PMRコーナー 「あるプロジェクトの顛末」
梅澤 安宏 PMR:12月号
プロジェクトのスタートは、遠地に住んでいる父親からの一本の電話でした。 「母親の様子がおかしいので一度来て欲しい。」 ありのままの姿を診断すると、母親については
@軽度の認知症が出ており、現状では何とか歩行可能だが、足腰もかなり弱っている。
A誰かが、一緒にいないと問題が起きる可能性がゼロとは言えない。
一方で、父親についても下記を再確認した。
@ 不整脈でペースメーカーを装着しており、電池交換手術を1年以内に行なう可能性あり。
A 頭はしっかりしているが、高齢でもあり、一人で母親の介護は重荷である。
(あるプロジェクトのミッション)
目的:両親に不安や不満の少ない、老後生活を提供する。
目標:あるべき姿へ移行 期限:1年以内(父親の手術以前)
方針:関係者全員(父、母、妻、私)の全体最適
制約条件:ステークホルダーの肉体的・精神的負担,対応資金の上限
緊急処置:ガスレンジの使用停止、タイマー付きIHレンジへの転換(切り忘れ対応)
(ペースメーカーへの影響が懸念されたが、実態としては問題無し)
車椅子と浴室用椅子を準備し、母親の転倒防止 (緊急処置は全て父が対応)
@両親の介護施設入所 |
(経済性〇 妻の負担〇) |
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A両親との同居&介護 |
(経済性〇 妻の負担×) |
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B当方近隣での賃貸居住&介護 |
(経済性〇 妻の負担△) |
を想定した。 |
関係者とのコミュニケーションとプロファイリング・マネジメント(あるべき姿検討)
父: |
現段階では介護施設等の入所や同居は避けたい。可能な限り、夫婦二人の生活希望。 介護施設は制約が多すぎて自由が無い。同居も双方が大変なので避けたい。当面はデイ・サービスも利用したくない。 |
妻: |
同居は大変だが、近隣での居住ならば、買物・通院等の運転手も含めて柔軟に対応可能である。 要介護認定を受けて、デイ・サービスも活用して欲しい。 |
この結果、あるべき姿としてBを選択、近隣での賃貸物件のリサーチを開始した。
居住: |
現住居と同等以上の広さ、将来に備えてトイレや風呂への車椅子でのアクセス、介護者の寝泊りが可能で、相互に徒歩で行き来するために500m以内を理想とした。 |
同時に、下記も調査確認した。
電池交換:ペースメーカー装着実績が20例以上ある病院の抽出⇒K病院に決定
介護:良好なディサービス施設⇒近隣での評判を聴取して数箇所の利用可能を確認。
賃貸物件リサーチ (妻が担当)
一般的に賃貸マンション等は、若夫婦向けでバリアフリーでないケースも多く、不測事態への恐れから、高齢老人の入居に難色を示すケースが多いと判明。 (スペースも狭い)
居住物件購入へ方針転換(変化柔軟性の原則)
新たな制約条件: |
@両親の手持ち資金での購入 (随時対応可)
A不動産を売却し、手持ち資金と合わせての購入(選択肢は広がるが、売却先決定後の対応となる。) |
・購入物件に関して、幾つかの近隣業者と接触し情報収集 (妻が担当)
・購入資金不足も想定、不要不動産の売却を推進 (遠地業者との遣り取り:私が担当)
購入物件リサーチの結果、当方から500m以内の物件として、新築マンション1、建設中マンション(バリアフリー)1、中古マンション1 中古戸建て×2の5件が該当、
各種検討から、中古戸建ての一つを選定したが、価格が制約条件Aとなり、不動産売却が前提となった。 ローンも検討したが、結果的には、業者経由で持ち主と3ケ月間の価格交渉の結果、制約条件@で準バリアフリーの中古戸建てを購入できた。(100m以内)
* 戸建てのメリットは必要に応じて、バリアフリーへの改造が可能なこともあげられる。
このプロジェクトは、PM手法の活用というような話ではありませんが、会員各位が、高齢者問題への関心を持たれる一助となれば幸いです。
以上
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