PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (9) 「プロマネの実力は有能な人脈との貸し借りできまる」

芝 安曇:12月号

性格の悪いプロマネは多くの人に信用されないから、正統派のプロマネにはなれない。しかし、人がよすぎてはプロマネにもなれない。計画されたお人好しであることが望ましい。言葉を変えると有能で、無欲な性格が最適である。
一方プロジェクトは多くのステークホルダーが関与するから、合理的にことを進めることに価値がある。合理的とは時に冷たく事実を判断することが要求されるつらい商売でもある。

プロマネの表業はプロジェクトに関与する多くの人々が、楽に仕事を進めることができるプロジェクト環境をつくり上げることである。言葉を換えると計画力の持ち主といえる。計画が正しくつくられると、プロマネは、その後はお人好しであることが望ましい。うまくいっている時は、部下に任せて「昼行灯」を決め込むのが理想である。

しかし、このような理想的なプロジェクトがあり得ないことは、誰も理解している。緊急対策を求められる場面にしばしば出会う。この時は多くの人の助けが必要となり、プロマネの裏業が生きてくる。裏業とは人間関係における貸し借りの量の多さにある。困ったときに助けてもらうには、有能な人に助けて貰うための貸しをつくることを常に心がけている。

では貸しとは何か。相手の心に響く、お手伝いをしてあげることのなる。これが裏業である。例えば貸しとは人から頼まれたことは、苦しくても、できるだけ要求に応じてあげることである。人から何か頼まれることの第一条件は、人から見てお人好しであると思われていることである。性格の悪い人には誰も助けを求めない。第二の条件は難しいことほど、相手の求めに応じてあげる必要がある。易しいことを頼まれるとは、単にこき使われることであり、これでは貸しにならない。易しいことを頼まれることは、そのこと自身プロマネとして失格かもしれない。

では、なぜ難しいことを引き受けるかというと、依頼人にとってだけでなく、自分にとってもチャレンジングなチャンスだからである。貸しをつくるだけでなく、プロマネとしてのブランド化の機会でもある。人から頼まれる仕事は現代そのものであるからやりがいがある。無償でやったとしても知的財産が増えたことになる。しかも現代が要求しているそのものずばりである。不思議と無償でやった仕事は次に有償で頼まれることが多い。誰にも宣伝したわけではないのに、仕事が舞い込んでくるからおもしろいものである。これは裏業の余業である。貸し借りの話にもどる。

困ったときにお願いすると皆さん協力してくれる。ここで貸しの点数は消滅するはずであるが、不思議とこの貸し借りは消滅しないで、協力関係の実績が加算される。言葉を換えると、協力度ポイントが加算され、貸し借り関係は強化される。緊急の困ったときは困難な仕事であるから、終わったときに、協力者にとっても何か重大なことを成し遂げたという充実感と、実績資産が増えるからかもしれない。それ以上に仲間意識の絆が高まることによるポイント増加といえるのかもしれない。

考えてみると、裏業は本人の表業になっていたりするから、プロマネ家業はやめられない。
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