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PMRコーナー 「P2Mの先進性に魅せられて」

石川 千尋:7月号

 プログラムマネジメント、プログラムマネージャ・・・ 至極当然のように日常使っているのだがこの“プログラム”という言葉の響きがあらぬ誤解を生じている・・・そんなことに気づいたのは若手の技術者との会話だった。彼らはIT分野の“プログラミング”と混同しているのだ。身近なところからP2Mについてもっと広めていかなければならないと気づいた一瞬だった。斯く言う私が、そんなにも自然に“プログラムマネジメント”を語ることができるようになったのは、P2Mとの出会いによるものである。

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 ITソリューションプロバイダーに勤務しており、これまで生産管理システム開発やパッケージの企画、ERP導入などに携わってきた。その中でITと経営について、また、顧客とベンダーとの関係について、プロジェクトがどうあるべきか について問題意識を持っていた。“日本システムアナリスト協会”の勉強仲間から教えられたITコーディネータという役割に関心をもったのも、その解を探るためだった。さらに同じ仲間からの情報でP2Mの体系を知ることになった。
 その知識体系は、複雑なミッションを担う問題解決タイプの第三世代プロジェクトマネジメントを扱い、技術システムの構築主体の適用から、ビジネス領域に接点を持つ管理手法である。戦略が求める変革をキーワードとした先進性をP2Mの中に見出し、感動したことを鮮明に覚えている。その先進性は、プログラム統合マネジメントの考えのなかに際立っている。そこには、全体使命から実行に移すために将来像を明確にするプロファイリングマネジメントやプログラム戦略マネジメント、アーキテクチャマネジメント、場の活性化をデザインするプラットフォームマネジメント、そして、環境変化への柔軟な対応を促すプログラムライフサイクルマネジメント、5E2Aの指標を定めた価値指標マネジメントがある。
 その先進性に魅力を感じたことと、ソリューションビジネスに従事するなかで、“構想、システム、保守”までの包括的なライフサイクルのマネジメントに関心を抱いていたことでPMR資格試験の初年度に資格取得にチャレンジした。そこではIT、エンジニアリングのみならず行政や事業開発など多岐にわたるプロジェクト領域を題材とした課題を異業種のプロジェクトマネジャとともに考えていく場が数多く与えられた。そこで、高い視点で問題・課題を捉える習慣がつき、将来の方向性を見出して解決する力を養うことができたと考えている。また、異業種のプロジェクトマネジャとの交流により異なる視点で考えることも学んだ。その後の実務においては、ソリューションパッケージ商品のビジネスを企画する時、P2Mの方法論を理解して、プログラム統合マネジメントの考え方に則ることで、円滑に作業を進めることにつながった。

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 その後2005年秋に設立された国際P2M学会にも入会した。P2Mが、日本発の標準プロジェクトマネジメントとして初めて公刊されてから6年が経過しようとしているが、国際P2M学会では、最先端PMとしての知識・ノウハウを習得することができる。今年4月に行われた春季研究発表大会では、小原重信教授の提唱する“第四世代のPMを目指して、改革系の革新、開発、改善の役割と知恵を結集するPMのフレームワークへの構想”を聞くことができた。
 学会というと敷居が高いという感覚があるが規模が大きくないこともあり、非常に親しみやすさを感じる。研究発表大会には、所属でみれば大学から産業界まで、分野でみれば社会科学系から理工学系までと、日本学術学会議の学術協力団体にふさわしく広範囲な分野でご活躍の方々が参加され、P2Mに関する各種テーマについて発表、討議が行われた。会場は発表者と参加者の距離が近く、活発な意見交換や、参加者からは質疑に加え具体的なコメントもあり、発表者の抱える今後の課題に対して有益な助言がなされていると感じられた。

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 “プログラム”とは何かを知らない方、否、ビジネスを創造することに係わるすべての方に、日本型プロジェクトマネジメント知識体系であるP2Mの全容を知っていただくこと、並びに、PMSの方にはPMRにチャレンジして実践力の証明と強化を図っていただくことをお奨めしたい。さらに、P2Mへの理解を深めて活用していくために多数の実務家・研究者の方に国際P2M学会へ参加いただき、プロジェクトおよびプログラムの成果を獲得するために、ともに研鑽を積んで行きたいと考えている。

ご参考:
 ITコーディネータ協会
 日本システムアナリスト協会
 国際P2M学会
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