PMプロの知恵コーナー
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海外でのITプロジェクト実践 (12)
「海外駐在」

向後 忠明:3月号

 先月号では、総合テストも予定より早く終わりソフトウエアー会社の社員とともに帰国するところで終わりました。その時点では、途中の飛行機旅や日本への思いにひたり浮き浮きした気持ちでいたと思います。
 そして、私と共にT国の空港を飛び立ちました。

 飛行機に乗って1時間少々した後、フランクフルトに到着する時刻になりました。そして、次の飛行機に乗り換えるのに2時間ほどの余裕があるのでどのようにフランクフルトで時間をつぶそうかと思いながら、外の景色を見ていたらどうもいつもと違う空港の景色が見えてきました。
 その時になって、理由は忘れましたが機内アナウンスによって着陸する空港がフランクフルトではなくボンに着陸するということでした。
 私も何度かドイツに来ているがボンは初めての空港であり全く地理がわかりません。
 一方のソフト会社の人たちはほとんどパニック状態でした。
 フランクフルトとボンの位置関係そして距離もわからないまま、空港の職員に聞いて、何とかフランクフルト行の直行バスを見つけました。
 フランクフルト空港には大分暗くなって着きました。勿論、次に乗る予定の飛行機はすでにそこにはなく、空港で一晩過ごす覚悟を決めました。しかし、ソフト会社の人もいるのでダメもとでルフトファンザのカウンタに、理由を説明しホテルのあっせんをお願いしました。その結果、今回の着陸地変更はルフトファンザの事情で発生したということでホテルを無料宿泊としてくれました。
 その後すぐに次の飛行機便の会社に連絡しそれぞれのチケットの書き直しをしてもらい、ホテルに向かいました。
 みんなの楽しい飛行機旅もこのようなことで大変なこととなりました。ここで、言葉のわからない「海外初めて人間」であるソフト会社の人達だけで帰ったらどのようなことになったかゾーとする思いでした。
 その後は、翌日無事にJALに乗ってもらいソフト会社の人たちは日本へ向かいました。
 たまたま、私がほかの用事でアジアのT国そして日本に用事があったので、結果的に良い結末になったと今でも思っています。

 そして、私は南周りでアジアのT国に入りました。到着が確か朝の4時頃でした。それから直接自社のB事務所に時間を合わせ出かけていき、軽い食事と打ち合わせをしてこの国の中央銀行に出かけました。
 この国の中央銀行も現在進めているプロジェクトと似たシステムを考えているようで、違いは小切手システムの自動化を考えていることでした。
 今回は事前のプレゼンテーションであり、話の内容は「お互い要求しているものが何かそして我々にできるものが何か」を確認しあった程度の会議でした。
 ここの中央銀行は実際作業をやっているプロジェクトマネジャの話を聞いてかなりの興味を抱いたようで、さらに詳しいい話の約束をし、良い感触を持って、その日のうちに日本に帰りました。

 翌日は本社に顔を出しこれまでの経過説明を行い、早めに家に帰りゆっくりしようとしていたところT国の担当からメールが入り、システムにトラブルが発生したとの連絡が入ってきました。
 われわれのシステムと各銀行のリレーコンピューター(中央銀行と各銀行をつなぐコンピューターシステム)のインターフェースに問題があったようです。
 このリレーコンピューターの設計を行っているのはロジカ社というイギリスのソフトウエアー会社です。急遽、会社で航空券を取ってもらいその日の夜には飛行機の人になっていました。

 考えてみると寝たのは日本での一日だけでそれも時差ボケでほとんど寝ていません。
 南周りと北周りを3日間で旅するのはさすがの私も参りました。体がしびれてきてめまいもしてきました。  このような状態ですぐに中央銀行のスタッフとインターフェース問題の対策について話し合いを行いました。
 結局は中央銀行の各銀行への指示が明確でなくわれわれの考えと齟齬があり、我々が中央銀行に代わって、イギリスのロジカ社と直接話をすることになりました。

 もちろん、社内的にはシステムのどこに原因があるのかデータ解析をしてからの話になるので、その後私は1日ほどゆっくり休ませてもらいました。

 ソフトウエアー会社の社員とともに飛行機に乗ってからの数日間は多くの事象が一度に生じて、この出来事は15年ぐらいたった今でもはっきりと覚えています。
 たまたま、運よく私が一緒に飛行機に乗ったことがソフト会社の人たちを無事に帰すことができたので何も起こらなかったが、もし私がいなかったら大騒ぎになっていたと思います。

 さて、中央銀行内のシステムは、これまで話してきたように順調に完成に近づいていたので、主力担当をインターフェースの解決に当たらせることにしました。
 この問題の解決にはイギリスに行き、これまでのデータ解析をもとにロジカ社と話をする必要が出てきました。
 そのため、中央銀行の担当者と私を含めて我々の担当者2名とイギリスに向かうことになりました。

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