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「グループからチームへ」
〜ITベンチマーキングSIG〜

TPS−WGリーダ:株式会社富士通アドバンストエンジニアリング 小原 由紀夫:12月号

 TPSでは、チームワークを重要視しおり、The Toyota Way2001の5つの要素のうちの1つとしています。チームワークのチームは、「共同で仕事をする人々の集まり」です。TPSでチームワークを発揮するためには、「人々の集まり」のグループを「共同で仕事をする」を追加してチームにすることが必要になります。
 グループとチームについて考え、チームワークについて考察します。

1. チームとグループ
  まず、チームとグループと定義の違いを辞書(三省堂大辞林 第二版)で確認しましょう。
 「チーム」:共同で仕事をする人々の集まり。
 「グループ」:人々の集まり。
  人々を振り分ければ、「グループ」は作れます。しかし、「チーム」とするには、人々を共同で仕事をする人々の集まりにすることが必要になります。

(1)プロジェクトチーム
  プロジェクトは、目標(QCD)を達成するために、共同で仕事をするので、プロジェクトチームになります。目標達成に必要なスキルが設定されて役割を設定し、その役割を満たす専門家を集めます。
  PMBOKでは、人的資源の知識エリアを設定しており、プロジェクトチームの育成について記載されています。その中で、チームワークの向上により生産性を高めるために、チームメンバー間の信頼感と結束力を強化する、と記載されています。
  信頼感と結束力は、役割に必要なスキルを満たす専門家たちが同じ「目標」に向けて活動する時に、強化されます。初めて「チーム」になります。チームになれば、スキルが不足する場合には、補完や課題解決への協力がチームとしてできます。また、チーム形成活動については、設定された活動だけでなく、非公式なコミュニケーションを奨励して信頼を醸成することが重要であるとしています。
  プロジェクトにおいてもチームワークは重要です。

(2)大リーグにおけるチーム
  アメリカ大リーグは、ストライキで「チーム」を学んだと考えられます。以前は、お金の国アメリカですから、個人の高給が目標でした。その果てにストライキを起こし、ファンから見放されてしまい、反省しました。今の大リーガは、高給を目標とすることを公では第一義としません。日本人大リーガを含め、今年の目標はと聞かれると、必ず同じ目標を答えます。「ワールドチャンピオンリングを取る」です。
  ワールドチャンピオンリングは、いくら高給になってももらえません。一方、ワールドチャンピオンチームでは、裏方も、薄給であっても、ワールドチャンピオンリングを貰えます。
  チームとして一人一人を認め合うことを表しています。
  一方、日本では、日本ハムの金村投手が、連続2ケタ勝利投手の目前で交代となり、個人成績を無視したとアメリカ人のヒルマン監督を批判しました。その後、謝罪し、チームへ貢献をしました。ヒルマン監督は「チームプレイの日本人がなんてこと言うのだろう」と思ったでしょう。チームとして目標を合意できているか確認することも必要かもしれませんね。

2. TPSのチームワーク
  TPSのチームワークの例として、陸上のリレーと離れ小島を作らないと紹介します。

(1) 陸上のリレー
  「仕事の受け渡しは、水泳のリレーではなく、陸上のリレーのようにしなさい」と大野耐一氏は言われています。水泳のリレーと陸上のリレーの違いは、まず、水泳リレーは、前泳者がタッチするまで次の泳者は待つことしかできないが、陸上のリレーは、バトンゾーンの中で力のない人を力のある人が助ける工夫ができます。
  役割を分担して、後はそれぞれが頑張るのように線を引くのではなく、チームとして「共同」で活動することを伝えるために陸上のリレーを使って説明されています。
  また、陸上リレーでは、バトンを受け渡す時に前走者と次の走者が同じ速度で一緒に走ってバトンを受け渡す点が、止まった状態で待つ水泳のリレーより「共同」を感じられます。

(2) 離れ小島を作らない
  一人ひとりを離して置くことを「離れ小島」と呼び、チームワークが発揮できないので、離れ小島を作らず、人間味のある環境を作ることがチームワークに必要であることを言われています。ここから全員が一箇所に集まる「大部屋」に繋がります。「大部屋」はPMBOKにおいてもコロケーション(物理的に同じ場所で作業する)としてプロジェクトチーム育成ツールとしています。
  一緒にいるだけでは共同になりません。「目」を活用することが必要です。「目が届く」、「目を止める」、「目を掛ける」、「目を配る」、「目を凝らす」、「目を注ぐ」など、見てもらえていることが1つの褒美であり、社会に参加しているという人の本質的欲求を満たすと考えています。そして、「目」が「見える化」という言葉を生んだ背景にあると考えています。

3.チームワークの効果
  グループは、メンバーの能力の総和の成果まで期待できます。チームは、メンバーの能力の総和にチームワークを発揮した相互作用によるプラスアルファ(シナジー効果)を期待できます。
  北京五輪を見ても、日本の特性は、個人の身体能力ではなく、チームワークです。チームワークを根底に持つTPSを実践していきましょう。
以 上

<参考文献>
1.トヨタ生産方式 大野耐一著 ダイヤモンド社
2.ザ・トヨタウェイ ジェフリー・K・ライカー著 稲垣公夫訳 日経BP社
3.トヨタウェイ 梶原 一明著 ビジネス社
4.PMBOKガイド(第3版) PMI
 

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