PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (16) 「自分の時間をうまく使う裏業」

芝 安曇:7月号

6月号は「他人の時間をうまく使う裏業」だった。今月号は「自分の時間をうまく使う裏業」とした。今回はプロマネでなく、部長の裏業の話をする。長年プロマネをしていたが、部長の仕事をおおせつかった。配下に幾多のプロジェクトがある。プロジェクトは色々なことが起こるから、部長も気が抜けない。まともに部長職を勤めると、体がいくつあっても足りない。部長になって、自分なりの部長の仕事とは何かを考えた。

(1) 部長の仕事は何か
  1)部長の仕事は過去に仕事の延長ではなく、過去にやってこなかった何かである
  2)部長が責任を取る仕事は何か
   2−1)各プロジェクトの成功のための管理(QCD管理)の支援
   2−2)各プロジェクトで失敗しないための管理(リスク管理)の支援
   2−3)プロジェクト人材の育成と供給(これが一番難しい)
  3)部長の仕事は無限にあるから、誰かとダブル仕事は、ダブった相手に任せるという考えはどうか
(2) 何をしたか
  1)各プロジェクト成功のためのQCD管理
解答:QCDはプロジェクトマネジャーが管理している。しかもQ(品質)、D(納期)の管理は顧客のプロジェクトがチェックしている。ダブルチェックしているものは彼らに任せることにした。
ダブルチェックしていないものを考えた。二つあった。一つはコスト管理である。顧客はコスト管理するのではなく、プロジェクトが損をする方向に行動する。これは部長の大きなチェック事項である。
二番目は顧客チェックである。日本では顧客をチェックするなどと大それたことを考える人はいない。しかし、自社をみてもプロジェクトが十分な人材で構成されることは少ない。プロジェクトの担当者がプロジェクトマネジャーの意向をすべて理解して、仕事をしているとは限らない。まして顧客のプロジェクトの担当者は顧客の実力者の意向をすべて理解しているとは限らない。顧客担当者の力量から、起こるべきリスクを予め考えておく必要がある。できることなら、部長は顧客の当該プロジェクトに関係する実力者を調べ、懇意になることが重要である。
部長職としてやったこと
@プロジェクトの成功管理:プロジェクト初期段階で成功に必要なすべての検討項目の確認。ここでは構想計画がもっとも重要である。(プロジェクトの成功は上流で決まるという経験則)
A 予算管理、変更管理:プロジェクト当初の計画から外れるものは例外管理として部長の許可制とした。予め承認した範囲内ではプロマネにすべてを任せる。
文字に書くと堅苦しいが、実際はプロジェクトの初期に固めることを確認して、概ねは任せる(人に何かを任せるということは、任せる内容の範囲と評価基準を明確にすることである)。
  2)各プロジェクトの失敗防止のための管理(リスク管理)
@自社内のリスクマネジメント
ユニークなリスクマネジメントを実施した。プロジェクトマネジャーから被害をこうむる人々からプロジェクトの問題点を聞いて歩くことである。被害者はプロジェクトの欠陥をよく認識しているから、事前に問題点を認識し、これを防ぐことができる。問題点は上流から調べても効果的でなく、下流から調べると、不安材料を集めることができる。これで手を打つと、プロジェクトマネジャーを傷つけずに、問題点の早期解決が図れる。
(仕事を管理することと、人を管理することでは天地の差がある。仕事を管理することで、人の管理は不要になる)
A顧客発のリスクマネジメント
顧客担当の無理な要求を事前に防ぐことである。(大変困難であるが、顧客実力者の意向を知っていると、交渉しやすい)
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