PMプロの知恵コーナー
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「PMのリース業への挑戦 (13)」
−ベンチャービジネス−

向後 忠明:2月号

 先月号までは案件をベンチャービジネスの原則論に基づき評価し、図らずも自分の意志とは違った結果となったこと、そしてその結果、関係各社は共同事業契約に調印し、本案件を進めることになったことまで話しました。

 しかし、作業を開始してみると、LEDと言った技術やこの技術を使用したインテリアー系装飾分野などに関わったこともない担当者が多く、また新しくゼロから会社を創ると言った「起業」についても未経験の人たちばかりでした。

 そして、この時点でも具体的な対象となる顧客もなく、技術や実績はアメリカの技術導入先のものであり、「独自の売り物」もなく、何から始めてよいのかまったく検討がつかない状況でした。
 案件評価では本LED事業にあまり良い点を与えなかった私ですが、この様な状況の中、当初の企画から携わっていたこともあり、否応なく私がまとめ役に指名されることになりました。
 一つだけ心強かったのは各社の責任者(社長や役員)が本案件に前向きに協力してくれていたので、仕事のやりやすさはありました。最もそれだけに責任も重く感じました。

 このような事情から、各社の決定権限がある人(各社の社長や役員)にも月に一回の割合で集まってもらうことにも快く賛同してもらえました。
 そのため、本事業を進めるために当面必要な、@顧客の紹介または発掘、A技術導入に関するアメリカの会社との条件折衝B本分野の専門知識を持った必要人材の採用なども早く決まりました。
 その後、市場や競合相手、そして顧客などの調査も行い、その結果と初期の事業計画とのFIT&GAP分析も行い、実行に際して問題となりそうな点の洗い出し、そしてその進め方等の話などをしました。

 このようなことを5ヶ月ほどやってきましたが、これまで頭の中だけで考えてきていた構想や企画がより具体的になり、いろいろなことが分かってきました。。

 例えば、日本においてもすでにLED技術を使用した装飾、看板が多く採用されていること、たとえば東京銀座のビル屋上の看板や壁面の公告そして六本木や表参道での街路の装飾そして関西などでの各種ビルへの装飾等々看板や各種展示物に採用されているのがわかりました。
  読者諸氏には全く馬鹿にされそうな話ですが、このような知識程度でこの案件の“云々”を述べていたと言うことは非常に恥ずかしい思いがしました。

 このように現地の実際を見てはじめて、LEDは一般のネオンに比較し、派手さやドギツさはなく、淡い色ややさしいい色の表現による各種照明への適用、省エネルギーによる環境分野への適用そして農業分野への応用等が出来ることがわかり、今後、さらにLEDの普及が図られるであろうとの感触を得ることが出来ました。
 しかし、基本となるLED素子の値段も高く、技術的にまだまだ黎明期のような感じでもあり、時期的にまだ本案件への進出は早いのではないかとのとの感触も持ちました。しかし、一方では今やっておかないと他の者に先を越されてしまうとの危惧もありす。

 このようなことをいろいろ考えながら、実績も、技術的知見も、そして芸術的素養もない者たちが本案件を成功させねばと知恵を絞りながら毎日を進めました。

 そして、ある日、ある企業(コンビニ)から、店の看板(ファザード看板)を試行的にLEDを使ったらどうなるか検討してみてはとの話が舞い込んできました。
 早速、関係者が集まり、顧客に対する提案内容をどのように進めるかを検討し、各種調査から得られたデータを分析し、コンビニに適応できる省エネルギー対策や看板の薄型化と害虫進入防止を目的としたLEDの適用を提案することになりました。
 そして、プレゼンテーションを行ったわけですが、「案ずるより生むがやすし」で顧客も我々のプレゼンテーションに興味を抱き実証試験まで持ち込むことが出来るようになりました。
 一方、この案件を通してわかったことですが、コンビニは意外と省エネやCO2削減などの環境問題にも多いに興味を持っていて、多くの他大手のコンビも同じ考えを持ってLEDの採用を考えていることもわかりました。

 このことに我々も気をよくして次は大型ビルへのアプローチと言うことである大手の不動産会社へのアプローチも行いました。ここでもすでにビル間をつなぐ地下通路やガーデンを利用したイベントなどのへのLEDの採用を考えていることがわかりました。

 このような活動でいまさらのように分かったことですが、われわれは議論ばかりをし、具体的な顧客アプローチそして顧客情報の入手を二の次にしていたため、正確な情報がはが入っていなかったことがわかりました。
 一般的に顧客は市場のニーズから何を求められているのか常に勉強しています。そして、技術は常に発展していて、顧客はすでに我々よりも先に新しい技術の採用を考えていることがわかってきました。
 得てして、大きな企業は新しいことをやると心配が先にたち議論ばかりが先行し、実際が伴わないことが多いです。
 問題なく進められると思う案件でも、「石橋をたたいても渡らない」エリート集団が多いほど、新しいことは先に進まないような気がします。
 今回は、各企業のトップが参加し、積極的に顧客発掘や紹介をしてくれたことや重要事項の迅速な決定により、顧客要求にも速やかに応えることができたので、次の仕事に結びつくと言った良い循環が生まれてきました。

 このような経過をたどり、頭の中だけで考えていた事業計画も実際のマーケットに近いものにブラッシュアップされ、より具体的な事業の将来予測できるようになりました。
そして、事業計画書の見直しを行い、これに従い会社設立趣意書を作成し、資本出資の話を煮詰め、会社の名前、組織、人員を決めるなどの、会社設立のための具体的な作業を行いました。

 ここから事務所探しや会社登記などを行い新会社として、実際的な事業の進行が始まり、大変な仕事になります。
 しかし、この時点で著者は役割の終結を宣言し、他の人に新会社の進行に関する役割としてバトンタッチし、次の仕事に移りました。

 来月号からはこれまで「PMのリース業への挑戦」で話してきたことのまとめをしてみたいと思います。
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