図書紹介
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イチローの思考  ―― 孤独を貫き、成功をつかむ――
(児玉光雄著、東邦出版発行、2005年06月13日、第4刷、183ページ、1,300円+税)

デニマルさん:10月号

2008年7月29日は、日本プロ野球界だけでなく日米の野球史上に残る記録が達成された。当日マリナーのイチロー選手は、日米通算3000安打を記録した。これは史上初めての記録で、日本での3000安打達成は、張本勲(元東映、巨人)の3085安打、大リーグではピート・ローズ(元レッズ)の4256安打に迫るものである。その他に、イチロー選手には数々の記録(8年連続の年間200安打は9月18日に達成)があり、現在でもそれらの記録にチャレンジしながら、記録更新の活躍を続けている。今回紹介の本は、そのイチロー選手の考え方や生き方をまとめたものである。著者は、プロスポーツ選手のトレーナーとして活躍する傍ら、イチロー選手の多くのインタビュー記事を分析して、その成功の本質に迫っている。3年前の本であるが、今読んでも全く新鮮味を失っていない素晴らしい内容である。

イチローから学ぶ思考   ―― プライドを持って進化 ――
副題にもあるが、イチロー選手はある意味孤独であると言われている。それは彼の独自の考え方と輝かしい結果にあるかも知れない。彼の独特なバッテイングスタイルもその一つである。「パワーはいらないと思います。それより大事なのは、自分の「型」を持っていないといけないことです」と答えている。他人の言葉に流されず「個性を磨く」ことで自分の型をつくりあげている。他人の評価ではなく、自分の「プライド」を追い求めている。

イチローから学ぶ行動  ―― 有言実行 ――
イチロー選手は、小学6年の作文の中で「プロ野球の選手になる」と宣言している。中学・高校と野球部に入部して練習に励んだ。それも他人から進められるのではなく自主的にバッテイング練習をしている。高校時代のエピソードでは、練習場に幽霊が出ると言われるくらい深夜の素振りをしている。更に、監督に「言ってもらえれば、センター返しはいつでもできます」と言って、7割近くをセンターへ打った。普段の実績の自信である。「自分はこうなる」という有言実行こそが、夢を具体的に実現するイチローの原点となっている。

イチローから学ぶ逆境克服  ―― 失敗に感謝 ――
イチロー選手の野球人生は、ハンディとの闘いである。「身体が小さい」「プロに入っても2年間は1軍に定着出来なかった」等々。こうしたハンディを成長のエネルギーに変えて偉業を成し遂げてきた。イチローのバットは細い、それはスイートポットを捕らえ易い彼の独自のバッテイングにある。失敗やスランプを言い訳にしないで、その原因を突き詰めるプロセスを楽んでいる。失敗に感謝し、理想を諦めないのも逆鏡克服のポイントである。

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