PMRコーナー
「クリエイティブでもいきましょ」
古澤 理:1月号
企業が求める人材像(クリエイティブとイノベイティブって)
最近読んだ記事の中で、「企業が求める人材が、従来のクリエイティブ(創造的)な人材から、イノベイティブ(革新的)に変化した」というものがありました。私の感覚では、クリエイティブとイノベイティブは区別ができなかったので、記事の内容を見てみると、若干無理がある内容と思いますが、創造性を働かせ机上を中心に新たなものをつくり上げるのがクリエイティブな人材であり、あるべき姿に向かって決定された内容を確実に計画通り実践していくのがイノベイティブな人材といった解釈のようです。
このような企業の求める人材像に変化がおきたのは、企業を取り巻く外部環境が激変する中で、先行きの不透明感から中・長計画がたてづらく、直近の複数の課題を計画通り解決できる人材が重宝がられているからだと思われます。しかし、本当にクリエイティブな人材の影は薄くなっているのでしょうか。
プロジェクトマネージャのニーズ
お気づきとは思われますが、イノベイティブな人材って、世間一般で言われているプロマネそのもの。釈迦に説法ですが、プロジェクトの推進役であるプロジェクトマネージャは、決められた期間、コスト内に目標とする成果をあげる人材であり、まさに時代のニーズにマッチしたイノベイティブな人材。SI系のユーザサイドから見ても高額な費用をかけてでも欲しい機能となっているのではないでしょうか。P2Mのモデルでは、システムモデルの領域であり、スコープを明確化し着実にこなすことそのものです。
このニーズに応えるべく複数のプロジェクトを掛け持ちされたり、当初のスキームが外部環境の影響を受けて途中から根底から崩れやり直しで大変な思いをされたりしながら、プロジェクト推進されている方々のご苦労をお察しいたします。
PMR資格の観点でみたクリエイティブとイノベイティブ
私の場合、多くのPMS資格者同様、PMS資格取得時点では本を頼りに独学で受験対策を行ったため、P2Mのテキストの随所に埋め込まれた、複雑系プロジェクトに対応するプロファイリングの重要性に気づくこともなく、あくまでも試験合格のための知識として、イノベイティブな領域がプロジェクト推進の基本であるとの理解をしておりました。
しかし、PMRの半年に渡る試験では、日本で有数の一流プロマネの方々を審査官として迎えており、このなかで多様な事例を通して擬似経験させていただいたプロジェクトで何度も繰り返して出てきた課題は、プロジェクトの目標・目的を追求するスキームモデルです。スキームモデルは、ありのままの姿を分析診断した上で個人の経験や知恵による洞察力を発揮して、目標・目的を明確化していくものでした。これは、クリエイティブな感性がなければ実現できないと思います。
振り返って見れば、自分が関わってきたプロジェクトでも最初のスキーム検討の甘さから、最初の半年間で検討したシステムモデルをプロト版で具現化したとたん、ステアリング評価で根底から作り直すこととなり目標納期を半年もオーバしたこともあり、今更ながらスキーム決定の重要性を再認識させていただきました。
クリエイティブでもいきましょ
勝手な解釈かも知れませんが、P2Mの目標は、@複雑系プロジェクトへの対応、A失敗プロジェクトを激減させる、の二点だと思います。これにはクリエイティブな感性を生かして、ありのままの姿を多面的に分析診断し、そこから導いたあるべき姿を洞察していくプロファイリングによるスキームの熟慮が重要だと思います。
お互い、イノベイティブなのは当然ですが、クリエイティブでもいきませんか。
以上
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