人生(キャリアプラン)とプロジェクトマネジメントの関連について
研修事業部第2部会 秋山 孝之:1月号
1. はじめに
皆さんは自分の人生(キャリアプラン)をプロジェクトマネジメントに置き換えた場合、どのように関連するか考えたことはありますか。そもそも「人生(キャリアプラン)とは何か」を定義する時、何らかの夢や目標等を達成することが人生(キャリアプラン)のゴールではないかという1つの考え方があると考えます。もちろん、それは個々人によって異なり、また、達成する方法・手段についても同様に異なるのではないかと考えます。その人により相違のある方法・手段をプロジェクトマネジメントの考え方で代替できるのでは、と思ったのが本稿を書くきっかけです。そこで、本稿では人生(キャリアプラン)をプロジェクトマネジメントの国際的な教科書と捉えることが出来るPMBOK®に置き換えて考えてみたいと考えます。
2. PMBOK®との関連性
PMBOK®では5つのプロセスがあり、それに対して人生(キャリアプラン)をマッピングさせると下図の通りになります。 以降、それぞれ詳細に述べていきます。
3. 目標及び計画の設定
PMBOK®では、プロジェクトを「独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有機性の業務」と定義しています。つまり、期限があって、独自的(全く同一のものではない)であるものを完成させることとなります。では、これを具体的に自分の人生(キャリアプラン)に置き換えた場合を考えてみると、「目標を達成し、かつ、それに期限を設けた場合」であると考えます。具体例として私の目標を示すと、
「40歳代で大企業の経営者になること!」
というものです。期限は“40歳代”、そして(自分にとっての)独自性は“大企業の経営者になること”であり、まさしくプロジェクトの定義に合致させることができるのではないかと考えます。
目標の設定が終わって次にすることは、その目標を実現する(プロジェクトを完了させる)ためには更に細分化されたいくつかの個別目標に分割していく必要があります。さらにそれらについても期限を設けねばなりません。この細分化した計画のことをWBS(Work Breakdown Structure)と言いますが、目標と同様に具体例を下図に示すと
となります。もちろん、上図のWBSは、簡略的なものであって、更に細分化されますが、大事なことは、設定した目標を実現するために、細分化した目標をそれぞれ、年/月(可能であれば週/日)単位で期限を設定し、日々何をしなければならないかを明確にすることです。
計画作成後、次に行うべきことは、WBSに基づいて実行(行動)とコントロール(進捗・状況を確認)をすることです。
4. 実行とコントロール(進捗・状況確認)
計画を立てたものに対し、実行(行動)することは、一見簡単なように思えますが、実は非常に困難な作業であると感じています。よく、立てた目標に対して“挫折する”というのを聞いたことがありますが、その理由として
・自分の立てた目標・計画の難易度が高すぎるため
・三日坊主で終わってしまう(継続できない)ため
・やる気が起こらないため
・スケジュールがタイトなため
・目標に対しコミットメントが甘すぎるため
等々、挙げたら切りがありません。また、他の要因として、目標を進めるにあたって必ずと言っていいほど出現するのは、「何らかの壁」ではないかと考えます。皆さんも1度くらいは、立てた目標に対し何らかの壁にぶち当たり、挫折してしまったケースがあるのではないでしょうか。私の周りでよく見聞するのは“資格”や“英会話”等です。これらをクリアするには、まさしく「その目標を必ず達成する!」という強くて折れない意志が必要です。並大抵のことではないかもしれません。
とはいえ、強靭な意思がないと続けられないか、と言ったらそうではありません。ある程度細分化した目標を1つずつクリアできれば、挫折を回避することは十分可能であると思います。自分の目標の難易度が高すぎることが、挫折する最も大きな要因ではないでしょうか。前記のWBSで目標を細分化し、個々のワークパッケージ単位(ここでは細分化された個別目標)であれば、難易度や期限も明確となり、クリアできるのではないかと考えます。例えば、前記の挫折例であった英会話で言えば、
【目標:××年××月××日までにビジネスで英語を使えること】
・個別目標1:××年××月××日までに英検1級を合格
・個別目標2:××年××月××日までにTOEICスコア900点以上達成
・個別目標3:××年××月××日までに1年間海外留学
・個別目標4:××年××月××日までに外資系企業に転職
に細分化できます。上記は更に細分化でき、日単位まで詳細化すれば、あいまいな計画よりは挫折を回避できる可能性が高まると考えられます。
次に、コントロールについてですが、上記のWBS(細分化された個別目標)に対し、進捗・状況を確認するというものです。期限から遅れた場合は、リスケジュールをしなければなりませんし、その細分化された個別目標の難易度が明らかに高い場合、是正策として別な方法・もしくは更に個別目標を細分化しなければなりません。
5. 終結(次の目標に向けて)
ここでいう終結には、大きく2つの意味合いがあります。1つ目は、「個別目標をクリアした時に、次の個別目標へ向けて教訓を生かすこと」です。個別目標を達成した後に、即、次の個別目標を目指すのも大事ですが、何らかの壁があり、それを乗り越えた場合に得た教訓を、次へ生かすことが最終的な目標をクリアする要素になると考えます。
2つ目は、「(最終的な)目標を達成した場合に、次の目標は何かを考えること」です。私の目標の例で言えば、大企業の経営者になった時にそれで人生(キャリアプラン)は終了か(仕事を引退する等)という意思判断をしなければなりません。実際のプロジェクトであれば“システムが完成した”、“建築物が完成した”ということで明確にプロジェクトが終了しますが、人生(キャリアプラン)はまだまだ続きます。そのため、目標を達成した時に、そこを安住の地としないで、更なる目標(日本の大企業経営者になったから、次は世界へ進出しよう等)を立てることが人生(キャリアプラン)を有意義にするために大事なことではないかと考えます。
6. 終わりに
やや強引に人生(キャリアプラン)をプロジェクトマネジメントに置き換えましたが、下表で再度整理すると、改めて人生(キャリアプラン)は実際のプロジェクトと同様だと考えられます。
PMBOK® |
人生(キャリアプラン) |
立上げ |
プロジェクト検証、スコープ計画書作成 |
人生(キャリアプラン)の目標設定 |
計画 |
プロジェクトマネジメント計画書作成 |
細分化した個別目標(計画)を作成 |
実行 |
プロジェクトの実行 |
個別目標を日々実行 |
コントロール |
計画と乖離があった場合に是正処置実施 |
進捗・状況確認、何らかの壁があった場合に対処 |
終結 |
プロジェクト、フェーズの終結 |
次の個別目標の準備、次の(最終)目標の定義 |
PMBOK®では、9つの知識エリア全44プロセスの内、計画プロセスに1番多い21プロセスを定義しており、“計画が一番大事である”と強調されていると考えられます。そのような意味から、人生(キャリアプラン)においても、精緻な計画を立てている人は、立てていない人と比較して人生(キャリアプラン)というプロジェクトを終了させる(成功する)可能性が高まるのではないかと考えられます。
以上から、私は人生(キャリアプラン)を必ず成功させたいと思っております。だからこそ、来年元旦には精緻な計画を立て(軌道修正・更新し)、壁があっても逃げないで壊すような強靭な意思を持って40歳代に大企業経営者になるという目標を達成したいと思っています。
皆さんの中にもすでに人生(キャリアプラン)の精緻な計画を立てておられる方もいらっしゃるとは思いますが、もし立てられていない方は今からでも人生(キャリアプラン)のプロジェクトマネジメントを行ってみませんか。
必ずや面白くて、興味深い人生(キャリアプラン)となるにちがいありません。
以 上
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