図書紹介
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バガボンド (28)
(井上雄彦著、講談社発行、2008年05月23日、第1刷、#243〜#251、1,000円+税)

デニマルさん(D棟):7月号

今回紹介の本は知る人ぞ知る漫画本である。この本は、週刊モーニング(講談社)で10年間連載されていて、この単行本で28巻目となっている。因みに、売上は4930万部もある大ヒット作品なのである。売れている背景には、人間味溢れる登場人物とスリリングなストーリ展開と、それに迫力ある絵がある。その結果、第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞(2000年)、第6回手塚治虫文化賞マンガ大賞(2002年)等を受賞している。著者は、他にバスケットボールを題材の「SLAM DUNK」や車椅子バスケットの「リアル」等がある。2004年に「1億冊ありがとう」イベントで、廃校でのチョーク画展も開催している。

バガボンドとは   ―― 原作「宮本武蔵」(吉川英治著) ――
バガボンド(vagabond)とは、英語で放浪者、流浪人、漂泊者という意味である。しかしこの本の中身は、小説「宮本武蔵」(吉川英治著)が原型である。なぜ英語の分かりにくい題名にしたのかについて、著者は「読む前から先入観や好き嫌いを持ち出されるのが嫌だった」のと「実在の人を好き勝手に描くことに後ろめたさを感じたからである」と書いている(第5巻)。第1巻の発売は1999年3月であるが、週刊モーニングの1998年40号からの収録である。今回は、武蔵が吉岡一門と決闘した後の精神的な苦悩が書かれている。

小説の漫画化  ―― スト−リかビジュアルか ――
最近は、小説からノウハウ本、難しい技術書までも漫画で描かれている。以前は、漫画ばかり見ていないで勉強しなさい、もっと活字(小説や偉人伝等)を読みなさいと言われた時代があった。その傾向は、現在ではどうなっているのであろうか。この話題の本では、53冊中(2008年5月現在)、「ダーリンは外国人」(2004年10月)や「ドラゴン桜」(2007年10月)等7冊を取り上げている。その漫画には、オリジナルものと小説を漫画化したものがある。今回の本は原作を脚色をしている。それが読者を惹きつける魅力となっている。

最後のマンガ展  ―― 筆で描く漫画展覧会 ――
著者は、もともと漫画に限らず絵を描くことが好きだった。だから「ただの絵かきになりたかった」とも言っている。その試みが先の「1億冊ありがとう」イベントであり、今回の『最後のマンガ展』(東京・上野の森美術館)である。この展覧会には、140点もの肉筆画が展示されている。全て毛筆で和紙に描かれた作品は、本からは味わえない迫力がある。今号の巻末に鉛筆でデッサンされた絵が紹介されている。連載中の「武蔵が対戦相手を殺し、自分が生き残った奥深い心境を展覧会の空間を使って表現した」と著者は語っている。

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