PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (12) 「問題と課題」

芝 安曇:3月号

今PM講座のスタートにアイスブレークとして「言葉の定義」を受講者に求めている。簡単な言葉を定義しなさいと、受講者に質問する。子供に簡単な常識の質問をされると、答えが出来なくて、「それは昔からそういうものなの」と答えてしまう。

 言葉の定義が最も大切なことを、通常のPM実践者が気が付いていない。欧米では言葉を定義して使うことは、ビジネスの常識で、契約書は言葉の定義から始まる。ユダヤ教はエホバの神とユダヤ人との契約で成り立っている。これが旧約聖書である。キリストが出現して神様との契約が新しくなり、新約聖書になった。この約は翻訳のヤクではない。新たな契約を意味する。ビジネスは契約から始まる。契約は神の前に発注者、受注者が平等であるところが素晴らしい。平等に役割とそれに伴う責任を明記してある。日本式の甲乙上下関係の契約は欧米に存在しない。

契約は言葉の定義からはじまる。言葉は多くの意味があるから、言葉の意味を理解して仕事を進めないとトラブルの要因となる。

ここで「考えるPM Part I.『言葉の定義』を簡単に紹介する。
講師: 皆さん方は日頃「これは問題だ!問題だ!」と騒いでいますが、問題とは何か定義してください。
これにすぐ答えられる人は少ない。そこで
講師: 隣の人と5分間話し合って、黒板に定義を図示してください。

とお願いすると、5分間の話し合いで、皆さんは図を書いてくれる。いろいろな図が出てくるので面白い。違いがあるところがいい。これを5人で話をさせると10分かかっても答えが出ない。議論がどんどん深く、広く発散してまとまりにくい。
後一分です。黒板で説明することを命じると、話しがまとまり図が示される。

この講座でいろいろなことがわかった。
@ グループのメンバー数が増えると意見はまとまりにくくなる
A 意見をまとめる力は締め切り時間である。
B 時間は余分なものを切り捨てる力がある。
C 考え、議論することで、多くのことを人から学び、最後に結論に至ることで、人々は大きな満足感がある
D 人は立場によって発想が違うので、同じ職場にいたのでは、発展がなくなる
E 現在は思考停止状態の人が多いので、「言葉の定義」講座は人々を活性化させる
F 活性化された受講者は、後続の講座で、質問をする人が増える。
日本人は正しいことだけを学校で教育されてきたために、間違ってはいけないという自己規制にかかっている。言葉の定義は自己規制から開放される。

言葉の定義は4つの質問で構成される。
1)問題とは何か定義し、図で示せ。
2)マネジメントサイクルを定義し、図示せよ
3)課題とは何か、定義し図示せよ
4)プロジェクトマネジメントとは何か。1)から3)までを取り入れて図示せよ。

@ 問題とは「あるべき姿」と「ありのままの姿」の乖離が問題
A マネジメントサイクルとはPDCAでP:「あるべき姿」、DをするとPとの乖離がおこる。そこでその問題点をとりあげ、原因追求し、是正措置を実施し、Pにもどす。
(ここでPDCAとはDをして、問題を発見したら、チェックして、Pを修正すること)という答えがでてくる。これは仮説検証法の発想である。
B 課題とは問題をどのように具体化して、これを実施するかというもの
別の定義:通常は問題があれば、これを是正しなければいけないといって問題を課題リストに加えると課題となる。
C プロジェクトマネジメントとは
・「あるべき姿」が終着点で求められるレベル(高さ)とプロジェクトの終着の時点(長さ)を持つ(B点)
・「ありのままの姿」は出発点でレベル0点、時間0時間が出発点(A点)
・A点からB点に至る道筋はS字カーブと呼ばれるものとなる。
・プロジェクトマネジメントはS字カーブ上の各点を、それぞれがその時間軸で求められる「あるべき姿」で、S字カーブの各時点でPDCAを行い、プロジェクトが初期の期待値B点に到達させるマネジメントである

◎プロジェクトマネジャーの表業: プロジェクトの計画に従って、プロジェクトを正しいやり方で遂行させるマネジメントが表業(当たり前のことを処理する業)
◎プロジェクトマネジャーの裏業: プロジェクトは形どおりのやり方で進めても、必ず問題が発生する。この問題点を具体的に明らかにし、課題として処理する業をいう(当たり前でないことを処理する業)
以上
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