PMプロの知恵コーナー
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「PMのリース業への挑戦 (11)」
−ベンチャービジネス−

向後 忠明:12月号

 前月号では「ベンチャービジネスとは!」について、その一端を述べましたが、起業によるベンチャービジネス(ベンチャー企業)の難しさを少しはわかっていただけたでしょうか?

 中にはサラリーマンで一生を終わらせたくないといって大企業をスピンアウトして起業していく人もいます。中には、一度社長業などもやってみたいという人もいます。
 彼らはそれなりの勝算を持って会社を立ち上げ、そして人に使われずに自由な発想で自分を生かすことの出来る仕事をしたいと思って起業することと思います。
 しかし、私もサラリーマンでしたのでその気持ちはよくわかりますが、世の中はそんな甘いものではなく“勢いや精神論”で起業は出来ません。

 私のこれまでの経験では個人的に起業をする場合には大きく分けると次のような3つのケースがあるように思います。
 ひとつは資本、仕事の面で強いバックがあって、その裏づけを持って起業する、二つ目は他に真似の出来ないすばらしい特許又はライセンスをもって起業する、三つ目は自分のプロフェショナリティーをもってコンサルティングのような業態の起業等々があります。
@ のケースは個人の提案を主体とするが、資金面において個人的に起業するといったケースはないです。どちらかというと大企業が子会社や最近流行の社内起業家の育成といったケースでの採用が多いです。
このケースは事業立ち上げや金融上の個人的リスク面から見ると、これから述べる他のケースに比べ比較的リスクファクターは少ないと思います。
A のケースはベンチャービジネスの中でも最も多いケースです。
このケースは一見、順調に起業し、事業化できそうに思いますが、研究者や開発者の「井の中の蛙、大海を知らず」的な唯我独尊の思考が障害となり、事業化又は商品化に当たって問題となり、事業として成り立たなくなるケースが多いようです。
 今、流行のMOT(Management Of Technology)の世界であり、開発と商品化の間にある障壁「死の谷」を如何に克服するかにかかっています。
B のケースには種類はいろいろありますが、最近のケースでは金融やIT?の世界で多くのコンサルティングが活躍し、これを発展させたファンド組成のコンサルタントも出てきています。いわゆる金回りのサービスといったものです。
プロジェクトマネジメントコンサルタントや経営コンサルタントなどもこれに相当します。
 起業して、もっとも大事なことは、他人又は自分資本にて会社を作ることから始まり、自社のもつ技術や能力を買ってもらうお客を見つけることです。
 その前に、お客が魅力あるサービス又は商品とするには自分の持つ技術や能力を実証する必要があり、そのためには少なくとも1年以上の期間が必要です。
 この間の資金的余裕、そして新しい技術の実証のための資金等も必要になります。
 そうです!
 この期間がいわゆる起業の“死の谷”になるのです。この期間をクリアーすることによってその事業が成功するかどうかが決まります。
 もうひとつ重要なのが、人材です。しかし、優秀な人材ほどコストがかさみます。そのためには そのコストに見合う仕事を創らなければなりません。この収入と支出のバランスが崩れると倒産となり、無一文となります。
 そのようなことを考えると、
@ のケースは事業がうまくいかなかったら大企業が何とかするといった甘えの構造もあるので、蒸気のような絶望的なことにはないません。
A のケースがもっともハイリスクハイリターンのケースでしょう。成功すれば大きなビジネスとなり、起業として成功するが、マーケットにその技術が受け入れられないときは上記で述べたような悲劇が待っています。
B のケースは失敗しても人さえ雇い入れなければ、自分だけの問題であるので大きな負債もなく、ローリスクローリターンで終えることが出来るでしょう。
私は、読者諸君の中に“一度社長業をやってみたい”と思われる人がいたら、起業として勧めるのは、このケースが一番だと思います。
 私がリース会社で主に扱ったものは、Aのケースが圧倒的に多かったように記憶しています。
 しかし、前号でも説明しましたようにあまり当てになるものはありませんでした。しかし、その中でも少しはまともなものもありました。
 少し前置きも長くなりましたが、その一部を紹介し、その案件がどのような経緯をたどったかを、これから具体例として説明します。
  そのひとつは前号でも予告しました“ある海外よりの技術をベースとした事業”であり、もう一つは“国内の特許をベースとした技術”の事業化でした。

  前者のビジネスはLEDに関連する技術でした。
  このケースは上記の@のケースであり、大企業同士が資本を出し合って新たな会社を作り推進しようというものです。この技術は特許というよりLEDの利用技術であり、米国の技術を取り入れ、それを日本のマーケットに導入するといったものです。
  その特徴はLEDのアレンジとそれを動画としてディスプレ−する特有のソフト技術があるということです。この技術を利用すると省電力化に寄与するばかりでなく、他のLEDデザイン会社にはない特徴のあるLEDディスプレー設計ができるということです。

  後者の案件はAのケースに相当するものです。その内容は燃料電池と画期的なモーターコントロールの特許に基づく技術でした。
 この技術は確かに画期的なものであり、特に燃料電池の技術は他のものに比べ常温、常圧にて発電を可能にし、現況は燃料電池の原料となる水素の発生装置を開発し、実証試験を行っているところです。
 この水素発生装置が開発されると現在の水素発生装置に比べその燃料(都市ガス、その他)から水素への変換率も高く、熱の発生もないので、その熱回収を図るような装置も必要なくなります。

 モーターコントロールはこれまでのポンプの入口・出口でのコントロールでなく一般汎用のモータをインバータ化し、モータ自身が流量や圧力をコントロールしたり、トルクを変換したりするソフト内臓の機器を販売・取り付けをする事業でした。

 このような技術を今後事業化することで動き出しますが、まず読者諸君に質問ですが、前月号の投資決定の原則と突合せ、どちらが成功の可能性があるか?考えてみてください。
 では次号をお楽しみに!!!!!!!!!!
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