PMRクラブコーナー
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「いじめ」から身を護ること

古澤 理:10月号

 「いじめ問題」の対応策は、
 先日のテレビ番組で、「学校での子供のいじめ問題」を題材にした相談に、「親としてどうすべきか」を著名人が答えるという企画がありました。お答えをされたのは、「ワタミ」の渡邉美樹社長さん、IKKOさんなど、お答えの内容は概ね

 お答え1:いじめを受ける環境を改善すべきといった意見。いじめを受けている子供に責任はなく、いじめを行っている子供の親や学校・教師等の大人の問題。子供には「自分は悪くない」事を納得させ、子供を保護した上で、学校側やいじめっ子の親を正してゆく。
 お答え2:子供の将来を考え、ストレスに負けないよう自己解決させるといった意見。子供から、ありのままの内容を良く確認した上で、基本的には自分で問題解決するようアドバイスを行い対応させる。但し、最後の手段として「転校」させることも考えておく。

といったものでした。お答え1は外部環境(学校やまわりの大人たち)で、お答え2は内部環境(子供自身)に焦点をあてたお話でしょうか。ここで、わたしが、なるほどと思ったのは、「お答え2」です。
 というのも「お答え1」のように子供がすごしやすい環境を整えてあげることも重要ですが、いじめに自分で対処する術をもたないと、大人になって社会に出てから、ストレスで潰れてしまうので、親としては状況を確認、アドバイスして自分で「いじめを解決出来る術」を体得させる。反面、解決できずに深みにはまるとストレスが更に溜まってしまい潰れてしまうため、最後の手段で「転校」という道を用意してあげておく点に納得しました。

 「子供のいじめ」を「プロジェクト」に置き換えた場合
 みなさんの職場でPMの離職率が高くなっていないでしょうか。この一因が「いじめ」(言いかえれば制約条件)が影響していると仮定してみようと思います。つまり「IT系プロジェクト活動でのPMいじめ問題」です。
 「若手のPM」や「問題PJのPM」が、いじめ(制約条件等)を克服できずに出社が出来なくなったり、体調を崩したり、会社を辞めたりしていらっしゃいませんか。また、PM不足の折、せっかく中途採用したPMが前職場で、いじめで潰れたことがあり、ちょっとした事で潰れてしまうようなことはないでしょうか。このような状況でも、みなさんのまわりの方々は、「A君はPMなのだから、いじめに耐えることは当たり前でストレスに弱いのは問題だ」といった、PMを消耗品のようにとらえていませんか。

 例えば、(複雑性・不確実性が増し、PMの説明責任が厳しくなっている昨今のプロジェクト管理)
【現状認識】
 いじめっこ(ステークホルダ)別、いじめ(制約条件等)の最近の手口例は、
 「お客様」であれば、納期間近でも仕様が確定しない、注文がもらえない。合見積されるためリスク分のマージンが価格にのせられない。
 「社内トップ」であれば、オフショア開発を一律でノルマ化される。社員は増えず、より外注とのアライアンス推進をノルマ付けする。受託額のきつい戦略案件でも、通常のGP率を遵守するように指示する。
 「営業」であれば、受託時の契約が、再委託禁止や開発場所の制限、マイルストーン確認が社内開発プロセスと合わないポイント、でも安易に客先と合意する。
 「経理部門」であれば、会計基準コンバージェンスに伴い、工事進行基準を採用し、高い見積精度を要求する。
 「監査部門」であれば、内部統制の強化で、今まではチェックが曖昧だった購買取引、工数管理、収益認識基準、成果物の実在性・妥当性、原価計上内容、を精査する。

以上の例のように、いじめ(制約条件等)が増加している上、コストの自由度も減り、外部や内部の監査部門から厳しく説明責任を問われ、業務が更に複雑になっている状況なのではないでしょうか。

 PMにも「お答え2」の対応策をあてはめると、
【対策例】
 「お答え2」を2つに分けると、一つ目は、いじめを解決出来る術を体得すること、もう一つは、最後の手段を持っておくことでした。これをPMに当てはめると、
@いじめを解決する術を体得すること
 経験の浅いPMであればベテランPMにアドバイスを受ける。そのようなアドバイスが受けられない場合や、先ほどの最近の手口例で記述した複雑なPJ環境で、ベテランPMのアドバイスだけでは不安な場合には「P2M標準ガイドブック」を読み返せば解決のヒントを得ることができます。例えば、プロファイリング手法です。
プロジェクトに関係するステークホルダや制約条件を明らかにし、当初曖昧だったプロジェクト内容をバランススコアカード等を用いながら具体的なスキームモデルに具体的に定義していくことです。
 先日参加したSI契約の工事進行基準対応セミナーでは、すでに工事進行基準が定着している建築業界と比べIT業界のPJについて、WBS管理、仕様の変更管理、出来高管理が曖昧な状況とのお話もありました。このことからも、今までの社内慣習に則った管理を踏襲するよりも「P2M」手法を実際に活用すべきと思います。
 加えて、PMが責任を一方的にとらされてしまうことへの対応です。これには、事実を「第三者」が納得できるよう説明する必要があり、確証(WBSや改定履歴、議事録、課題管理表、仕様書等)を整備しておくべきです。特に政治的に判断され、PM自身が責任をもてない決定内容については、責任の所在を明らかにするためにも、その内容を明確化し判断/指示内容を残しておくことではないでしょうか。
A最後の手段(コンテンジェンシープラン)を持っておくこと
 耐え切れないストレスから開放されるには環境(転職や業務内容)を変える必要があると思います。このため自分自身のエンプロイアビリティ(個人の雇用されうる能力)を上げておくことが重要だと思います。この場合でも「P2M標準ガイドブック」は、各種マネジメントト手法が記載されており、PM以外の資格取得でも学習を始める準備には役にたつのではないでしょうか。
 また、PMの方々はシステムの第一線で活躍されていらっしゃるのですから、例えば、担当されたPJを例に、社外向けの「SCM**システム実践事例」、「短期ERP**導入**の実践事例」等、時代のニーズに合った講師依頼等があると思います。この講義内容は、企業が求める人材ニーズであることも多く、ヘッドハンティング会社が人材探しにセミナー講師をウォッチしていたりもしています。自分の対外的な価値を確かめるためにも、社外向けのセミナー等の講師をすることもお勧めいたします。
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