グローバルフォーラム
先号   次号

「グローバルPMへの窓」(第38回)
P2M 2009ヨーロッパ夏の陣 その1

グローバルPMアナリスト  田中 弘 [プロフィール] :9月号

 今月号からは、合計7回の予定で、「P2M 2009ヨーロッパ夏の陣」と題して、コラムをお届けしたい。
 筆者は、今年は、これまで数十年にわたり慣れ親しんできたPM関連の海外出講を年初から控えてきた。これは、経済状況が思わしくなく、PMAJの経営に多大の時間を費やす必要があったためと、世界のPM協会も同じように苦労をしており、場の設定が少なくなったことの両方からそうなったものである。
 しかし、夏になると、一応PM研究者としての身分もあるので、協力協定などコミットメントがある海外のパートナーの、恒例となっているヨーロッパでのP2Mを中心としたセミナーがあり、これを今年も実施中である。
 これまで、ウクライナPM協会の招聘に応じての6月末から7月第1週にかけての”P2M Week in Ukraine” 、7月第3週のフランス ESC Lille マネジメント大学院でのP2M講義が無事終了し、ただ今、この原稿を、明後日、8月17日からの ESC Lille でのEDEN Doctoral Seminar を控えて同校の所在地フランス リール市のアパートメントホテルにて書いている。
 さて、主題には関係がないが、これらの出講は、すべて基本的に招聘先の費用負担で実現した。2002年から2003年頃、世界のPM界のイベントでは4つのイズムという戯言があった。戯言であるので、根拠は無いが、「wwwコロニアリズム(植民地主義)、xxxキャピタリズム(資本主義)、YYYアナクロリズム(南半球で鎖国主義に入っていたPM協会のこと)、PMCC(現在はPMAJ)物質主義(金、金)」といったものである。
 時代は変わったものである。筆者も肩身が狭い。

 さて、「P2M 2009ヨーロッパ夏の陣」の第一幕はウクライナでの ”P2M Week 2009“ であった。世界P2M三大プロモーターであり筆者の心の友である、ウクライナPM協会長、セルゲイ・ブシュエブ国立キエフ建設・建築大学PM学部長(陸軍少将・国税庁最高顧問)の招待により、6月29日にキエフに向けてフランクフルト経由旅立った。
 筆者は、現在ANAのマイレージ会員である。80年に前半迄は勤務先の指示通りJAL利用、自分でエアラインを指定できるようになってからは、米国出張が主であったのでゲートウェイのシアトル・タコマ空港に魅せられたこともありNorthwest専門(80年代の後半に同社のWorldPerksという世界のマイレージクラブのはしりに加入)、2000年代に入るとNWも飽きて、American Airways (AAA) を通じてのOne World マイレージクラブ入り(JAL もメンバー)、そして、Global PM Forum会長になり世界のあちこちに行くようになると、なんといっても、日本の航空会社でサービスが圧倒的に優れており、また背景として航空会社の加盟数とカバレージ(就港都市)が多いStar AllianceのメンバーであることからANAとスターアライアンスを利用するようになった。
 フランクフルト行きのANAエコノミークラスは満席であった。これには、経済不況にも拘わらず、また、新型インフルエンザの影響が十分に残っていた時期でもあり、人の営みのたくましさを感じた。
 フランクフルトで4時間乗継待ちの後(フランクフルトのルフトハンザのラウンジはワインの質で素晴らしいので、長時間のトランジットでは飲み過ぎる)、キエフ行きルフトハンザ便で翌日午前2時着。ブシュエブ会長自らのお出迎えを受ける。日本ではないが、インド、中東、東欧・中央アジアなどでは、深夜着便は日常茶飯事で、かつて、インドネシアジャカルタの駐在員を4年経験し、来訪の社員やお客様の、夜の空港出迎え・早朝見送りを週に3回はこなしていた我が身に照らして、本当にご苦労なことであると感じた次第である。
 当日は、会長と空港のそばのホテルに宿泊した。これが完全な旅籠宿で、しかもキエフ市内のかなりのホテル相当の100ユーロの宿泊料で会長えらい立腹された。翌日、最初のイベントである、キエフから北に150キロのスロブテッチ市に会長の車で向かった。

キエフ空港そばの旅籠宿で チェルノビルへの国道
キエフ空港そばの旅籠宿で チェルノビルへの国道

 目的はチチェルノビル原発公社のCEO以下幹部20名向けの特注P2Mマスタークラスの実施である。周知のとおり、同原発は1984年4月26日に原子炉の運転員の単純ミスの連鎖により大爆発事故を起こし、当直の運転員や消防隊員20名が殉死し、その後近隣住民の被爆死や被爆災害が続いている。
 事故以後、各種の復興プロジェクトが世界の支援を得て続いているが、肝心な旧原発の後処理プロジェクトでは、第1期の使用済み核燃料の貯蔵設備プロジェクトがフランス連合元請けで施工されたが性能が出ず、元請連合がほぼ受注金額の返還を行い、いまだに工事続行中であるが、一方次のステップの使用済み核燃料封入(Confinement) プロジェクト(3千億円規模:公表で、実際には多分3倍はかかると)が開始されている。この世界初めての大規模封入プロジェクトを経てデコミッショニング(原子炉の完全撤去)と放射能除染の完了まであと60年はかかるとのこと。
 本マスタークラスは、プロジェクトのマネジメント層のほとんどが、Bushuyev会長の大学の教え子で、国のPM最高責任者として、これまでPM運営の諮問を行いまた、PM訓練コースを実施してきた会長と同事業所の信頼関係で実現したものである。♥♥♥

ページトップに戻る