PMプロの知恵コーナー
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プロジェクトマネジャーの知恵 (2)
「プロマネの知恵とは何か」−知恵の定義−

渡辺 貢成:8月号

1. 何かを理解してもらうには言葉の定義から入るのがプロマネの知恵である。これを3段論法的に説明する。
@   ビジネスに関連したプロジェクトは通常契約から始まる。
A   契約は言葉の定義から始まる。同じ言葉でも正しく定義しないと、発注者、受注者、双方の意思が正しく伝わらない。そしてトラブルが発生すると裁判になる。裁判は契約をベースに争われ、細かいところでは言葉の定義が勝敗の鍵となる。これが欧米の常識である。
B   プロマネは全世界に通じる健全な常識の持ち主であることが求められており、これが多くの人々からの信頼を勝ちうる第一の要素だからである。
定義の必要なことをご理解いただけたとして言葉の定義に入る。

1.1 知恵には2種類ある
(1) 智慧の定義(出典:柳沢桂子著「生きて死ぬ智慧」−般若心経―)
@   宗教的に使われて、宇宙根源の持つ真理である。般若心教がその一例である
A   般若心教:聖なる観音(自在菩薩;智慧を司る時は自在菩薩、慈悲を司るときは観音菩薩)は求道者として、真理に対する正しい智慧の完成を目指していたとき、宇宙に存在するものには5つの要素があることに気がつきました。

ここでの教えは「宇宙」と「空」に関する相対性です。「空」の心を持つ人は迷いがあっても、迷いがない心でいられる。こうして、老いもなく、死もなく、老いと死が実際にあってもそれを恐れることもない。真理を求める人は間違った考えや、無理な要求をもちません。無常のなかで暮らしながら楽園を発見し、幸せに生きることができます。

B   プロマネの勝手な解釈:宇宙空間から見ると、人間社会の欲望や価値観など取るに足らないもので、誰かが出世しようと、しまいと、宇宙にとって何にも変化しない。プロマネの智慧とは「プロマネは無欲に徹し、原理原則を忠実に守ること」がプロジェクト関係者すべての幸せに繋がる。また、プロジェクトの成功に貢献できる。
(2) 知恵の定義(1)
@   人間の持つ経験的な蓄積の中で価値があると認められた直感的・総合的なもので、知識を活用し、状況判断を含む問題解決を行いうるような総合能力
A   知識と知恵の相関:プロジェクトとの関連で理解すると
ナレッジ・マネジメントの効果
知識: ある目的のもとで情報を関連付け、誰にでも理解される形に体系化したもので、新しい知識創造のための基礎となるもの。
プロジェクトとの関係性で見ると、知識は静的なもので、プロジェクトの状況に関係なく存在する
知恵: プロジェクトは常にダイナミックに変化した中で、最適と思われる解を求めて、決断し行動する。したがって知識をそのまま使うのではなく、状況に合わせて活用するとき、知恵が求められる。したがって知恵は一過性のものといえる。一方知識は普遍性のあるものである。
余談:知識は売れるが、知恵はその場限りなので売れない。知恵を借りる。知恵を貸す。貸し借りの関係である

  知恵のある知識の活用事例:ある有効な知識をITソフト化したパッケージがある。日本ではそのソフトを導入し、ソフトが自社の業務に合わない場合は、カストマイズと称して、ソフトを自社に合わせる。同じソフトを欧米の支店で導入すると、ソフトの持つ効用に合わせて組織を変えて、効率よく業務を進めている。日本では折角の高価なソフトを導入しながら、従来どおりのしごとを行っている、
どちらが知恵のある仕事をしているか、常識のある人なら理解できるが、日本では実行できないところに問題があると、ソニーの元会長出井氏がNHKで話してくれた。
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