今月のひとこと
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「マネジメント」とは何かを皆さん考えてください

オンライン編集長 渡辺 貢成:2月号

 新年号で「プロマネの現場力」の話を書きました。それは最近日本企業の最も誇るべき ものの一つである「現場力」の低下を感じるからです。内部告発が多くなって、賞味期限 やその他老舗までが金儲けに走り、品質軽視の傾向が見えるからです。マスコミは鬼の首 を取ったようにこの問題を取り上げていますが、犯人探しに従事し、この問題を前向きに どのようにするべきかという観点で全く捉えていません。そこには多くの問題が隠されて います。

第一がマスコミの品性の低下です。マスコミは視聴率や売上げ目当ての記事が優先されて いることです。実はこれは読者から見ると品質の低下です。同時にこの手の記事を喜ぶ、 日本人視聴者の質の低下といえます。その理由をお話します。賞味期限や欠点を直せば日 本企業の競争力が向上するのか、という問題の欠如です。欠陥を無限に減らすとコスト高 となり、競争力が低下するからです。競争力強化という視点と欠陥の除去は同時に考える 問題です。全体最適というマネジメントレベルの発想が必要です。問題はマスコミが依然 としてマネジメントというものの本質をしらないという質の問題があります。20世紀が これほど発達したのを皆さん方は技術と考えていますが、技術を組織にのせて、困難な開 発を世に出したのは実はマネジメントの力なのです。マスコミがこのことを取り上げない ために日本は依然としてモノつくり、技術、匠の技(これは重要なのですが)で発想が止 まっています。

第二の問題は現場力の低下である。
日本の強みは現場力です。個人主義を基調とする欧米諸国の現場はトップダウンによって 指示されたことを実施する集団で、考えない集団です。極端に言えば考えることを認めら れていない集団です(最近は変わり始めたようです)。日本はQCサークルでわかるとおり、 現場の労働者まで考えることに参画しています。しかも自発的にQCサークルを続けてい ました。ところ「誤った成果主義」の導入で集団の力より、個人の成果を優先する政策に 転換しました。集団主義には定年までという保証がありました。社員に対するこの保証無 に成果主義で一時給料の削減を目的とした政策を実施しました。会社が如何に奇麗事を言 っても社員はバカではありませんから、その意図をすぐに見破ってしまいます。この結果 が集団主義の見えざる破壊につながっています。そこでは努力をしないで成果を勝ち取る 要領のいい人間がふえました。要領の悪いまじめ人間に、そのしわ寄せがいきます。今、 日本人の自殺者が交通事故死を大きく上回っています。交通事故を減らすことは困難です が、それでも関係者のご努力で減っています。自殺者は企業がつくり出しているといえま す。現場力が低下した意味がお分かりと思います。競争力は現場力とトップマネジメント の経営力できまります。

第三の問題はグローバル化していない企業の内向き現象です。グローバルで稼いでいる企 業は日本では18%です。残りの企業がグローバル化する変わりに内向きに転換していま す。海外からの収益が将来価値を高めるところでないところに使われています。これも政 治と役所のマネジメントの欠如によって起こされています。IT投資の重要性が叫ばれ、 多くの金がIT投資に使われています。しかし、日本ではメンテナンスに70〜80%使 われています。プラントのメンテナンスは5%以下です。家で考えれば、雨漏り、立て付 けの悪さの修理に80%使って、新築は20%ですよというのは何かがおかしいと思いま せんか。おかしいと思ったらすぐに手を打つのがマネジメントです。でも、現状改善はな く、先送りというマネジメントがあるだけです。

グローバル化社会では「技術は大切ですが、マネジメントがより重要だ」ということを私 たちはもっと理解して欲しいというのが私の提案です。
蛇足ですが、マネジメントを実行に移すときプロジェクトマネジメントが有効に活用され ます。
以上
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