PMプロの知恵コーナー
先号

「マンション建替プロジエクト奮闘記(その11)」

PMAJ関西支部 岡本 政義:3月号

 1月19日、本年初の第17回委員会が開催されました。目的は、1月22日から管理室にて全戸を対象とする「個別面談」が始まりますが、実施にあたって個別面談日程と事前アンケート集約状況をT社からお聞きし、委員会としてサポートする事項について調整することでした。

 個別面談の目的は、希望面積、間取り、希望階、区画位置、フリープランなど専有部分に関する要望を聴取し最終設計に反映することですが、他に建替え反対4戸、T社選任反対4戸の状況把握もありました。

 反対者対策ですが、これはT社の問題でなく、我々区分所有者の問題であります。採決された四号議案の「T社との基本協定書」は、区分所有者全員の賛同によって始めて発効する条件になっており、なんとしても全員合意に持ってゆく必要があります。

 本件検討結果は、一号議案「修繕か建替えか」で建替え反対の意向4戸のうち、3戸は調整を終わり反対者は現状維持を主張するK夫妻のみとなったこと、三号議案「T社を事業協力者として選任するか」に反対の意向4戸のうち2戸は調整を終わり、第1回の説明会でD社転出価格動議をだされたG氏と、建替え反対であるが、建替え決定となった場合「有利な条件を提示しているD社から委員会が具体的なプランの提出を要求し区分所有者に説明してほしい」と主張されているKご夫妻の2戸のみであることが確認されました。

 外部に居住している私とY氏はこの調整に関与していなかったのですが、委員長の話によると、Kご夫妻は話を聞くことすら拒否されておられる状態のようでした。しかし私は、昨年の臨時総会でKご夫妻が必死に主張されている「D社がT社より有利な条件を提示している」ということは、我々委員会が的確な説明をしていない為の誤解であり、委員会としても説明責任があると思っています。Kご夫妻とは以前我々が居住していたときに、子供を通して交流があった仲でもあり、内心これは、我々2人の出番かと思いました。Y氏と閉会後コーヒーを飲みながらその対策について話し合いました。

 G氏に対しては、G氏の友人であり氏の提案を委員会に紹介した委員の方に調整をお願いすることにし、Kご夫妻は、私とY氏で努力してみようと考えました。

 2月6日、私はK氏あて文書を送付しました。その内容はT社とD社の提示内容を一覧比較したものとD社の総合評価でありました。

 前書きとして「実は、私はD社に関しては、やれるならやってみろと傍観していたきらいがありました。今回、貴ご夫妻の指摘をうけ、委員をはなれ個人として冷静に見たD社評価をおこないました。ご一読願得れば幸いです。ご一読のうえ、Y氏とご一緒に昔のよしみでお会いできればと思っています。」としました。以下その要旨をご報告します。

 総合評価としては、D社は基本構想、基本計画とも問題があり、区分所有者の100%同意をとることは到底無理であり、事業協力者として区分所有者に推薦することはできないと判断します。

 たとえば、販売価格を周辺価格より割高の70万円/uとしている問題があります。この価格で販売可能ならT社に比し約2割増の収入が図られ、建替え事業の採算計画で最も重要な建設費に約2割の余裕がもてることになります。しかし、もしこれが絵に描いた餅の場合のリスクが問題になります。我々にそのツケがまわり還元面積減少交渉がおこる可能性があります。

 建替え最大の重要ポイントである販売価格の設定は、周辺価格の現状をふまえ実現可能な価格におさえ、そのマーケットプライスに挑戦する採算計画でなければなりません。最近のマンション価格の上昇は採算計画にプラス要因として働きますが、これを先食いした価格設定は、問題を先送りした計画になりかねません。採算計画は現状マーケト調査からのスタートでなければならないと思います。先の4社引き合い結果でも各社の販売価格設定は、53万〜57.5万/uでした。

 次に還元面積80uの提案は評価できますが、評価額を50万円/uとしている理由がわかりません。もし70万円/uの付加価値をもつものなら、転出価格ならびに還元面積80uからの区分所有者の希望面積増減も同額の70万円/uにする必要があります。

 これらは建替え事業の基本であり、本当に我々区分所有者の建替えに対しての責任ある配慮がなされているのか疑問をもちます。
 また基本計画では、地下一階住居、立体駐車場など我々からみて設計変更が必要な項目もみられますが、また、建設費、施工面積など当方での採算評価に必要なデーター提示がないのも不満であります。

 以上は、Kご夫妻にご送付した文書の概要ですが、2月17日電話連絡したところK氏は以前と同様なご返事に終止し、話し合う気持ちになっておられない模様でした。3月4日に予定されている第18回委員会の日を利用し、Y氏と訪問しようかと思っています。

 「個別面談」は順調にすすみ、2月後半で終わる予定であります。そして3月4日、T社からその面談結果と基本設計見直しスケジユールの報告を受ける予定です。

 しかし我々委員会としては、現在依然として反対の立場をとっておられる2名の区分所有者の方々に対する調整が残っています。何としてでもこの調整は成功させねばなりません。基本協定書からの方針変更は、再度総会の採決が必要で、建替え計画の遅れにもなります。T社から「個別面談」でも大多数の区分所有者の方々から建替えを楽しみにされていることを聞くにつけ、2戸に対する調整を急ぐ必要があります。

 さて、昨年5月より投稿を開始しました<マンション建替えプロジエクト奮闘記>も本号をもって、ひとまず打ち上げと致します。
 本プロジエクトは、私にもプロジエクト取り組みについての貴重な経験を数多く与えてくれました。機会を見つけ後日談を報告したいと思います。
 親愛なる読者のみなさま、お付き合いしていただいたことに感謝し本稿を閉じます。
おわり
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