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「PS研究会:PSと人材活用WG」
〜ITベンチマーキングSIG〜

WGリーダー (有)デバッグ工学研究所 松尾谷 徹:12月号

PS研究会とは
 PS研究会は、プロジェクトにおける人的側面、すなわちモティベーションやキャリア開発について実践、研究する任意団体です。PMAJ-IT-SIGのWGとして活動すると共に、財団法人・日本科学技術連盟の研究会としても活動しております。
 PS研究会の「PS」とは、Partner Satisfaction:パートナ満足です。パートナ満足とは、プロジェクトで働く人々の職業人としての満足を指し、PSが向上することは、メンバーの活力向上につながります。メンバーの満足や活力は、プロジェクトにおける人的リスクを低減し、プロジェクトマネジメントにとっても、顧客にとっても良い結果を導くことになります。
 企業経営においてPSに対応するのは、ES(従業員満足:Employee Satisfaction)です。企業の将来性や発展性が、CS(顧客満足)とESで表わされることは良く知られています。21世紀に入り、企業における人的リソースの構成が大きく変化し、従業員満足によって人的リソースの活力を示すことが難しくなりました。従来の職場環境が、プロジェクトと呼ばれる新しいスタイルで再構築されつつあります。
 プロジェクトマネジメントの視点から考えると、プロジェクトを活動側面から捕らえることについては、それなりに出来るようになってきました。スコープ管理、WBS、EVM、リスク管理などが研究され、規範化され実践されつつあります。しかし、仕事満足、キャリアパス、人材育成、メンタル問題など人材活用の側面から見ると、プロジェクトは混乱の極みです。ちょうど100年の20世紀初頭における労働形態の変化と共に生じた混乱、すなわち農業や家内手工業から、労働集約型の工場へと変化した状況に似ています。
 100年前の変化は、紡績業で先行し「女工哀史」として歴史に刻まれています。ひょっとすると、21世紀初頭の変化はIT業界で先行し「情工哀史」として100年後の歴史に刻まれるのではないでしょうか。そんなことが起こらないようにするには、プロジェクトマネジメントにも人的側面から何が必要であるのか。これが、IT-SIGにおけるPS研究会の大きなテーマです。

PS研究会の軌跡
 大きな看板を揚げていますが、PS研究会の活動はまだまだ渚についたばかりです。最初の活動は、PSを計り定量化する「PS調査とモデル化」でした。2002年から始め、のべ3000名以上の調査が行われ、プロジェクト、事業部、企業の状況を診断することができるようになりました。PS調査とPS診断として実用段階に入ったので、日科技連を通して、サービスを提供しています。
 次に始めたのが、プロジェクトの現場において、どうすればメンバーの活力を引き出すことができるのか、その実践手法やノウハウに関する研究です。この成果を実践するため、チームリーダやサブリーダを対象にしたチームビルディングの実践セミナーを公開しました。日科技連では2003年から、PMAJでは2005年から継続しています。今年のPMシンポジウムで好評だったワークショップ「必修!PS流誉め方叱り方:〜メンバーの心に響くリーダーシップとは〜」もこの研究の一環です。

PS研究会のメンバー
 PS研究会の特徴は、幅広いメンバー構成にあります。約50名のメンバーは、大学院生さんから、名誉教授まで約50歳の年齢幅があります。現役バリバリのプロジェクトマネジャー、若手リーダー、新人、人事部門、品質部門、教育部門、産業カウンセラー、学者、コンサルタントと非常に多彩です。PS研究会は、この多彩でモティベーションの高いメンバーの自律活動によって支えられています。例えば、オンラインジャーナルで好評な菜の花+PSグループが担当している「働きやすいプロジェクト環境のために」などです。今年9月にシドニーで開催されたProMAC06では4編の論文発表を行いました。

