PMRクラブコーナー
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「身近な話題をPMRの視点で語る」コーナーの開設

芦原 哲哉:5月号

 この度、PMAJオンライン編集長より、PMRコーナー編集プロジェクトマネージャーへのご推挙をいただいております。皆様のご異存が無ければ、微力ながら、本コーナーの活性化に勤めさせていただきますので、ご指導・ご鞭撻の程宜しくお願いいたします。
 今後、PMR各位に執筆を引き続きお願いすることになりますが、堅苦しい内容ではなく、身近な話題をP2Mの視点で語る場にしたいと考えております。つきましては、言い出しっぺとして、まず、小生から話題を提供させていただきます。
我が家のP2M:
   昨春、大学と高校にそれぞれ入学したにも関わらず、自らの方向性を見付けられないでいる、我が家の愚息共にメッセージを送った。キーワードは、価値提供、知識資産、プロフェッショナリティ、行動様式、情報、コミュニケーション、組織行動、仕事観、人間観、人生観等々で、1カ月かけて肉付けしていった結果、文字数26千字にも及んだ。日頃親父の小言に耳を貸さない子供たちに、人生50年を過ぎて還暦間近の親父から「遺言書」代わりに手渡した。我が家のP2Mとして、子供達のこれからの人生に何かしらの役に立ててくれることを期待している。娘が社会人になる3年後には、それまで永らえていれば、第二版を送りたいと考えている。
プロジェクト選定の説明責任:
 最近、PFI事業実施において、自治体の財政を揺るがしているとされる事例が報道されている。そこでPFIという新しい手法そのものに矛先が向くとしたら、真に残念なことである。報道内容が真実であるとすれば、プロジェクトの選定そのものに誤りがあったということであろう。即ち、公設事業であろうとPFI事業であろうと、そのプロジェクト計画はそもそも実施に移されるべきものではなかったということである。プロジェクト選定の誤りを、PFIという手法の良し悪しに、議論のすりかえがなされては困ったものである。例えば、過去に不採算で物議を醸した海底トンネルや大橋の事業を、PFI事業として実施していたら状況が変わっていたかというと、それはあり得ないだろう。
 とかく、新しい手法や概念が登場すると、それが万能であるかのような錯覚にとらわれがちである。そして、そういう新しい手法や概念の採用を自らの説明責任を果たすための道具として利用するというのも筋違いである。PFIを採用しても、適切な手続きが行われず、根拠の乏しい評価体制をとっていたのでは、絵に描いた餅に終わってしまうということは自明の理である。
プロジェクトの内部統制:
   一方で、PFI事業における民間事業者側の対応にも不安が無い訳ではない。 PFI事業を実施している民間事業者の中で、事業計画を自ら作成し、財務状況を適切に監視できているところは意外と少ないという点である。そういう人材が内部にいないため、コンサルタント等に任せ切りというのが実情のようである。事業計画内容の妥当性も検証できていないということであると、プロジェクトファイナンス上の仕組み(モラルハザード対策)があっても機能せず、将来大きな禍根を残すのではないかと危惧する。もし、そういうことで実施中のPFI事業が経営悪化した時に、事業関係者が、「我々も被害者だ。経営執行陣に騙された。旨くいっていると聞かされていたのに。」等と言って、増資を決議するか、或いは事業を見捨てて破綻させるというようなことになって良い訳はない。
 最近、各企業で「内部統制」という米国発のマネジメント手法が導入されつつある。確かに、最近の社会システムは複雑化・専門化してきて、ブラックボックスのままで事業が遂行されるケースが多く、内部統制という仕組みの必要性には全く同感である。例えば、ビルの耐震設計の問題、食品表示の問題、粉飾決算の問題、公共装備発注問題(専門商社でなければ、装備品の中身が分からない)等々、最近の時事に関しては、情報の非対称性に起因して、プリンシパルがエージェントの不正を見抜けず、事態を悪化させているという、所謂モラルハザードの構図で一致している。PFI事業もその二の舞を演じないことを念じる次第である。
満足と信頼:
   先日、新大阪駅の土産店で久しぶりに某メーカーのあんこ餅を見付けて(かつては各店舗の入り口に山積みされていたものだが、今は片隅に数個しか置かれていない。)、一箱買い求めた。一家4人で食した後、全員が異口同音に「柔らか」と発した。これまで駅で販売されていたものの殆どは、返品を再加工品したものであったのだろうと妙に合点がいった。私は、これまで再加工品とは知らないながら、再加工品の品質に満足して(価値を認めて)、相応と判断する対価を支払っていたのであり、その取引自体に後悔はしていない。しかし、品質を落とされてもそれと気付かない、一流ではない消費者の一人として、恥ずかしい限りである。当然メーカーに対する信頼は大きく揺らいだが、こうして営業再開後の商品を買い求めている。 メーカーに対しては、こういう顧客を大事にしてくれて、満足と共に信頼の獲得と維持に邁進してくれることを期待している。
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