「少子化は世の中を良くする機会」 ―プラス思考は金の卵―
オンライン編集長 渡辺 貢成:4月号
少子化という言葉が今後盛んに出てくると思います。政治家、評論家が心配事を並べ立て、「女性は子供を生む云々」で顰蹙を買いましたが、喉もとすぎれば、誰も、何も手を打っていないのが現実です。日本人は根が楽観的な人種だからでしょう。
少子化で最も困るのは働く人がいなくなることです。少子化の話題になると必ず少子化予備軍を何処から調達するか考えるということが議論の対象になります。そこで移民の話が出てきます。次の議論は移民に対する賛否両論の意見に展開します。そして結論が出ないままで議論が終わり、何のフォローもなく日時が立ちます。聞いてみると自分たちは検討したと思い込んでいます。何も進展していないのに納得しています。
実はよくある話ですが、皆さんも人ごと考えているのではないかと思います。多分自分に関係があると思っていませんから、何も手を打っていないと思います。その意味で皆さん方は標準的な日本人ということになります。
さて、議論をもとに戻します。では本当に働く人がいなくなるのでしょうか。これは移民の話より先に考えるべき問題ではないでしょうか。もし、このテーマに関するプロジェクトマネジャーなら、移民の話でなく、「問題の本質」は何かというところから出発します。少子化は日本が世界で最初に直面する大きなテーマで、これは必ずしも負の要因だけでなくチャンスとなるかもしれません。しかし、チャンスにするには企画し、じっくり時間を掛けてこの機会をモノにする戦略が求められているテーマだからです。
人手は何処から出てくるか。@定年延長、A家庭の主婦、B女性の更なる登用が考えられます。でもモット大切なことは非生産性な仕事をしている人々の生産性の向上です。@役所関連業務の生産性を上げると公務員の50%は訓練すれば新戦力になります。良質な民間への天下りが実現します。A次が民間会社の事務の能率向上です。民間の生産性もグローバル化していない企業の生産性が低いことが挙げられています。では、今の日本でグローバル的に活躍している企業はどの程度いると思いますか。全体の10数%のようです。後は生産性の低い仕事をしています。パレートの法則が適用されそうです。20%が一生懸命に効率よく働き、80%の人が非効率的な仕事の仕方をしていると考えてもよさそうです。正直に言うと今でも人は余っています。それは何を意味するのでしょうか?
更に仕事の内容を分析しましょう。一人の人間の60%は情報化や機械化、標準化、ツールの活用で置き換えられます。20%は人間でなければできない高度な仕事があります。20%は機械でやるより人間がした方が安い仕事があります。3Kといわれる仕事です。移民というとすぐこの3K的仕事を想定して議論しています。
これからが問題提起です。日本の企業は最近人材をやめて人財という言葉を使い始めました。これも真剣に考えているかといえば疑問に思います。人財に人間しかできない20%の高度な仕事をやらせているかというとそうでもなく、高度でない多くの残業を押し付けています。これからの人手不足は高度化への絶好の機会ですが、この問題を自分の問題として考えている人は何%いるでしょうか。このままでは高度な人間らしい仕事をする人を移民することになりかねません。そうなると移民が上司になります。逆に人間らしい仕事ができる訓練を続ければプロフェッショナルとして80歳までは働け、優雅な人生がおくれると思います。少子化は皆さん方にとって高度業務と高級生活を営む大きな機会となること請け合いです。ジャンボ宝くじより確率が高いことも確かです。この1年を有意義に過ごしてください。
以上
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