PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(12)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :3月号

エンタテイメント論

第1部 エンタテイメント論の概要
お礼とお願い

 日本プロジェクト・マネジメント協会(PMAJ)理事で機関誌編集長の渡辺貢成様におかれましては、PMAJ発足以前から発足後の現在まで、長年にわたり、同機関誌編集の大変なお仕事を終始一貫、見事に完遂されました。この紙面をお借りし、心からの敬意を表させて頂きます。ご苦労様でした。そしてありがとうございました。

 また渡辺様のご支援と本協会・田中 弘会長様のご尽力のお蔭で「夢工学」の長期連載を実現させて頂きました。更に今回は「エンタテイメント論」という日本では極めて珍しいテーマを発表する機会をお与え頂きました。ここで改めて御礼申し上げます。

 渡辺様の後任編集長・岩下幸功様、ご苦労様でございます。今後いろいろお世話になると存じます。宜しくご指導頂けます様、本書面を更にお借りして、お願い申し上げます。

11 テーマパークと都市開発
●明るい話題(その2)?
 先月号に引き続き、明るい話題がないかどうか探した。暗い話題ばかりである。

 特に政治の世界は、暗いどころか、暗澹たる気持ちにさせられる。麻生総理批判や自民党批判をする時間と労力があれば、日本の危機を救う、超党派の、野心的で、大胆で、大規模で、一挙実施の「ジャパン・ニューディール政策」を断行することである。1次、2次、3次と小出しの国家予算の実行は、最もやってはならぬ方法である。政治家で出来ないなら、官僚でも、学者でも、誰でもよい。その分野に関わっている人達が同政策を提案し、政府が実行すればよいことだ。

 日本には危機に直面した時の「国家戦略」がない。その最たるものが「戦争戦略」である。他国が日本に戦争を仕掛けて来た時は一刻の時間的猶予はない。何故なら侵略者が不意打ちを掛け、時間的余裕を与えない様に攻めてくるからである。国会審議も、世論審議も何もする時間は全くない。従って誰か一人に開戦決定の権限を予め国民合意で与えておかなければ、日本は、日米同盟が機能する前に、その侵略者によって瞬く間に支配されてしまう。

 米国は、原子爆弾搭載ミサイルの発射スイッチをONに出来る人物をただ一人、米国大統領に与えている。オバマ大統領が如何なる場所に移動しても、24時間その近くに「発射スイッチ」が置いてある。ますます暗い話をした。申し訳ない。

●都市開発
 前号で東京に於ける新都市開発や都市再開発は、この不況で一時中断か、延期されるだろうと書いた。しかし「不況こそチャンス」なのである。土地代も、建設費も、労賃も、何もかも安くなる。また適正価格の建設項目が増える。しかも不況時は建設工事が少ないため、当該建設スケジュールは極めて順調に進む。開発の好機を利用しない手はない。

 今後、数年先には景気が回復するであろう。5年も、10年も不況は続かない。新都市開発や都市再開発を企画し、建設し、運営までの期間は長い。従って現在の不況時に計画を始めるのが望ましい。

 不況の時こそ、従来型の都市開発や再開発の在り方を見直し、新しい時代に合致した、多くの人々に本当の楽しさと安らぎを与える「エンタテイメント都市」を作るべきである。でないと将来、結局、寂れたコンクリートとガラスの町になってしまうからである。

 都市開発の本質は、以前に述べた通り、極めて単純明快である。それは、「人が集まる空間を創造すること」である。「集まる」には何らかのメリットを人々が感じ、得たいと思うからである。

●テーマパークと都市開発
 テーマパークは、「人々が集まる空間を創造する」ものであることは間違いない。

 バブル経済時代と1990年代に、リゾート法の下で日本各地にテーマパークが数多く計画された。都市開発の学者や専門家、テーマパークの専門家と自称する評論家、建築家などは、異口同音、「テーマパークこそ都市開発や観光開発の切り札」と囃子立てた。そして数多くのテーマパークが日本各地に誕生した。

 基本コンセプトとなる「テーマ」を基に計画し、建設し、運営を始めた多くのテーマパークに数多くの人々が訪れた。そして一時大成功した。しかし数年後に客足が遠のき、更に数年後には赤字経営に転落した。その後、次々と倒産していった。

 その事態に都市開発の学者や専門家、テーマパークの専門家と自称する評論家達は、異口同音、「テーマパークは、作るべきでなかった」と批判した。その結果、「テーマパークは危険な事業」という通説が確立した。

 筆者は、テーマパーク支持説から批判説に鞍替えした無責任な有名学者、有名評論家、有名建築家を何人も記憶している。その中の何人かは、現在のTV番組で「地方格差問題」、「地方都市問題」などを偉そうに、シタリ顔で語っている。しかも彼らは、国のチョメチョイ委員会の重鎮として名を連ね、地方の都市開発の在り方を提案している。彼らの名誉を保つ義理はないが、諸般の事情と「エンタテイメント論」の掲載目的に合わないことから、彼らの名前は明かさない。その連中がこの「テーマパーク論」を読んだら「良心の呵責」を感じるだろうか。

閉園となった「富士ガリバー王国」(山梨県西八代群上九一色村)
閉園となった「富士ガリバー王国」(山梨県西八代群上九一色村)

閉園となった「ロシア村」の遠景(新潟県新潟県阿賀野市=旧笹神村)
閉園となった「ロシア村」の遠景(新潟県新潟県阿賀野市=旧笹神村)

●真のテーマパーク
 筆者は、企業人として某テーマパークを企画し、実現させた。地方公務員として某水族館や某パークを企画し、実現させた。そして大学人としてこれらの経験を理論化し、実践化する研究をしてきた。この「産・官・学」の経験を基に、テーマパークに関して次ぎの考えを披露したい。

(1) テーマパークは、「人々が集まる空間を創造する」ものである。
(2) テーマパークは、都市開発の本質を実現するものである。
(3) 現在も生き残り、立派に都市機能の一端を担い、多くの人々を集めている本物のテーマパークが存在する。
(4) 潰れ去ったテーマパークは、本物ではなかった。それが潰れたからと言って「テーマパークは危険な事業」という通説は完全に誤りである。
(5) 以上の結論として、「本物のテーマパークは都市開発や観光開発の切り札」と考えてよい。

 以上の考えの背景にあるコトガラを次号で詳しく、説明する。

 地方経済の落ち込みに落胆し、地方格差是正に挑戦し、凋落した都市の再開発に苦戦している地方の人達に提案したい。本物のテーマパーク又は本物の集客装置(従来型テーマパークではない別の種類のモノ。某事業化案のため開示不可)は、集客を実現させ、都市開発に役立つ。従ってその検討を是非この不況時に始めることを薦める。しかしその検討に際しては、有名人、著名人であるだけの理由で検討メンバーに加えてはならない。また偽学者、偽専門家、偽評論家などが大勢いることにも注意して欲しい。
つづく

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