今月のひとこと
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「資格は足の裏の米粒か?」
−行動の伴わないエリート群−

オンライン編集長 渡辺 貢成:7月号

 資格試験のための講座の講師をしていますが、資格に対するジョークを聞きました。

「日本で資格は足の裏の米粒だ」
「その心は」
「取っても食べられない」

 これは言い得て妙です。日本では概して資格を取っても給料が上がりません。資格が役職取得に有利に展開するとは限りません。日本的発想では、会社の金で資格を取ったのだから給料が上がらなくても文句も言えないことになります。
 米国のMBAは大変な資格です。しかし、日本ではMBA資格者が特段優遇されるわけではなさそうです。高い金を出して社員にMBAを取らせ、帰国後仕事の内容が変わらないのであれば、転職を考えるのもやむをえないと思います。他方MBAなどとっても会社の役に立たないよという声も聞こえます。なるほど、なるほどと、うなづけますが、それでいいのでしょうかとも考えてしまいます。

 そこで、この問題を考えてみました。ここには幾多の問題がありますが、資格を取らせた側の問題と、資格を取得した側の問題について両面の問題を考えました。

1. 資格を取得させる側の問題点
 @ 資格を取らせて、戦力としてその人材に何を期待したのか?
 A 資格者を使うポジション、あるいは仕事を考えたのか?
 B 資格者の採用で、定量的な数値目標を考えたのか?
 C 同業他社に負けない資格者の人員が欲しいからなのか?
 ・1.の問題の整理は資格者を増やして、従来とことなる質の高い、効率的な仕事のやり方をつくり上げる気持ちがあるのかという質問になります。逆に組織、個人に強い意志がない場合は資格者に報酬増加しても効果が上がらないという問題に直面することになります。

2. 資格を取得した側の問題点
 @ 資格取得前に取得によるメリットを活かす考えを持っていたか?
 A 資格取得後、取得の利点をどのように活用するか企画したことがあるか?
 B 資格取得メリット活かす行動を起こし、成果をあげたか?
 ・ 2の問題は資格を取得したら自分なりに取得した資格を有効利用することをどのように実行したかという視点が必要です。

私はこの上記2点を考え、IT関係者に質問を発しています。
「IT関係者にPMはPMBOKで間に合っているといわれていますが、あなたは契約をきちんとしてから仕事を進めていますか?」(Noという答えが多い)
「では、仕様やスコープは明確ですか?」(Noという答えが多い)
「WBSを書いていますか?」(Noという答えが多い)
「それではPMBOKを使っていますか?」(部分的に使っていますという答えが多い)
「PMBOKは入力情報、出力情報も標準テンプレートを使うと効率よく仕事が進められるようになっていますが、WBSディクショナリーや標準テンプレートは完備していますか?」(できていませんが多い)

上記の1,2を考察すると、多くの日本人は資格を有効に使う工夫をしていない気がします。基本的にエンジニアリング、マネジメントという基本概念に疎く、従来からの仕事の習慣が最優先している気がします。

私は今P2Mの普及活動をしていますが、それとは別に受注したプロジェクトを海外に発注する場合、発注する際の国際的に通用する標準的な考え方があります。
 @ 契約の概念
 A スタンダードの標準的な概念
 B 仕様書の概念
 C テンプレートの概念
 D ITシステムは常に改造するという発想が必要であり、外注しても、変更可能なシステムを構築し、顧客の要請に対応できるシステムつくりを指示する
 日本はオフショア契約を契機にこれらの整備を業界上げて行う行為に出れば、資格者は資格としての価値を発揮することができます。

エリートに聞くと、そんなことは百も承知ですといいます。ではなぜ実行しないのか。仕事は成果を出して当たり前なのに、知っているというだけでエリ−トの地位を確保しているこの日本的組織文化に大いに疑問を感じています。

最近の本を読みますと、2つの潮流があります。「これからの日本はますます日が当たる」というものと、「日本は危ない」というものです。両方の論理にうなずけるものがあります。前者はマネジメントをしっかりやれば、日本は今が大きなチャンスを迎えているとなり、後者の理論では日本は腰が重いから何もしない恐れがあり、危険であるとも読めます。いずれの場合も、日本は「戦略的転換点」に直面しており、日本に対する期待をどのように進めるかにかかっています。資格取得者の価値は上記対応することで益々上がります。従来のように単に待ちの姿勢ではなく、組織も個人も資格の持つ利点を工夫して行動する資格者となることを願ってやみません。
以上
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