PMプロの知恵コーナー
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「夢工学(60)」

川勝 良昭 [プロフィール] :10月号

悪夢工学

第11部 危機に直面した日本

1 渡る世間は鬼ばかり

●悪夢工学式性格タイプの存在割合
 夢を持ち、夢の実現と成功に挑戦する場合、最も頼りになる「他者」とはどうゆう人物か。言うまでもなく、その人物とは、悪夢工学式性格分析評価のAタイプの人物である。Aタイプ以外のB,C,Dのタイプの人物は、頼りにならないどころか、彼等は顕在的又は潜在的な夢破壊者である。従って夢を実現し、成功させるには「他者」の性格を見抜くことが必須のことである。

 さてこの世には一体どれだけの割合でAタイプ、Bタイプ、Cタイプ、Dタイプの人物が存在するのだろうか。筆者は、この割合の定量分析を、悪夢工学を構築した当初から知りたいと考えていた。

 しかしアンケート調査、面接調査などによって被検者から定量的データーを集める普通の分析評価方法は、残念ながら悪夢工学の場合、全く効果がない。何故なら、これは被検者の本性を探る特別の調査でなければならず、通常の調査方法や統計的処理法は全く馴染まないからである。言い換えれば、余程のことがない限り、人は本性を明かさないからである。

●性格評価のための定量分析費用
 膨大な費用、時間、労力などを投下すれば、人の本性を判明することが可能でだろう。しからば、どれくらいの費用や手間を掛ければよいか。結論から先に述べると、数億円を掛けないないと判明しないと考えている。その理由を以下で明らかにしたい。

 筆者は、新日本製鉄勤務時代に「MCAユニバーサル・スタジオ・ツアー開発プロジェクト」を担当した。それは、後に大阪市がMCA社などと第三セクター方式で完成させた現在の大阪の「USJ大阪映画パーク」のことである。

 筆者は、当時、日本には「東京ディズニーランド」以外に大型のテーマパークが全く存在しない時に市場調査のしようがない。しても正確な入場者予測は困難であると考えていた。しかし新日鉄の社長は、自分が説得するに何らかの市場調査は必要との考えを示していた。ならば金に糸目を付けないことを条件に、筆者は「本気と本音で市場調査をせよ」と某市場調会社の社長に命じた。その結果、1億円の市場調査を実行した。その市場調査結果は、新日鉄社長が中断させたプロジェクトではなく、現在のUSJ大阪プロジェクトに生かされた。この市場調査では、約3500人の被調査者から本音と本気を聞き出し、当該調査会社の利益を除き、1億円の殆どが調査費として使われた。たった1社にこれほどの金を支払って市場調査する会社は、今時いるだろうか。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(UFJ)大阪

USJ 1 USJ 2 USJ 3

以上の実例に照らしてみると、悪夢工学式性格タイプ分析評価を本音と本気で行うことは、USJ映画ランドに行くか、行かないかの市場調査のレベルとは訳が違う。しかも3000人でなく、その3倍の1万人ぐらいの調査は必要と考えているので、3000人で1億円なので3億円強の調査研究費用は必要と考えている。

 しかしその様な調査費を筆者個人では到底負担できない。また今の日本の大学や研究機関で負担してくれるところなど絶対に存在しないと思う。従って残念ながら悪夢工学の種の定量分析調査は、現在のところ不可能となっている。何か良い方法はあるだろうか。

●渡る世間は鬼ばかり
 読者の多くは、是非、この割合を知りたいだろう。しかし上記の通り、定量分析が難しい現状では、定性分析しかない。

 筆者の定性分析結果では、大変ショッキングな内容である。それは、我々の周辺を見渡せば常識的にも分かる通り、Aタイプの人物は、残念なことに、少数派に属するということである。言い換えればBタイプ、Cタイプ、Dタイプの人物は、世の中の多数派に属する人物であるということである。

 「渡る世間は鬼ばかり」というテレビ番組の通り、日本の世の中、「鬼」ばかり。我々は、夢の実現と成功に挑戦する時、いつも失敗させられ、いつも悪夢に遭遇させられるという話は、当然と言えば当然のことである。

渡る世間は鬼ばかり

 夢の実現と成功を阻む幾多の壁の中で最も厚く、打破が最も難しい壁は、「人の壁」である。対人関係で最大の注意とエネルギーを注ぎながら、失敗させられない様に、騙されない様に、悪夢に遭遇しない様に、そして夢の実現と成功させるために、悪夢工学を実践することである。

●のさばる夢破壊者
 夢破壊者は、どの様な会社にも、組織にも存在する。そして彼らは、帰属組織で。のさばり、高い地位に就き、引退後は、悠々自適の生活を楽しみ、生き長らえている。何故そうなるのかは、筆者の「夢工学」のバックナンバーを再度読み返せば分かるはず。

 彼らの本性を暴き、破壊工作を阻止することは、幾多の困難を伴う。夢破壊者と真っ向から対峙し、プロジェクト、事業、そして夢を如何に守るかという研究は、残念ながら、筆者の知る限り、この悪夢工学を除いて、ほとんど存在しない。だからこそ悪夢工学の存在意義があると褒められても少しも嬉しくない。悪夢工学など本来は存在して欲しくないものであるからだ。

 しかも夢破壊者が悪夢工学の存在を知り、それを学んで破壊工作を行う場合、筆者は、彼等とどの様に対峙し、どの様に対処すればよいのか。今も頭を抱えている。

 日本の国、自治体、企業、大学、個人のすべての分野と階層に於いて、Aタイプの人材は、少しでも多く発掘され、育成されることが望まれる。特に企業社会に於いて、Aタイプの人材を積極的に発掘し、重要ポストに登用し、経営者に選抜することは、当該企業の将来の発展に欠かせないことである。一方非Aタイプの人物を見抜き、経営の中核でのさばらさない様にすることは、更に重要なことである。しかし後者の課題は、一筋縄では達成できない。
(つづく)
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