図書紹介
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ぼく、オタリーマン。
(よしたに著、中経出版発行、2007年04月19日、6刷、175ページ、952円+税)

デニマルさん:6月号

この本は、今本屋で人気がありベストセラーの仲間入り寸前である。最初に出版されたのが、3月下旬で翌月までに既に6刷まで増刷されている。専門家筋では、ブレイクしているということになる。著者のプロフィールが巻末に紹介されてあるが、ごく普通のサラリーマン(実はSE:システムエンジニアー)である。しかし著者は、普通のSEとは違った才能を持っている。それはイラストレータという特殊技能である。その才能を活かして漫画を描いていた。それも今誰でもやっているブログ(ウェブ上に覚え書きや論評などを加え記録(ログ)しているウェブサイトの一種。“WebをLogする”という意味でWeblog(ウェブログ)と名付けられ、それが略されてBlog(ブログ)と呼ばれる。:Wikipediaより)に日記を公開したことに始まる。その漫画が若者から中年叔父さんやお姉さんに受けている。

オタリーマン?   ―― オタクなサラリーマン ――
著者の造語である。オタク的なサラリーマンを意味している。オタクとは、趣味などに没頭してコミュニケーションに欠け、偏った人といった悪い意味から、特定の知識を持ったエキスパートという意味もある。著者は前者的意味合いで使っている。特に、コンピュータ関連の業務に携わる人は、普通のサラリーマンとは違った特殊技能を必要とされることからよりオタク的な人が多いと言われている。秋葉オタクとは、その典型的な例である。しかし、多くの関係者は、納期に追われ休日返上で時間に追われるオタク的環境にある。

この本が出版されたわけ??  ―― 人気ブログが本になる ――
著者は、ヤフーのオフィシャルブログ「エンジニア★流星群@tech」(engineer_ryuseigun) で人気の「理系の人々」を毎週連載している。そのブログを整理して本として出版した。類似の本で、「うちの3姉妹」(松本ぷりっつ著、主婦の友社)があり、これはブログ人気の上位にランキングされいる。今回オタリーマンを取り上げたのは、サラリーマンが主人公であり、コンピュータ関係の仕事をしながら健気にやっている普通の青年だからである。

どうして人気が出たのか???  ―― 今の時代に求められる癒し系 ――
この本で取り上げている題材は、どこの職場でもありがちな若者の気持ちの揺れや想い、怒り、同情、諦め等々を上手く表現している。主人公がオタクだから、孤独で、真面目で、弱気で、控え目で、もてなくて、暗い青年である。人間誰しもこうした一面を持っているが、じっと堪えているのか、発散しているのか。この本の人気の原点は、表紙に書いてある「時どき戦い、時どき負ける」状況に同情し、納得し、癒されているのかも知れない。

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