今月のひとこと
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「日本を日本化したい」

オンライン編集長 渡辺 貢成:2月号

「今月のひと言」は1月26日の日経新聞から記事を題材としたので変なタイトルとなりました。日本人が「日本を日本化したい」といえばバカなことをいうなと思うでしょう。しかしサッカーのオシム監督の次回ワールドカップに向けた日本サッカーチーム育成の言葉として聞くと、何か頼もしい感じがします。

プロ野球の世界では昨年日本ハムを優勝に導いたのはヒルマン監督です。日産のリバイバルを導いたのは日本人社長ではなくゴーン社長です。ここには共通した成功要因があます。

ヒルマン監督の話によると、彼は野球選手として大成した人ではありません。しかし、彼が監督を引き受けたのはマネジメントの専門家として引き受けたのです。彼は日本人を観察し、計画を立て、実行し、試行錯誤の結果、日本人に向いた選手操縦術を会得しました。チームを優勝させるには監督の描く構想があります。これを全員に理解して貰うことです。
理解して貰うためには、最初にその選手の置かれた立場、彼の希望、やりたいことを理解することから始めます。構想がどのように素晴らしくても、選手が支持してくれないと、結果を出すことはできません。選手に指示されたとき、初めて監督は構想と各選手の役割、その役割がチームの勝利にこのように役に立つという説明をします。バンドにスペシャリティを持つ選手は、野球におけるバンドが勝利に大きく貢献している実感をもったプロです。巨人軍はこれらの人々を軽視する評価を行い、ホームランバッターばかり集めました。結果は惨憺たるモノです。いうなれば「日本野球のアメリカ化」を実践してきたわけです。
ヒルマン監督の話によると、日本人は「あなたの役割はこれこれだと明確に指示すると必ず期待に応えてくれた」といっています。結論的に言うとアメリカのマネジメントを持ち込み、日本人に適したマネジメント手法をつくり上げて臨機応変に適用して勝利に導いた。最近の言葉で言えば米国のマネジメント手法を日本のプロ野球チームである、日本ハムにカストマイズした、ということができます。
しかし、この手法にも問題があります。この手法を巨人に持ってきても成功しないでしょう。ここがカストマイズすることの難しさで、日本化という日本もさまざまで簡単ではないといえます。

今、グローバル化という流れが世界を支配し、グローバル化という流れに乗って行動しています。しかし、流れが世界化すると種々の副作用も出ます。「マネー至上主義」が人類にとって大切なものをどんどん破壊しています。価値観の単細胞化、温暖化などがそれに当たります。やっと最近になって米国人の中にもグローバル化のもたらす弊害について警告を発する人が出始めました。

さて、多くの日本人は「日本を日本化したい」というオシム監督の言に期待を寄せています。そこで「日本を日本化したい」とは何かを考えてみました。基本的に日本人を外国人にしたいと思っても出来ない相談です。日本人の特長を活かしながら、世界の誰もがやっていないことを取り入れて日本化する、と解釈すると希望が湧いてきます。日本が金メダルを取った種目は従来にない発想を取り入れて勝ってきました。

最近は日本文化が世界に評価され始めています。日本人はそろそろ先祖が残した日本文化というDNAを誇りに思い、将来の方向にこれらを活用することを考える時期に突入したと感じています。もともと日本文化は輸入文化を洗練させ、世界的に優れたレベルに到達させるという特技で成り立っています。日本人がグローバル化を受け入れ、更にこれらを乗り越えて「日本を世界に誇れる日本化」することが次世代の人々の課題ではないでしょうか。そのためには日本を門戸開放し、優れた海外の人々の力を評価し、活躍して貰うことも大切だと思います。
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