今月のひとこと
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「政治の世界もニュービジネスモデル」

オンライン編集長 渡辺 貢成:12月号

米国の大統領選挙で、政治の世界もビジネスモデルが勝利をもたらすことを知りました。昔々の話で恐縮ですが、日本人に人気の高い源義経も新しいビジネスモデルを構築したのかもしれないと思いました。「やあ、やあ、遠からん者は、音にも聞け、近くば寄って目にもみよ。我こそはXXX」と名乗って、戦いの火ぶたが切られたようです。これが当時の戦いのしきたりだったようです。義経はこのしきたりを破って、敵の裏をかき、夜討ち、朝駆け勝手次第。戦いに勝ってしまえばこっちのもという発想だったように見えます。

時代は下がりまして、信長はどうしたか。当時、神社、仏閣には門前に市が開かれ、その所場代がいいお金になり、神社、仏閣を潤わせました。信長はこれに目をつけ、権利を横取りして、楽市、楽座となずけて商売を繁盛させ、その上がりを懐に入れました。そこで兵隊を雇ったのです。当時の武士は平時には農業を営んでいました。人間は食べることが第一ですから、農繁期は戦争をしないことが原則で、バランスが保たれていました。ところが信長は農繁期にお隣の美濃の国に攻め込みます。信長の兵士は農業従事者ではないから何時でも美濃の国に攻め込めます。美濃では攻め込まれますと、しかたがないので、武士は農業の仕事を休んで戦いにかり出されます。すると信長は戦わずして撤退します。美濃の武士が再び農事につくと、すぐ攻め込みます。これを繰り返すとさすが美濃の国の強兵も戦いはできず、食べ物も作れずという問題に直面し、次第に疲弊していきました。これもビジネスモデルです。ではその後、信長軍団の中ではどのような葛藤が起きたでしょうか。軍団が強くなり、戦争の領域が広がります。戦いに必要なのは単に兵力だけではありません。ロジスティックス(兵站)が必要です。柴田勝家のような純粋の武士では兵站能力がありません。従ってマネジメント能力のある秀吉や光秀が重用されたわけです。秀吉は常に新しいビジネスモデルの創案者でした。

世界史をみても偉大な人物と称される人々は戦争において、新しいモデルの発案者のようです。しかし、多くの英雄は英雄一代という創業のビジネスモデルが多く、運営のビジネスモデルがなかったようです。P2M的発想で言いますと、スキームモデル(構想計画)とシステムモデル(計画と実行)までは素晴らしくしい英雄でしたが、サービスモデルにまで考えが及ばなかった英雄といえます。

ローマや徳川家康はサービスモデルまで含めた、ビジネスモデル考案者といえます。またディズニーランドはサービスモデルを中心とした新しいビジネスモデルを構築した企業といえますが、日本で開発されたテーマパークはスキームモデル、システムモデルのみの一代型ビジネスモデルを取り入れたものていえます。お金が儲かるのはサービスモデルだからです。

さて、目を転じて米国の次期大統領を眺めてみましょう。彼がなぜ大統領になれたのかという問題です。彼の側近に知恵者がいたと推察されます。米国の大統領選挙は全国規模のの長期的な戦いで膨大な資金が必要です。通常は資金集めのできる候補が有利に展開します。民主党のクリントンは十分な資金を集め大統領選に臨みました。伏兵のオバマ氏が善戦したので、選挙資金が不足し、自腹を切っても、資金不足に悩みました。ではオバマ氏はどうしたのか。実は新しいビジネスモデルを構築しました。Web2.0戦略とでも言うのでしょうか。グーグルが取った戦略と同じ気がします。ロングテール戦略といっています。一つの広告料金は小さいのですか、従来は広告の対象にならなかった小企業層まで含めて広告主と考え、ここから薄く広く広告収入を得るモデルを構築した訳です。従来の広告主は恐竜で言えば頭の部分でした。大きな金を業界に流してくれました。グーグルが狙ったのはしっぽの部分です。恐竜のしっぽは細く、1件あたりの広告料金は少ないのですが、しっぽは驚くほど長く、少ない料金にしっぽの長さをかけ算すると十分採算のとれる量になるという発想です。

オバマ氏の戦略もロングテール戦略とお見受けしました。ネットで大勢の低所得層から少額の資金を集めました。これはクリントンの資金を超える額になりました。次にオバマ氏は子供に話しかけました。難しい話ではありません。子供が希望を持てる社会を築こうという話です。それを親に話しましょう。そして“Yes, we can” と働きかけました。米国人は何時でも夢を叶えることができるという勇気を国民に与えたのです。Webを使った草の根運動というビジネスモデルを構築し、勝利を納めました。しかし、大切なのはサービスモデルです。サービスモデルでどのようなビジネスモデルを提供するか、今から楽しみに眺めています。
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