「PMのリース業への挑戦 (12)」
−ベンチャービジネス−
向後 忠明:1月号
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。 2007年元旦
昨年の話になりますが、12月号にて以下のような質問をしました。
「このような技術を今後事業化することで動き出しますが、まず読者諸君に質問ですが、前月号(11月号)の投資決定の原則と突合せ、どちらが成功の可能性があるか?考えてみてください。」
以下にその検証結果を示します。」
検証項目 |
@モータコントロール |
A燃料電池 |
BLED |
備考 |
市場性 |
○ |
△ |
△ |
A、Bは今後の技術開発進捗に依る。 |
新規・独創性 |
○ |
◎ |
△ |
Bは@及びAに比較し新規性に乏しい |
収益性 |
◎ |
◎ |
△ |
Bは競争力面での弱みがある。 |
成長性 |
○ |
◎ |
△ |
@Bはこれからの市場のパイが小さい |
社会貢献度 |
△ |
◎ |
△ |
CO2排出削減にはどれも貢献するがAが最も大。 |
経営能力 |
△ |
△ |
◎ |
Bは大企業が出資・関与 |
競争力 |
◎ |
◎ |
△ |
@、Aは特許に守られ、Bはソフトウエアーノウハウのみで競争相手も多い。 |
総合 |
○ |
◎ |
△ |
@ はモーターという単位から数は会社規模からの販売数が限られる。
A は他の燃料電池からの差別かも大きく環境に優しい自動車、家屋用発電等の市場性、として大いに伸びる。
B の技術ノウハウはLED動画ディスプレーのみで市場汎用性は低い。 |
私のこれまでの関係者からのヒアリングや検討結果では前頁に示すような結論となっています。読者においてはこれらの案件の背景や状況もわからない事情もあり、返答にも困るところがあったと思います。
それでは肝心の会社としてはどのような判断かと言うとBのLEDを採用することになりました。
「何故、私が最も低い評点とした案件が採用されたのか?」と読者諸君は当然疑問を持つことでしょう。
その理由は、評点の高い@Aはわが社のベンチャービジネス担当(ほとんどIT関連の技術者)がその報告書の中で、@及びAは将来性やライセンス取得の曖昧さ、そしてその結果の市場性に問題があることを提言していました。その報告書を技術音痴の担当役員が鵜呑みにし、不採用の結論を出しました。
役員としても数少ないリース会社に所属している技術担当の報告に異議を唱え、これを採用するには相当の勇気が要ることになります。
そのほかの理由としては、@及びAを扱う会社が未だ小さな会社であり、財務的基盤が弱いということもありました。
特に、@についてはすでに大きな会社での採用が決まっている、Aについては環境省での燃料電池採用のビットにも参加し、優秀商品として採用されています。
このような状況を考えると誰もが@やAのケースが採用されると判断します。しかし、採用されることがなく、Bのケースが採用されました。
私はこの時点で、この会社の技術能力や市場分析能力のなさにあきれ返りました。
その後、資金調達の依頼のあった開発会社に謝り、本案件から手を引くことにしました。
一方のLEDの案件は私自身が当初からその事業構想の作成に携わってきていましたが、LEDのコストや汎用性にまだまだのところがあり、その事業性にも疑問を持っていました。
本案件において唯一の新規性は今回採用のアメリカよりの導入技術だけです。
しかし、この応用分野はビル壁面前面にディスプレーするLED装飾などと言った装飾分野であり、市場も狭く特殊な分野です。
どのように考えても、我々が経験したことのないソフトオリエンテッドな芸術・デザイン素養の必要な分野です。
それなのに何故??
その理由は本案件を持ってきたのが、ある日本の有名企業であり、関係する会社のトップに近い人たちに本事業を推進したいとの強い意識があったようです。
もうひとつは技術導入先のアメリカ企業の業績が本技術利用により大きく業績を伸ばしていることでした。
私自身も新たなビジネスの種をつぶしたくない意識もあり、がんばってきましたが、このようないろいろな事情が絡み私の判断とは異なる結果が出てしまいました。
そして、これ以上異議を唱えても始まらないのでLEDの事業化の検討に入ることになりました。
「サラリーマンはつらいよ!」ですね・・・・・・
さて、このLEDの事業に参加する企業は3社ですが、一社は私の所属するリース会社で後の2社はメーカと設備関係のコンサル会社です。
まずは出資者3社の事業合弁に関する契約書の作成とその内容確認、そしてサインということから始まりました。
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