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製造業向けP2M活用調査研究委員会に参加して

林 謙三 [プロフィール] :10月号

 首題の委員会に参加させて戴きました林です。田中理事長のディープハート、北村委員長のバイタリティ、清水先生のロジカルシンキング、それに各産業界の第一線の面々が集う刺激的な委員会でした。小職に与えられたテーマは、日本の製造業の事業戦略および製造業の価値創造とプロジェクト指向経営に関する事項でしたが、それは「いま、なぜ、製造業にプログラム & プロジェクト・マネジメントなのか?」という自らへの問いかけでもありました。この問いに対する小職なりの回答を、現在「プロジェクト指向経営」として準備しつつあり、近いうちに志ある人に問おうと考えています。
 そんな中、トヨタ自動車が開発した初代プリウスから3代目プリウスまでの開発に携わった熱血漢の面々を取材した木野龍逸著「ハイブリッド」〔文春新書、2009〕を読みました。「トヨタが二十一世紀に向かって提案できるような、シンプルで高性能なクルマをつくるべきではないか」という当時(1993年)の副社長であった金原淑郎氏の号令のもとに、初代プリウスは開発に着手され、幾多の紆余曲折を経て、1997年末になんとか発売にこぎ着けられたことが記されている。
 この書籍を読んで、改めて新製品開発における創発的(共創的)意思決定の重要性と、それを可能にする組織能力の重要性を考えさせられた。周知の如く、創発の仕組みはノーベル化学賞を受賞したI.プリゴジンが多くの書籍の中で述べていますが、要素間の局所的な相互作用により大域的な挙動が現れ、その大域的な挙動が要素の振る舞いを拘束するという双方向のダイナミックなプロセスを通じて、新しい機能や性質、行動が形成されるということです。この現象はよく水が沸騰するまでのプロセスとして例示されます。極論すれば「辺境は中心を破壊する」ということでしょうか? この創発的意思決定の対極に位置するのが決定論的意思決定で、プログラム&プロジェクト・マネジメントを実践するうえで、最重要項目のひとつであると考えています。
 以上、委員会に参加させて戴いた所感を述べましたが、多様化が進む製造業に「製造業向けP2M活用ガイド」が活用され、「物語性」に富んだプログラム & プロジェクト・マネジメントが実践され、更に「製造業向けP2M活用ガイド」がブラッシュアップされんことを期待する次第です。
(了)
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