PS研究会の活動スタイル
 PS研究における活動の特徴は、FST(Field Study Team)と呼ぶ分科会にあります。PS研究会のメンバーは、PSの考え方に賛同しますが、それぞれが所属する企業や組織への貢献、自分のキャリアアップなど、それぞれ異なった意図を持っています。メンバーがどのようなテーマで学び研究するかは自由ですが、ばらばらでは上手く行きません。そこで、実践や研究のフィールドを同じくするメンバーが集まり、チームを作って活動しています。現在、次の4つのFSTが活動しております。
1. セミナーFST          リーダー:森本氏(TIS)
PSを実践するには、先ずプロジェクトで人を動かす立場にあるリーダー層に対して、チームやリーダーシップの実践スキルを高める訓練コンテンツを開発する必要があります。教える側のスキルアップも必要です。このようなニーズから生まれたFSTです。FSTの参加者は、人事育成、スタッフ部門の方と、講師スキルを高めたい方が参加しています。
2. メンタルヘルスFST     リーダー:榎田氏(CIJ)
IT業界におけるメンタル問題は、悪化の一途を辿っています。このFSTは、プロジェクトにおける早期発見から一歩進んで、予防の可能性について研究、実践をおこなっています。FSTの参加者は産業カウンセラー、人事部門、キャリア開発部門に、現役PMが加わって活動しています。
3. 普及FST           リーダー:艸薙氏(東芝)
プロジェクトにおける生産性向上の第一は、効果的なツールや技法を選択し、適切に使うことです。ところが、ITプロジェクトでは、プロジェクトの局面を考えず的外れなツールをトップダウンで推進するスタッフ、適切に使うことができないプロジェクトの人々など、この基本的なアプローチが機能していない現状があります。この研究会では、この課題を普及問題として取り上げ、研究と実践に取り組んでいます。FSTの参加者は、生産技術系のスタッフ、プロジェクトマネジャーで、専門性の高い活動を行っています。
4. MM4             リーダー:松田氏(富士通)
今年になって設立された新しいスタイルのFSTです。PMO(PM Office)や経営の視点から、人的リソースの活性化をはかる実践的な活動です。「メンバーを元気にするPM活動、ダメにするPM活動」をサブテーマとし、事例を集め、事例から事実を分析し、体系化を目指します。最終的には、PS調査と連携し、プロジェクト診断、対策メニューへと発展させます。参加者はバリバリのPMが中心となって活動しています。
第一回 PSシンポジウム(予定)   2007年2月15日−16日 東京・千駄ヶ谷
 PS活動も4を経過し、それなりの成果が現れてきました。そこで、企業やプロジェクトにおいて実践されたPS活動の成果を広く知って頂くため、シンポジウムを計画しております。第一回目のテーマは「新・活力再興:〜本気で考える。あなた、チーム、会社の元気とは〜」と題し、過去とは異なる現代型モティベーションについて導入事例6編を中心に開催します。

第一部 プロジェクトメンバーを動かすリーダー向け  2月15日(木) 13時−17時
 PMシンポジウムで好評だったワークショップ「必修!PS流誉め方叱り方:〜メンバーの心に響くリーダーシップとは〜」を4時間バージョンに強化しました。PDU対象で計画中です。 

第二部 PMO、上席PM、スタッフ、推進者向け 2月16日(金) 10時−17時 その後意見交換会
  • 講演     企業におけるPSの役割
  • 事例A群  企業レベルで導入した事例、 経営レベルで導入した事例
  • 事例B群  現場にファシリテータとして導入した事例、 プロジェクトごと導入した事例
  • 事例C群  PMOとして導入した事例、カウンセリングを導入した事例
  • パネルとQ&A 「新・活力再興:〜本気で考える。あなた、チーム、会社の元気とは〜」
  • 意見交換会 17:30から、参加者、発表者で意見交換会を行います。
Partner Satisfaction
PSシンポジウムは、近日中に募集を始めますので、興味のある方はPS研究会のHPこちらをアクセスしてください。


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