図書紹介
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子どもが10歳になるまでに、親はコレさえすればよい
(学校外教育研究会著、早川裕子編、教育史料出版会発行、2006年12月20日、1刷、237ページ、1,600円+税)

デニマルさん:3月号

昨年文科省は、「いじめ調査」の見直しを発表した。その背景に「いじめによる自殺」があり、その因果関係を解明する意味で調査のやり方を再検討するという。『三つ子の魂、百まで』と、3歳までに躾の基本を教える必要性をいわれている。今回の本は、現在私塾(有名進学塾とは異なり、勉強の基本的なことを教えている)で子どもたちに実際に教えている立場から書かれたものである。その先生方が、生徒である子どもや家庭、学校での教育のあり方や問題点を指摘している。その要点を10歳までに学ぶべきこととして纏めている。

学校でも家庭でもない塾の教育   ―― 地域の私塾での実態 ――
この本で紹介されている私塾は、進学塾ではなく学習塾(補習塾)である。そこで共通した問題は、基礎学力がない子どもたちが多い点である。私塾では、基礎学力を家庭や学校に代わって教えている。基礎学力とは、「読み、書き、そろばん」だと断言する先生もいる。漢字が読めないから書けない。だから文字に興味を示さないので、本や雑誌等から新しい知識を広げる意欲が湧かない。そろばんは算数で、特に九九と割り算が問題と言われている。これらは小学校低学年でキチンと身に付けて置かないから、高学年に進んでも殆ど授業が分からなくなっている。勉強の問題は学校だけではなく家庭でも教える必要がある。

親は3つのことをしっかりやる  ―― 地域の塾長たちの結論 ――
親が10歳までに子どもに基本的生活の躾を身に付けて置くと、成長してもその躾から自然に勉強する習慣が身に付くと先生方の経験から書いている。それは生活習慣(生活リズム)と健康管理(食事、睡眠、清潔等)と基礎学力の3つである。基礎学力は、何も勉強だけではない。小さい時から読み聞かせや親子のコミュニケーションを図ることも含んでいる。これらは学校で教えることではなく、親が家庭で教えるべきで他の方法では補完しづらい。

子どもたちはどう見ているか  ―― アンケート調査から見えるもの ――
この本の出版にあたり子どもたちと親にアンケート調査をした。子どもたちに「我慢できない程イライラしたらどうするか」の質問に対して、外部発散(殆んどが物にあたる等)が30%、内部に納める(自分の部屋に閉じ籠る等)が30%、何かをして紛らわすが30%で、人に相談するが10%であった。この結果から多くの子どもたちは、状況に応じて行動できる「普通の子ども」である。また親も子どもの教育に悩みながらも、子育てを楽しんでいる「普通の親」であった。どんな時代でも子どもの躾や、教育をするのは親の責任である。

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