PMP試験部会
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「ドイツから」

関谷 哲也:1月号

あけましておめでとうございます。先月の三浦さんに引き続き、研修第2部会のROM(Read Only Member)の関谷です。

私は、2004年3月にドイツ赴任をとなり、JPMF(当時)の様々な活動から離れることとなりました。それまでは、副会長を務め、現在の部会の前身の試験部会をはじめ、例会A、シンポジウムのプロジェクトチーム、「トコトン」の編集など、JPMFのメンバーの方々と楽しくPMを学ぶことができました。

渡欧前は、10年以上にわたり建設業の中においてPM/CM(コンストラクション・マネジメント)を専門職能とするフィービジネスを模索しながら、施設戦略の策定、オフィスのワークプレイスやITソリューションのコンサルタント、不動産投資における施設評価、PMシステム構築の支援などの新たなビジネスチャンスを試行していました。それまで、海外建設事業に従事することがありませんでしたが、ヨーロッパの地を踏み、EU拡大の潮流の中、近年の自動車、家電関連の日本企業の活況な投資により、今ではEU諸国を中心に広範囲にわたる建設事業に携わっています。これまで、アメリカやヨーロッパで発達していた建設におけるPM/CMビジネスが、30年の歴史を経てもなぜ日本において大きな展開を見せないだろうと常に考え込んでいたのが、まったく異なる立場になりました。それは、日本の建設業としていかにヨーロッパの建設市場でアイデンティティを高め、魅力ある地場産業として、発展的かつ継続的な企業活動を通じ、社会に貢献できるかという新たな命題をもつこととなりました。自分自身の中におけるもうひとつの大きな違いは、それまでプロジェクトの中でマネジメントという観点で常にものごとを見ていたのが、建設業のコアビジネスに深く携わることで「ものづくり」という視点を強く持つようになったことです。

高い顧客満足度を得るためには、建設行為を通じて安全・品質・工期・コストを期待通り達成するとともに、常にお客様の事業戦略・計画に即したフレキシブルな施設の構築をサポートしていかなければなりません。その中でも特に「安全」は、直接建設工事に携わる人々、その家族、その施設で常時執務される方々、また訪問者そしてその家族など、広く企業活動を取り巻く人々の生命を守ることであり、一度たりとも事故を起こしてはならないという管理活動であります。安全管理活動は、計画と差異があった場合に解決策を講じるという、プロジェクトマネジメントの管理プロセスとは少し様相の違うマネジメントプロセスになっていると思います。

事故・災害はリスクであり、それを予測し、適切な対策をとるという点では、リスクマネジメントであります。人的要因の大きくなりがちな建設現場での事故を未然に防ぐためには、工事の管理をする人はみずから計画をし、常に工事の手順を先取りし、関係者にはたらきかけ、まさにこれから作業する人たちが耳をかたむける注意喚起をしなければなりません。そのためには、管理者が工事をする「もの」そのものをよく理解し、それを「つくる」プロセスを理解したうえで、日々その状態を現地現物で把握した上で、作業員の動き、行動パターン、作業手順が想像できていないと、実効性のある活動にならなくなります。機能・職能分化がすすんでいるヨーロッパでは、非常にチャレンジングなことだと思います。

ヨーロッパにおいて各国で拡大、分散している建設活動を、適切で一貫したプロジェクトマネジメントのプロセスで、かつ常にスムーズなコミュニケーションを図り、迅速な意思決定、ナレッジの共有が図れるよう、様々な取り組みを行っています。もうすこし、このヨーロッパの地で「ものづくり」と「プロジェクトマネジメント」を考えてみたいと思っております。
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