PMRコーナー 「中小企業の商品開発におけるプロジェクトマネジメント」
(株)スペースクリエイション 代表取締役 青木邦章:4月号
◆ 中小企業における商品開発の現状
大企業において開発スタッフとして10年、中小ベンチャーにおいて経営者として20年余、常にモノづくり系商品開発の最前線に身を置いてきました。大企業でのそれはドメインも組織も目標も明確な場合が多く、技術的に高度であってもマネジメントの面ではストレスの小さいもの。それに比して、中小企業でのそれは人・モノ・金・情報などすべての経営資源が少ない中で、より高いヒット率を産む必要があり、非常にストレスフルなものとなります。
中小企業での商品開発は、一般的には小数の経営層の情報収集力と企画決断力に頼ってことが進められる場合が多く、それも論理的でスマートにおこなわれるというよりも、情念的で行き当たりばったりの道筋をたどるため、結果は推して知るべしとなります。また、保有する資産も限られているために、自社単独では激しい競争の中で十分な差別化ができるような開発は難しく、産学官連携のように外からの多くの支援により、高度技術・開発予算・各種ノウハウなどの不足分野を補い、かろうじて成り立っていくといった代物です。
◆ 産学官連携の課題
大企業の企画開発力が低下しつつあるといわれる中で、中小ベンチャーによるイノベーション創出が声高に叫ばれています。それを受け政府による中小企業に対する産学官連携の研究開発支援施策は、年々手厚くなってきています。常日頃より開発投資意欲は旺盛なものの、実際にはあらゆる経営資源に乏しく思うに任せない一中小企業経営者としては、このような流れはまさに“渡りに舟”、積極的に活用して経営改善に勤しんでいます。
しかし、この産学官連携も実際に取組んでみるとさまざまな障壁に直面し、世の期待とは裏腹になかなか成果を出せないものです。原因を追及すると枚挙に暇がありませんが、第一に挙げられるものは産業界・研究機関・行政、三つの異文化のぶつかり合い、三者のベクトル合わせに必要以上に労力を割かれ、真の研究開発に没頭できないことです。
同じ日本の、しかもほぼ同年代の職業人同士の連携であるにも拘らず、実務ベースでの考え方の違い、こだわる点の違いには驚かされる点が多くあります。産業界は儲けてなんぼの世界、研究機関は論文や知財の創出が命の世界、そして行政は秩序を重んじ、きちんとルールにのっとり書類整備されているかを重視する世界、なかなか気持ちをひとつに目標に向かってまい進することができません。
◆ P2Mによる解決
私がこのようなときに出会ったのがP2Mです。プロジェクトマネジメントについて、いろいろと思いをめぐらせている時、それらを体系的にしかも複雑系に対応した理論として確立させたP2Mに興味を覚えたのです。IT業界やエンジニアリング業界における同様の苦労の解決策として生まれた叡智が、異分野連携・異業種連携による商品開発にも応用できるはず、そう思って一から勉強し直してみることにしました。
個別の内容については、過去いろいろと学習や経験していることがほとんどではありますが、それを体系的に整理して全体像を概観するということは、プロジェクト(プログラム)マネジメントのそのものの考え方。ガイドブックを読み進んでいくうちに、またPMS・PMRと資格チャレンジを進めるうちに、単なる知識としてではなく実践ツールとして、考え方そのものが血や肉となっていくことを強く感じることができました。そして、それはそのまま産学官連携による商品開発マネジメントの場に大きく活用できるようになってきています。
P2Mの個別マネジメントにおいて、私がもっとも強く関心をもっている関係性マネジメントやコミュニケーションマネジメントについては、まだまだ内容が十分に掘り下げられているとは感じていません。今後、多くの賢者達の力によりさらに充実されていくものと期待しています。また、私自身もわずかではありますがそのお手伝いができ、自分自身の知見や経験がそのために役立てられることができたらと、漠然と思いながら日々プロマネ業に取組んでいます。
以上
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