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「ダイバーシティ時代のプロジェクトマネジメント」
〜プロを目指す力〜

井上 多恵子 [プロフィール] :9月号

 Linkedinというサービスを数週間前、初めて聞いた。皆さんは聞いたことがあるだろうか。アメリカを中心に2003年から使われているビジネス版SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だ。国際結婚をして20年近くサンフランシスコに住んでいる学生時代の友人に教えてもらった。彼女の夫がこのLinkedin によって7回目の転職を最近果たしたのだそうだ。
 ウイキペディアには、次のように書かれている。「人材募集や求職,商談相手探し,人材や企業の評価を調べる場としてシリコンバレーでのビジネスに欠かせないとされる。2009年8月現在の登録ユーザーは全世界で4,500万人を超える」 簡単な経歴を掲載しておき、友人そして、友人の友人という信用できる関係の中で、ある人が求人や商談などを目的にその人のことをもっと知りたいと思えば、Linkedinの運営元にコンタクトし、運営元から本人に連絡がいく。本人がその話を進めたいと思えば、自分の履歴書などを開示する。興味が無ければ、返信しなくていい。
 友人の夫も、大手IT系の会社の採用担当者からLinkedinを通じてコンタクトがあったそうだ。友人も現在は子育て中で、すぐに仕事に復帰することは考えていないものの、先を見込して卒業した大学院のネットワークに自分の情報を掲載しているそうだ。「自分の人生は自分で切り開いていく。前もって準備し、チャンスを狙う」という、したたかな生き方、友人は強いな、と感心した。
 企業が求人広告を出して広く人材を募集し、多数の応募書類の中から適任者を探すという従来のやり方が変化を遂げている中、ネットワークが、キャリアを構築していく上でいかに大事かということがわかる。加えて求められるのが、自分を売り込むためのプロとしての力だ。履歴書を常に最新のものにしておく、というのも必要だろう。友人の夫も、プログラミングのスキルと経験があるので、不況下でも採用担当者からアプローチを受けることができた。
 PMAJ協会のメンバーで、ゴールドラットコンサルティングのディレクターとして活躍中の岸良さんが、11月にTOC-ICOの国際会議を日本で開催する準備をしている。岸良さんによると、「ほとんどの人が会社に参加費を払ってもらうのではなく自己研鑽への投資という意味で、個人参加というのがこの国際大会の特徴」だ。世界中から集まる人々が、TOC-ICOの国際会議という場を通じて、新たなネットワークをきづき、自分の意思でプロとして更なる高みを目指しているのだ。
 日本でも人員削減が叫ばれる中、60歳ぐらいまで働き続けるためには、何か「これで貢献できる」という領域を持つ必要がある。組織が再編され、ポストが減る度に、降格される人を何人も見てきた。履歴書を書く仕事をオフタイムにやっている関係から、以前世話になった知り合いのために履歴書を書いてあげたこともある。彼の場合はそれまでに培ってきた「売れる経験」があったため、幸いなことに無事社内で同等のポジションが見つかった。しかし、彼のように上手くいく人ばかりではない。社外に働く場を見つけることを余儀なくされる人もいるだろう。私も今は管理職の立場だが、以前仕事上で壁にぶつかったこともあり、危機感は持っている。そこでせめて自分が強みとするグローバルコミュニケーションスキルは磨いておこうと心がけている。このジャーナルに寄稿しているのもその一環だ。
 このジャーナルを読んでくれている皆さんは、P2Mの資格を持ち、PMAJ協会のメンバーになっているわけだから、既にプロとして活躍されている、あるいは目指す過程にある。ぜひ自分の将来に対するビジョンを持ち、目標に向かって、協会の活動に積極的に参加し、力を磨いて欲しい。ジャーナルを読んだり大会に行ったりするだけでも十分刺激になると思うが、もっとやってみたい、と思う人は、ぜひ発信する側にもまわって欲しい。私のように、このオンラインジャーナルに寄稿してもいいし、紙媒体で原稿を公募する際に応じてもいい。シンポジウムの準備メンバーやジャーナルの編集委員になったり、特定の勉強会に参加したり、様々な形で関われる場を協会は提供している。私も協会のおかげで、大会での発表や講師など、さまざまな経験を積ましてもらっている。会社とはまた違った刺激を受け、視野も広がったと思う。協会が発展することが、そのメンバーである私たちの地位も高めてくれる。ぜひよりいい活動を協会ができるよう、あなたも参画してみませんか?
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