今月のひとこと
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「プロジェクトマネジャーの現場力」

オンライン編集長 渡辺 貢成:1月号

読者の皆様 新年おめでとうございます。
参議院選挙以降日本が少しづつ変わってきた気がします。C型肝炎問題で政府ははっきりと国民を視野に置いた政策を打ち出しました。これまでの国の政策は「国は誤りを犯さない」という大前提で国の政策も裁判も行われてきました。国の権威が崩壊したら一大事だからです。その意味で今回の変化は官僚にとって大きなショックです。民間では賞味期限等内部告発による企業倫理の問題が表面化しました。これも一つの大きな流れと見てよいと思います。

ではPMの世界では何が変わるのでしょうか。ITプロジェクトの仕事のやり方が変わってくると感じています。まず、J-SOX法です。従来あいまいであった契約に対する考えが変わってくると思います。ITプロジェクトはプロジェクトの構想計画その後の契約や要件定義で十分な対応をしていないプロジェクトを多く見かけます。J-SOX法が従来あいまいであった契約に対する考えを変へると思います。

海外のプロジェクトを経験するとわかりますが、契約の締結で発注者、受注者は契約で決められた役割を確実に実行します。PMの世界においても契約から仕事が始まります。その論理は発注者と受注者がそれぞれの役割を的確に実施することで良いプロジェクトが実施できることを示しています。逆に言うと受注者は発注者の仕事を代行することは不可能だからです。現代の複雑なプロジェクトにおいては構想計画が最も重要になります。これは両者が協力して纏め上げないとなかなか難しいという面があります。現代のプロジェクトは共同開発的要素をもっています。

契約の問題を米国ではどのように捉えているでしょうか。発注者が契約書に書かれた役割をサボると追加金が請求されます。そのために受注者はロイヤーを雇って、追加を虎視眈々と狙っています。近年の米国における契約上のWIN/WINの発想は受注者の請求に対し、少しゆるやかにしてよという意味合いがあります。一方日本ではお客さんの無理難題は控えめにしてくださいという意味合いがあります。これらを踏まえて発注者のプロジェクトマネジャー、受注者のプロジェクトマネジャーともども同じ目標に向かって協力する関係が重視されるようになります。

法律の改正だけで仕事のやり方が突然変わることはありえませんが、新しい流れが出てくると思います。そこでPMを再度眺めて見ます。PMの基本属性(基本的な性格)に個別性(他にない独自のものを取り扱う)、有期性(始まりがあって、終わりがある)、不確実性(リスクが沢山あって、危険いっぱいの仕事である)というものを取り扱う職業です。終わりがある仕事をする職業とはすべての結果責任を請け負う業務だということです。

さて、この難しい仕事を受け持つのがプロジェクトマネジャーです。米国のプロジェクトマネジャーはPMBOKに守られて仕事ができます。それは構想計画をプロジェクトマネジャーは担当しません。それは米国に10万人(2000年度)もいるMBAの役割だからです。そして契約も整備されてPMBOKがそのまま使えるからです。でも日本ではMBAが活躍していません。構想計画もプロジェクトマネジャーの役割となります。PMBOKが十分に利用できるプロジェクトが少ないという環境にあります。これを乗り切るプロジェクトマネジャーの育成が求められています。PMAJは実践的なこれらのマネジャー育成が急務と考えています。

この任に当たるプロジェクトマネジャーは基本的な専門職能力を持ち、多くの経験を積み、あらゆるリスクを予見し、プロジェクトの構想計画から参入し、成功確率の高い状況を作りながら仕事を進める原則に基づいた業務手法を知っていなければなりません。プロジェクトは常に緊急事態に直面します。そのためには各種緊急事態を臨機応変に解く知恵の発揮が求められています。P2MではPMR資格者がこれに相当します。私はこの実践能力をわかりやすくマネジャーの現場力と名づけました。

PMの世界でも大いに変わってきます。PMAJはこれらの変化の先取りをすることを考えています。2年前からP2Mの実践的な研究会を開催していますが、この現場力を高める講座の開設も企画しています。本年はプロマネの実力向上に貢献し、プロジェクトの現場が希望に満ちた職場になることを願っています。
以上
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