図書紹介
先号   次号

最後の授業  ―― ぼくの命があるうちに(DVD 付版)――
(ランディ・パウシュ、ジェフリー・ザスロー著、矢羽野薫訳、潟宴塔_ムハウス講談社発行、2008年07月04日、第3刷、254ページ、2,200円+税)

デニマルさん:9月号

著者のランディ・パウシュ氏は、知る人ぞ知るカーネギーメロン大学(アメリカ、ピッツバークにあるコンピュータ、ロボット工学等で有名)の教授であった。専門はコンピュータサイエンス、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション、デザイナーである。VR(バーチャル・リィアルティ)の第一人者で、その3D(三次元)プログラミング言語であるアリス(Alice)の生みの親でもある。もっと分かり易く言うと、ディズニーやハリウッド映画等に出てくる仮想空間を簡単に作れるプログラム言語を開発した大学の先生である。実は、著者は別な意味で話題となった。それは癌で余命半年と宣告されて、最後の講義が米国でテレビ放映され2500万の人と、インターネットで600万の人が涙ながらに見たのである。

最後の授業(その1)   ―― 講師:ランディ・パウシュ ――
最後の授業は、2007年9月に著者の大学でおこなわれた。癌が転移して余命宣告されてからのものである。DVDからその講義内容を見ることが出来る。それによると著者の動き、表情は元気で腕立て伏せまで実演し、ジョークを交えて非常に明るい講義である。病人なのかと疑いたくなる。この日は、奥様の誕生日であった。著者は、奥様へのこれまでの感謝とこれからのことを考えて、講義途中にバースデイケーキで聴衆者と祝う演出もしている。

最後の授業(その2)  ―― 題目:僕はこうして夢をかなえてきた ――
講義内容は「僕の子どもの頃の夢」で、この夢をどう実現したかを講義したのである。全部で6項目あるが、どれもその夢を実現する過程で障害にぶつかる。その障害を「レンガの壁」と称した。「レンガの壁」には、夢を叶えるチカラがある。著者は子供の頃から全力で壁に向かってチャレンジして、全て実現してきた。しかしこの講義は、夢の実現の話ではない。如何に生きるかを聴衆ではなく、ある人に残すために纏めたのだと締め括った。

最後の授業(その3)  ―― 本当に最後の授業になってしまった ――
冒頭に、著者は教授であったと書いた。確かに、この本の裏表紙の著者紹介には、カーネギーメロン大学教授と書かれてある。この本を購入したのが、今年の7月15日である。そして、この原稿を書いている27日に訃報が飛び込んできた。7月25日早朝、著者が亡くなられたと大学からの告知記事を入手した。その内容によると、「数えきれない多くの学生を感動させ、高く称賛された“最後の講義”で知られるランディ・パウシュ教授は、膵臓癌の合併症で逝去されました。享年47歳」とあった。心からお悔やみ申し上げたい。(合掌)

ページトップに戻る