PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (10) 「プロマネはペアで稼ごう」

芝 安曇:1月号

ご存じのようにプロマネの仕事は楽(ラク)な仕事ではない。でも楽(タノ)しい仕事でもある。一見矛盾していると思うかもしれない。多くのIT業界のプロマネに聞いてみると、つらいことが多く、楽しいところまではいかないという。プロマネ自在氏が楽しいと言うにはわけがある。裏業を持っているからである。

プロマネの表業はプロジェクトを成功させることである。プロジェクトを成功させることの大きな要素に無欲がある。この仕事で栄誉を勝ち取ろうと考えると、決断に際し私心が入る。覚悟を決め、無心で決断する必要に迫られる場面が必ずあるからである。決断は常に成功するとは限らない。失敗した責任をとらなければならない。

では、無欲に徹してプロジェクトを成功させたら誰かが評価してくれるのか?本人にとって、ここが成功のポイントだと思う決断をし、それ故に成功したという自負がある。だが、陰で行う決断の大変な部分は誰もわからないし、興味を持ってもらえない。

しかし、プロマネが「このプロジェクトの成功はこれこれしかじかだ」と誰かに話したら、寅さんの口癖ではないが「それを言ったらお終いよ」である。プロジェクトの成功は参加者全員がそれぞれの役割で「プロジェクトの成功はこれこれしかじかだ」と思っているから、プロマネの自慢はプロジェクト成功に寄与した全員の誇りを壊してしまう。決断者は常に孤独だという理由の一つがここにある。

上記がプロマネの表業である。しかし、表業だけであったら、ストレスがたまる一方であり、楽しいとは言いがたい。そこを楽しくするのが裏業である。
プロマネは常に助け合う相棒をつくることがプロマネ成功(プロジェクトの成功じゃないよ)の秘訣である。できれば立場の違う相棒がいい。営業と組むとハッピーである。営業とは仲が悪いのが通り相場である。何故か。営業は顧客の言いなりになり、安請合いするは、勝手に値引きする。そしてその責任をすべてプロジェクトに委ねてしまう。いうなれば天敵である。

天敵と組むから価値がある。2人3脚で行動する。なぜ、天敵が一緒にできるか疑問だろう。営業だって調子がいいばかりではない、一匹狼的存在だから、寂しさもある。営業だって、プロジェクトのサポートがないと客に信用されない。何故か分かる?社内を動かせない営業は顧客から評価されない。顧客の言い分を理解して、気の聞いた提案ができない営業は失格だからである。

前置きが長くなった。裏技を話そう。
(1) 営業をサポートしよう。そして貸しをつくれ
これって「Give & Giveの精神」で、日本的でしょ。
(2) 営業の成果をほめてやろう
日本人はしみったれで、悪口は好きだが、ほめることが大嫌いな性格の持ち主である。親だって同じだよね。子供に「叱るか、頑張れ!頑張れ!」としか言わない。
そこでほめてごらんよ。誰だって仲間になるよね!
(3) でもこの仲間になった営業も日本人だから、悪気はないが、お礼にプロジェクトをほめようなどという精神は持ち合わせていない
(4) ここからがプロマネの腕の見せ所である。
「お前さんよ。ほめられて嬉しくないの。自分が嬉しかったことを他人にすると、あんたを尊敬する人が増えるよ」とやさしく諭す。
本当を言うと諭されるやつと組んだら失敗だね。言われなくても実行する人と組むのがプロマネ成功の裏業である。

これだけの説明で分かってもらえただろうか?そうです。
プロマネや営業の苦労は決して他人には分かってもらえない。でも自分が言った終わりである。相棒がお互いの苦労の内容を周囲の人や上司に吹聴し合うことが必要である。他人をほめると、人は感心して聞いてくれる。自慢はみっともないが、目立たず交代で「相手をほめることで、プロマネや営業の苦労が人々に理解され、営業やプロマネが評価される」ことはもっとも望ましいことである。

欧米では大型の海外プロジェクトマネジャーを3つもやると、一生食べられる金を取得できるから、このような手の込んだ裏技を必要としない。残念ながら日本は裏業がないと報われない社会であることも事実である。
以上
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