P2M研究会
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これまでの活動を振り返って

東京P2M研究会 PMR 内田 淳二:9月号

 P2M研究会の活動に参加して3年目となりました。8月は休会でしたので、渡辺編集長のお許しを得て、今月の当コーナーは標題の通り筆者が常日頃感じている事をお伝えさせていただく事にしました。

 P2M研究会は、P2Mガイドブック第3章にあるプログラムマネジメントの世界を深く掘り下げて、P2M実践力を高めようと志すPMR、PMSが集う場として2006年に立ち上がりました。「プログラムマネジメントは難解で経営レベルの問題であるから、経験の浅い段階のP2M資格者にはとっつきにくい。」これを何とかしようという思いも込めて会は発足しました。全国のPMAJ会員に向けて開かれた会ですが、最も早く活動を開始した東京と関西が例年報告書を作成し活動の成果を挙げ始めているのはご存知の通りです。

 今のところ報告書の内容は、P2M理論を我々ミドルが実践の場で活用できるようにするための課題を議論し議論の成果を報告書にするというものが中心です。PMR/PMSと言えども企業内ヒエラルキーに従って行動することが求められており、それぞれの分を守ってそれぞれが属する組織の成長に貢献していますが、正直なところ、企業に新しい成長をもたらすような革新的な実績が報告されているわけではありません。プログラムレベルの実践力を試す場が一般従業員に与えることが出来ている企業は数少なく、経済が成長していた時代の企業組織が完全に新しい時代に適応出来るようになっていないことが、その理由かもしれません。

 新しい時代の成長モデルは、「規模の経済、スピードの経済」の追求では無く、「組み合わせの経済」の追求にあります。このモデルを作り上げる鍵は、現場を知るミドルが中心になった組織的知識創造(ナレッジマネジメント)にあるとも言われています。

 当研究会の活動を通して分かって来た事は、高度成長を成し遂げた後の企業社会が、新しい成長の仕組みを手に入れるには、社会全体が、かつての成長モデルに囚われない謙虚な姿勢と新しい価値創造にチャレンジするという勇気を身に付ける必要があると言う事です。かつての日本の経営モデルが成功したのは、優れたミドルあっての事だということも分かって来ました。

 つい最近、「改革の哲学と戦略」(加藤 寛・竹中平蔵 共著)という本が出ました。改革が実を結ぶには、実践段階の計画が如何に緻密に練られているかに懸かっていると書かれていました。正にP2Mの真髄であるプロファイリングマネジメントのあとのア―キテクチャマネジメントの話だと思いました。シナリオを実現可能な制度や組織に落とし込む作業には、必ず克服しなければならない課題があります。この課題を具体的に定義し解決の道筋を考えることの出来る人材が今の日本には不足しているという事です。

 P2M研究会では、有志の方々との交流を通じてこうした思いを伝え合う事が出来ています。PMAJの支援の下、当研究会に多くの会員が参加し活発な発表の場となって行く事を願い本稿を終わりにします。ありがとうございました。
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