PMプロの知恵コーナー
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「マンション建替プロジエクト奮闘記(その10)」

PMAJ関西支部 岡本 政義:2月号

 前号でのご報告通り、昨年11月19日(日)の臨時総会で全戸71戸のうち4戸の反対者を除く67戸の圧倒的な大差でT社を事業協力者として建替えを進めることに決しました。そして昨年の12月1日付けでT社と基本協定を締結しました。

 しかし、これはあくまで仮契約であり、これから全戸の「個別面談」を通し各戸のご要望を聴取のうえ、最終的な基本設計をおこない、あらためて総会を実施し、100%の区分所有者の賛成を得て正式契約をおこなうことになります。

 そのため、昨年12月22日外部区分所有者を含めた71戸全戸に「総会議事録」、「T社との個別面談日程表」、「個別面談のための事前アンケート」などの資料と、建替え計画資料(マンション全体配置、各階平面図、標準間取りメニュープラン図面集、仕様一覧、設備一覧、リビング・ダイニングルーム、和室、寝室、収納スペース、キッチンスペース、バスルーム、サニタリールーム設備等イメージ写真など)を取りまとめ一括配布しました。
 個別面談希望日と、事前アンケート回答は、1月10日(水)までにT社宛て返送願うこととし、1月22日(月)から管理人室で個別面談を実施することになりました。

個別面談の事前アンケート内容としては、@専有部分に関するもの(希望面積、間取り、希望階、区画位置、フリープラン等オプション)、A共有部分に関するもの(建物外観やエントランス、駐車場、廊下、エレベーター、集会所、ゴミ置き場その他)、B仮住まい、引越し、C抵当権などの設定、借家の場合の賃貸借条件、D転出による売却希望有無、などであります。

さて本奮闘記は、先行き不透明のなかではありましたが、リアルタイムな進行で臨時総会を終えT社との仮契約までこぎ着けたのは幸運以外なにものでもなかったと思っています。
しかしこれからが本番であります。次の臨時総会で100%の同意を得て本契約にもってゆくためには、区分所有者との個別面談を通して充分な検討を加え全戸の満足をうる最終計画をおこなうことが必要であります。
 これはT社主体でおこなわれ2月一杯かかる予定ですが、その間には前回と同様1〜2回の説明会開催により理解を得る必要が生じるかもしれません。それに対し我々委員会は、同社がスムースにこの作業を遂行するための全面的なサポートを行うことになります。

 委員会としての当面の課題としては、反対者4戸の建替え同意をうることと、未調整の隣接地391.31uの活用があります。反対者との対応については、次回ご報告する予定ですが、隣接地活用については説明会を利用し調整のうえ結論をうる考えであります。
 ここで読者の方々にご了解願いたいことがあります。昨年5月より連載してまいりました本奮闘記は、次回(その11)でひとまず打ち上げと致したいと思っています。
 理由としては、当面の目標は年度末臨時総会開催により、100%の同意をえてT社と本契約をおこなうことでありますが、これは個別面談などを通しての充分な時間をかけた検討が必要があり、毎月のリアルタイムな報告は困難な段階になってきたからであります。この後の進展は稿を改め、しかるべき機会に報告したいと思っています。

 次回でひとまず稿を閉じるにあたって、区分所有者の方々に対する説明会でも使用した、筆者作成の建替え採算試算をご披露しておきます。次回報告予定の建替え反対の方々に対しての説得にも、これを基本に進める予定です。

「等価交換の建替え事業の特徴は、余剰容積により増床した戸数の住居を売却することにより、区分所有者の自己負担を必要としないか、あるいは負担軽減が図れる点にあります。即ち、増床戸数の販売による収入で、デベロッパーの経費、仮住まい費用などをふくめた総建設コストが捻出できれば、自己負担を必要としないことになります。」<昨年5月号(その1)報告の再掲>

下記は、これを基本とした採算試算であります。
<収入>  
専有面積;容積対象面積(計画敷地面積×200%)― 容積対象共用部分
余剰専有面積;専有面積10,320u―還元専有面積80.0uХ71=4,640.u
収入(余剰専有面積×販売価格);  4,640.uХ575,000=2,668,000 千円
<支出>  
デベロッパー費用 2,668,000Х0.10= 267,000 千円
仮住まい 200,000 〃
☆建築工事 2,201,000 〃
合計 2,668,000 千円
建築工事金内訳推定 <工事延面積17,713u(ベランダ込み),
                    施工面積15,350u(ベランダ除く)>
    解体工事(解体物処分、整地を含む) 70,000
    設計管理費(基本・実施設計、施工監理など) 60,000
    建築費 2,071,000
<施工単価は施工面積あたり135千円/u(446千円/坪)>
合計 2,201,000千円
   

 施工単価参考データ(日経アーキテクチュアー 2006/2/13)
施工単価参考データ
<当マンション採算試算の施工単価44.6万円は、関西マンション業界の発注単価としては一般的な数値と思われる。上表は趨勢を見る上での資料です>

 上記採算試算は、T社の建替え計画を筆者なりに推算したものですが、次回ご報告予定の建替え反対の方々の説得にもこれを使用するつもりです。
 臨時総会において、T社に決定するまえにD社に再度ヒヤリングすべきであるとの強硬な要請をもっておられた方々に対し、D社の問題点を採算面からも取り上げ説明しようと思っているからです。成否は、やってみなければわかりませんが、100%合意形成を目指し納得して貰うつもりです。
 最終回ご期待ください。
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