える数助詞は、日本人にとっても難解である。椅子は「脚」と数えるが、「便器」は何と言うか。正確には「1据(すえ)」だそうである。手袋(1双)、スキーの板(1台)等、こうした素朴な疑問で先生の方が勉強になると言うが、余り役立つとは思えない。

バイト先で学ぶ日本語  ―― 先輩やお客さんの言葉 ――
日本語学校で勉強している学生は、「就学生」の在留ビザで滞在している。その後、大学等に進学するのだが、多くの学生はアルバイトをしている。その職場の先輩やお客さんから多くの日本語を学んでくる。限られた職場(厨房の洗い場やウエイトレス等)での言葉は、日常語でもあるが、間違いだらけである。「お会計、千円からお預かりします」は、日本人でも使っている。間違いを指摘出来ない日本人にも日本語学校で学ぶ必要がありそうだ。

外国で学ぶ日本語  ―― 超学問的な言葉と会話 ――
日本語学校には、日本語を知らない外国人が殆どであるが、中には例外もあるらしい。情報化時代である。映画やビデオや漫画で日本好きとなった人は、特殊な日本語を勉強している。特に、侍映画やヤクザ映画での言葉も非日常的な言葉である。女性が「何々でござる」と話すことに何の疑問を持たない外国人に、正しい日本語を教えるのは大変な作業でもある。日本語教師は、日本語を教えながら日本文化や日本を学んでいるのかも知れない。

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