今月のひとこと
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彼知知己

オンライン編集長 岩下 幸功 [プロフィール] :8月号

 前回、見観マネジメントがパーソナルマネジメントにおける要諦だと述べましたが、その道理は約2500年前の中国の知見に求めることができます。

彼知知己  孫子の兵法書に「知彼知己、百戦不殆(彼(かれ)を知り、己(おのれ)を知らば、百戦(ひゃくせん)殆(あやう)からず )」という言葉があります。「敵を知り己を知れば、百回戦っても負けることはない」と訳されますが、ここでいう「彼」とは、必ずしも「敵」である必要はありません。P2Mのプロファイリングマネジメント風に「彼」を「あるべき姿」、「己」を「あるがままの姿」と理解すると、P2Mの概念が古の思想に通じていることが分かります。つまり「あるべき姿(彼)を知り、あるがままの姿(己)を知れば、危険に陥ることはない」という意味になります。環境の変化に対応した「あるべき姿(彼)」を描き、現実を見据えた「あるがままの姿(己)」を直視することで、その差分(GAP)が課題として認識され、その課題に対応する適切な戦略が導かれます。もし、この「彼己」の認識に無知や驕りによる曖昧さや誤りがあると、結果として差分認識を誤り、誤った課題設定(What to do)を導き、誤った戦略策定(How to do)を行うことになります。これが敗因となる道理な訳です。同様に、「不知彼而知己、一勝一負」は「あるべき姿は知らないが、あるがままの姿を知っていれば、引き分けることができる」又「知彼而不知己、一勝一負」は「あるべき姿は知っているが、あるがままの姿を知らなければ、勝ったり負けたりする」更に、「不知彼、不知己、毎戦必敗」は「あるべき姿もあるがままの姿も知らなければ、必ず負ける」という解釈にもなります。これは戦略要諦として、「ポジショニングを客観化し、ポジショニングに合った戦い方をする」という原理原則の徹底に他なりません。従って、自己革新においても先ず「ありたい姿(観)」と「あるがままの姿(見)」を冷厳に描く切ることが重要になります。先達の普遍的な教えに驚くとともに、これは現代社会にも立派に通じる言葉だと思います。
以上
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