PMプロの知恵コーナー
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プロマネの表業、裏業 (8) 「お客様が怒っているときがチャンス」

芝 安曇:11月号

自在氏はプロマネを職業としていると、良いとき半分、悪いときが半分だという。何時もいいときばかりではないよ。でも、悪いときばかりが続くわけじゃーない。良いとき、悪いときが半々だ。実はこの半々というのが、幸せな人生といえる。人間調子がいいときは、知らず知らずに慢心になる。慢心すると、本人は気分がいいが、周りは不愉快である。周りの不愉快に気がつかない。「神様はよく見ていらっしゃる」というのがプロマネ自在氏の実感である。慢心するときに限って、トラブルが発生する。気分がいいわけない。

責任者はつらい。客の怒こった顔が目の前に浮かぶ。出かける気分になれない。自在氏とて人の子である。客の前では小さな存在である。慢心気分は一掃される。緊張感する。でも自在氏は考える。これが責任者の仕事だからな。「悪いときばかりじゃーないよ」と自分に言い聞かせる。

これは本人の慢心によって起こされた問題ではない。営業部長がお客様に失礼なことを申し上げたようだ。お客様は烈火のごとく怒り、でいる差し止めを食らった。自在氏は本部長に呼び出された。
「あの会社に出入り禁止になったよ。プロジェクトが誤ってきてくれ。以後プロジェクトが営業も兼任してくれ」。
心の声「それはないよ。第一あの理事さんは皆から嫌われものだからまいったね」とは思ったものの上司の命令である。仕方なく引き受けた。

自在氏は苦境に立つと、裏技にさえを見せる。最初の裏業は「叱られ方」である。「叱られる」時の裏業はひたすら謝ることである。言い訳や、自己弁護はご法度である。お客様が満足するまで叱られるが正解である。次がお土産である。自在氏は考える。ヒントは「嫌われ者」である。人間には情報が必要である。業者からの情報はお客さまにとって、大きなニュース源である。しかし、嫌われ者は自ら厳しく業者と接しているから情報不足に相違ないと考えた。

十分叱られた後、「お客様、勝手なお願いですが、廃棄物処理で役所筋の関する情報で、少しお時間をいただけませんでしょうか?」と丁重にお願いする。役所筋の情報は貴重な資源である。欲しいに決まっている。絶対にノーといわないはずである。
「お前の会社は何時もあつかましいから嫌いだ。忙しいのだが、仕方がない。少しだけだぞ」。
「有難うございました。実は役所筋はXXXを考えています。電力筋はYYYを考えています。主張があっておりません。技術筋は処理方法に関しZZZを完成しようと試みております。将来はこのどれかの方法が採用されると思われます。若しこれらの情報がお役に立つようでしたら、また改めて海外の情報について勉強してまいります」。
「今日は、貴重なお時間をいただいまして有難うございました。もし、次回のお時間をご指定いただければ、勉強結果をご報告したいのですが、お時間をいただけますでしょうか」。
「来週だったらいいよ」。
「有難うございます。来週の火曜日の15:00ごろはいかがでしょうか」
「お待ちしています」。

プロマネが営業を兼務させられたら、相手の欲しがる何かで勝負しなければならないが、接待で勝負はできない。なれないことをしたら失敗の上塗りになる。情報はお役様個人の社内的立場を強化する。

その後毎回情報の提供をすることで、厚遇してもらえるようになった。情報は表業である。
では、裏技は何か。「叱られたときがチャンスである」。プロマネは何時も叱られるチャンスに恵まれている。顧客と親しくなる機会に恵まれていると考えることだ。悪さを良さに転換する業が裏技である。

以上
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