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「IT・プロジェクトマネージャーの成功条件」
〜ITベンチマーキンクSIG〜

富士通株式会社 近藤 洋司:9月号

 1.はじめに
 タイトルのWGに参加し、早くも9ケ月が経ちました。参加のきっかけはWG主査の佐藤さんに誘われたからです。昨年7月のPMAJ例会で「プロジェクト成功法則と成功確率向上への提言」を講演しました。暫くして佐藤さんから、「プロマネにはシステム構築技術が必要と言ってましたよね。欧米では違うようですよ。一緒に研究しませんか?」と言うお誘いの言葉を頂きました。確かに興味深いテーマですよね。即座にOKと返事してしまいました。
 初会合は昨年11月で、7名の素晴らしいメンバーに恵まれ、研究は順調に進んでいます。是非、期待して頂きたいと思います。研究成果の中間報告をPMシンポジウム2007で8月30日に発表致します。発表者はWGメンバーの森さんです。
 さて、研究成果はシンポジウムを聞いて頂くことにして、今日は私が考えているプロマネ像について少し話して見たいと思います。

2.IT・プロジェクトの変化
 プロマネ像を議論する前に、そもそもIT・プロジェクト自身がここ20〜30年の間に大変化していることを確認しておきたいと思います。この大変化を一言で言うと「プロジェクトが難しくなり失敗確率が高まっている」と言うことです。主たる外的要因は以下4つ(1)短納期、2)ローコスト、3)開発量増大、4)技術範囲拡大)でしょう。一方、内的要因としてプロマネ能力の低下があります。プロジェクトが難しくなっていることと同期して、若いうちにプロマネ経験をさせられない、失敗経験などもっての外で周囲が手取り足取り指導してしまう。確かに、こう言う環境では優秀なプロマネは育ちにくいでしょう。
 ビジネスモデルも変化しています。昔からある所謂システムインテグレーション(SI)モデルの他に、ソリューションモデル、アウトソーシングモデル、更にはコンサルティングモデルなどが出現しました。其々のモデル毎にプロマネに期待される能力と目的意識も異なっており、これがプロマネ像を更に複雑化しているのだと思います。

3.プロマネ像
 プロマネと一言で言っても一律には議論出来なくなっていることはご理解頂けたと思います。そこで、ビジネスモデル別にプロマネ像を議論しても良いのですが、紙面の都合上次の機会に譲り、プロマネ像と言うより、プロマネの将来像について考えてみたいと思います。
 さて、IT業界ではインド・中国・ロシアなどBRICSへの投資を加速させています。IT普及(PC、インタネット)とグローバリゼーションの進展で、安いコストを求めて国境を易々と越えられるようになったからです。それでは、プロマネはどうでしょうか? プロマネまで国境を越えられるのでしょうか? 単純な形ではないと思いますが、いずれは越えていくのだと思います。先に越えるのがソリューションモデルとアウトソーシングモデルだと思います。そもそも、両モデルは定型化・ルーティン化によって開発期間短縮、コスト圧縮を計るモデルであり、複雑性を排除することを特長とするモデルである以上、最もシフトし易いと言えるでしょう。
 そうすると先進国に残るのは、SIモデルとコンサルティングモデルですが、SIモデルも小規模、難易度の低いものはシフトするでしょうから、SIの中でも超大規模なもの、超高信頼なもの、新技術を適用するものに限定されるのだと思います。ところで、コンサルティングモデルとは何かを説明をしていませんでした。一般的にIT・プロジェクトは需要部門(ユーザ)が開発部門(ベンダー)にシステム開発を依頼するものです。しかしながら、社会・業務が高度化すると、必ずしも需要部門が開発部門に依頼出来ないケースが発生します。なぜなら、需要部門に問題意識はあるものの解決案が思い浮かばず、どこの開発部門にどう声を掛けてよいか分からないからです。場合によっては、問題意識すら無く、外部から言われるまで気が付かないケースもあり得ます。問題分析と最適解とのマッチングから入るのがコンサルティングモデルです。このように、定型化・ルーティン化しない難易度の高いモデルしか先進国に残れないのではと思います。

4.最後に
 将来的にはプロマネも両極化して行くような気がします。プロジェクトマネージメント技法を身に付け、マニュアル通りに推進するプロマネ(それはそれで大変なことですが)では、国内需要が無くなるか、あっても低賃金需要でしかないように思います。一方では、コンサルティング能力を身に付けたスーパープロマネの需要は高まり、タレント化した高給取りになって行くのだと思います。いつの時期にそうなるかは良く分かりませんが、思いの外早いような気もします。プロマネの世界はまだまだ奥が深そうです。

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