「日本を再生するPM」
オンライン編集長 渡辺 貢成:4月号
近年の日本は元気がない。何故でしょうか。米国ワシントン(政府)は日本を「緩やかに衰退する国家」と認定しました。全く馬鹿にされた状況ですが、日本政府からの反応は全くなく、「はい、その通りです」。と回答しているように思います。私は大学のポストドクター、中小企業経営後継者その他多くの若い人たちにPMに関する講演や講座でお話していますが、皆さん日本の現状になんとなく不安を感じています。では日本は言われるように駄目な状況かと言うと全く逆で、世界にないいろいろな財産を持っています。多くの日本の評論家は日本の良いところを見て、それをどのように展開すると日本は良くなるかという発想を持っていません。そこで「今月のひと言」は新年度から日本を明るくするテーマを取り上げたいと考えています。
1.第一世代と第二世代の企業戦士
戦後の日本経済の高度成長は素晴らしいものがありました。これを支えたのが「第一世代の戦士」です。これらの人々は困難な仕事をこなし、また多くの失敗も経験してきました。しかし、それでも世間がその失敗を許してきましたから、彼らは経験豊富な実力の持ち主になれました。それを受け継いだのが、第二世代の企業戦士たちです。彼らは第一世代の企業戦士とともに戦ってきましたから、同じく高度成長に貢献しました。
2.第三世代の企業家
さて、第二世代の後継者は第三世代です。残念ながら企業戦士になっているのかという疑問があります。組織に経験が積み重ねられると、失敗件数が減少します。大変結構なことです。しかし、残念ながら実践し、失敗することが少なく、真の経験者になれないという人々をつくってしまいました。彼らは同じ日本人ですから勉強家です。たくさん知識を学びます。しかし、これらを正しく活用することが得意ではありません。活用しないで10年が過ぎてしまいました。この間失敗しない人々が企業のトップに上り詰めてきました。
残念ながら彼らの多くは新しいことに挑戦する勇気をもっていません。新しいことを自分の責任で意思決定し、採用することを避けてきました。そして採用するのは米国で成功したビジネスモデルやITツールです。全ての企業が戦略と称して同じ戦略をとりますから、常に競争激化で値引き合戦になり、世界一素晴らしい商品が研究費を回収できない有様です。
3.第三世代の評論家
最近のテレビニュースを見ますと、第三世代の評論家が色々と論評しています。ほとんどがニュースとして現れた「問題点の指摘」と人の批判です。これを私は「小さな正義」と呼んでいます。「小さな正義」は一見論理性が有り最もそうですが、その問題を皆無にすると日本が飛躍するかというと全く関係ありません。評論家の主たる業務は欠点への批判ではなく、何をすると日本が復権できるのかという「大きな正義」を掲げ、日本人を誘導する役目があります。他人の欠陥を見つけて、暴き立てることは勉強しなくてもできますが、将来を論じるには今の10倍の勉強をしなければなりません。競馬の予想屋は自分の責任で将来の予想をつくり、金に換えています。日本のマスコミも競馬の予想屋に負けずに日本をどのようにして再生するかの戦略を提案すべきです。
4.今日本にありあまっているものと日本人に不足しているものは何か?
それはマネジメントという概念です。マネジメントとは人々を管理することではありません。人々が働きやすい環境をつくり、成果をあげる手助けをすることです。日本は今世界で最も恵まれている国です。@金が有り余っている。A多くの高い技術がある。B有能な人材が豊富にいる。このような恵まれた国は他に在りません。第三世代の経営者はそれらを活用するマネジメント能力を持ち合わせていないのが残念です。新聞の論調は昔から「ものつくりと技術振興」ばかりです。現実はこれら@、A、Bよりマネジメントの方がより重要だということを日本人にもっと知ってもらいたいのです。
5.更に大切なことは何か:日本の良さを発見しよう
人や組織の欠点を見つけても価値を生み出すことはできません。今の社会は欠点だけを探して、非難し、経営者にテレビで謝罪させることでマスコミの責任を果たしているために、経営者が保守的になっていると榊原英資早大教授が講演会で話していました。では今、日本人は何をするべきでしょうか。国民全員が日本人の良いところを再発見することです。日本には世界中の人々が欲しがるものがたくさんあります。
自分の周囲で優れたものを評価しましょう。良いものを取り上げてこれを採用しましょう。日本人の高級な感覚(センス)、世界一優れた味覚、おいしい果物、集団での仕事の素晴らしさ(個人主義の国の人は日本のまねを始めています)。長期的な視野の経営(今失われている)、会社に対する信頼感(これも誤った成果主義で一時破壊されました)、熟成した日本文化。日本に来た外国の若者が評価する日本の良さを権威といわれる日本人が全く知らないだけでなく、破壊する方向に活動しています。
6.日本の良さの発見もマネジメントの一つです。
ではマネジメントとはどのようにすることか知っていますか。
マネジメントとはまず@「あるべき姿」を描くことが出発点です。これはミッションです。
A何のためにそれをするのかを考えます。Bゴールを考えることです。そしてゴールに向かって行動することをいいます。この行為とは何でしょうか。そうです。マネジメントをすること自体がプロジェクト活動と同じです。使命・目的・目標をきめて実行するのです。マネジメントにはプロジェクトマネジメントのツールそのものが使えることを理解し、皆さん方も大いに活用してください。これであなたも勇気が出たと思います。
以上
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