PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (15) 「他人の時間をうまく使う裏業」

芝 安曇:6月号

神様はすべての人間に対し、必ずしも公平ではないが、一つだけ公平な扱いをしている。それは時間である。貧乏人の子は、金持ちの子に対し、最初からハンディキャップがあるが、これを補うのが時間の使い方である。

自在氏は日本人が時間の使い方に無神経であることを遺憾に思っている。第一に残業が多い。上司が悪いのか、本人が悪いのか簡単にはいえないが、顧客も含めて、時間を大切にするという気持ちがない。顧客は最初に決めるべき問題を先送りして、後で簡単に変更する。この問題は大変重要であるが、プロマネが簡単に解決できる問題ではないので、今回のテーマからは外し、部下の時間を節約する手法を伝授する、これもプロマネの裏業の一つである。

1.まず、プロマネが「仕事の取り扱いがうまい」のはなぜか話をする。
@ プロマネは経験者で、いろいろと仕事のやり方を知っている
A プロマネは当該プロジェクトの内容をよく知っている
B プロマネは成功のポイントを知っている
C プロマネは顧客の癖をよく知っている
D プロマネは顧客の要求をいったん引き受けながら、要求以上の提案をして、顧客要求を崩していく能力を持っている。
E プロマネは知恵者である

さて、若手の部下はプロマネに比して、すべてで劣っているのはやむを得ないが、B、C、D、Eで特に差がある。

2.プロジェクトではどの仕事に時間を取られるか考えたことがあるだろうか。
@ 考える仕事(20%)
A 交渉する仕事(顧客、上司、部下、協力会社等)(20%)
B 作業する仕事(60%)

構想計画20%
考える仕事
作業をする仕事60%
エンジニアリング業務
交渉する仕事20%

@ の仕事は段取り8分(80%)といって、20%の労力で80%の重要な仕事をすることを意味する。段取りとは構想計画である。
A 仕事とはここではエンジニアリングを想定した。
IT業界はドッグイヤーで変化する忙しさである。構想計画なしで仕事を始める。確かに20%の節約ができるが、構想計画をしないと、繰り返し作業が多くなり、作業時間が予定の60%が120%になることが多いにありうる。エンジニアリングは未だにカメさんイヤーだからこつこつやる以外に仕方がない。
B 交渉は相手次第である。これに対処できるのは、相手以上の実力の持ち主である。交渉時間は全期間を通じて一応20%と見た。

 ではプロマネが部下の時間の節約に貢献できるのはどこあろうか、考えていただきたい。
@構想計画である。構想計画を確実に遂行させる段取りと知恵を教えることで、構想計画が正しく実施できる。構想計画でプロジェクト成功の80%を確保できる。しかも時間内に終わらせる。
Aエンジニアリングは構想計画が正しくできれば成功は手の内であり、エンジニアリングを確実に、こつこつとやってくれれば結果はついてくる。
Bやっかいなのが交渉である。プロジェクトが「まともでなく、よれやすい」のは顧客からの無理難題が多いからである。顧客の要求は真摯に受け止めなければならないが、80%は重要度の低いものと考えてよい。交渉をうまくするとエンジニアリングは順調に進むからプロマネが率先して交渉する。そして少し易しい交渉はOJTで部下にやらせる。

 以上で部下の時間を節約し、部下の能力向上に貢献することで、部下が起こすであろうトラブルによる処理がへり、プロマネ自身の時間が節約できる。
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