働きやすいプロジェクト環境のために
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〜挨拶は“安全な仲間”のシルシ〜

木犀草:12月号

 「挨拶は大事」なのは、社会人の常識ですが、それはなぜかを考えたことがありますか?今回は挨拶の意味とそのもたらす効用をPS流に考えます。

 おぬし何者じゃ!?

 「山」といえば「川」。これ、何のことか分かりますか?その昔、忍者が誰かと出会ったときに敵と味方を見分けるために使った”合言葉”の代表的なものです。この合言葉は、赤穂浪士が使ったことで有名になったらしいですね。他にも忍者の合言葉といえば「谷」といえば「水」、なんていうのもあったとか。味方かどうかを見分けることは、周りが見えない中で戦をする忍者にも赤穂浪士にも重要なことでした。
 仲間を見分ける行動といえば、動物にも特徴的な振る舞いがあります。例えば、鳥類がくちばしを触れ合うのは、相手を仲間と認めたときだけの行動だそうです。このくちばしを触れ合う行動は、“挨拶”と考えられています。動物の挨拶には、相手の攻撃を避ける、友好関係を形成維持する、求愛を表す、などの意味があります。つまり、動物は仲間かどうか見分けるのに”挨拶”をしていることになります。
 ヒトも動物ですから、本能的に仲間かどうかを見分けようとする意識が働きます。忍者や赤穂浪士が使った“合言葉”も、動物が仲間を見分ける挨拶と同じだということになります。

 あなたは安全な仲間?

 さて、現代の戦場といえば、職場でしょうか。厳しいチェックの弾丸が飛び交い、迫り来る納期や、時には睡魔との戦いが続き・・・敵は上司?お客様?自分自身?人によっては、けっこう厳しい戦場かもしれませんね。でも、この職場、仲間と共に戦う一つの大きなチームと考えることもできます。もちろん、チームやプロジェクトに名前がついていて、明確に“仲間”としてくくられている場合もあるでしょう。
 私たちがチームやプロジェクトで仕事に集中するためには、安心して働ける職場であることが大事です。安心して働ける職場の条件には色々あると思いますが、安全な仲間がいる、というのも大事な要素ではないでしょうか。
 お互いに安全な仲間だと分かりあうためには、職場に姿を現したときに「私は安全な仲間ですよ」とアピールする必要があります。  さて、どうやって「私は安全だよ」と証明しますか?敵にばれないようにしなければいけませんから、合言葉を作るとしたら大変です。しょっちゅう変更して、伝達して、ってやらなきゃいけませんね。さぁ、どうしましょう?
 回りくどくなりましたが、簡単な方法として、挨拶をしてはどうでしょうか。「おはよう」、「こんにちは」という挨拶は、動物の挨拶と同じです。なぜかというと、現代の社会システムが合理的に働いて“挨拶”を“合言葉”の進化形にしてくれたからです。言い換えれば、挨拶をすることが、安全な人間関係をつくる第一歩になるといえるでしょう。

 挨拶されたら

 逆に挨拶をしてもらった方は、相手を安全な仲間と認識したのですから、同じく挨拶を返したり、笑顔を返したりして、相手を受け入れたというサインを送りましょう。
 挨拶したのに無視されたら、寂しい気持ちになりますよね。それは”あなたを仲間として認知したよ”というサインを受け取れなかったからです。仲間として認められていないなんて思ったら、不安になって仕事に集中できないですよね。仕事に集中できないメンバーを作らないためにも、挨拶をされたら返しましょう。広い職場で、誰に挨拶しているか分からない、なんていう場合もあるでしょうが、自分への挨拶でなくても、挨拶を返していいのです。職場というチームの安全なメンバーが来たのですから、あなたも安全なメンバーのひとりとしてぜひ挨拶を返してください。もし、声をかけるには遠いと思ったら、顔を上げて笑顔を送るだけでもかまいません。仲間だと分かってるよ、というサインを送ればいいのです。
 中には挨拶したくない人もいますか?もし、挨拶をしない人、したくない人がいるとしたら、何か心の中にモヤモヤを抱えているかもしれませんね。安心して働く環境を作るために、できるだけ早めにモヤモヤを解消するようにしてみてください。少し突っ込んだコミュニケーションが必要かもしれません。

 たかが挨拶。されど挨拶。
 意外と精神的な影響があるものです。安心して仕事に集中できる職場づくりの第一歩に、まずは、挨拶から取り組んでみませんか。


 編集者コーナー
 このコーナーの編集担当二人が語ります。
木犀草(もくせいそう、以下「も」)「おっはよう!」
花水木(はなみずき、以下「は」)「おはよー。今日はテンション高いね。」
も:「だって私は花水木ちゃんの安全な仲間やもん。アピール、アピール、と。」
は:「ほんと、職場が戦場、敵と味方って感じることがよくあるわー。味方と思っていた人に、ある日突然後ろから刺されたりね。ただでさえ、リスク管理とか最新ITのキャッチアップとかで、仕事そのものがいろいろ大変なんだから、職場は周りじゅうを味方で固めたいよねー。」
も:「ほんと、やっぱり一日は挨拶に始まり、挨拶で終わる、これが基本やね。」
は:「ところで、今日は嬉しいお知らせでーす。読者からメールが来たの!」
も:「わーお。何なに?…ってこれ、PMAJ関係者やないの?サクラ?」
は:「ま、そこのあたりは、突っ込まないで…笑。ほら第二回の電話の話についてですよー。」

前略
毎号楽しく拝見させていただいております。
さて、第2回目(10月号)の職場環境の話についてコメントです。電話が多い理由を知っていますか?
まず、私の信条は、「電話の長いのと、残業が多いのは駄目人間にちがいない」です。
私の観測では、@電話の多い人は、自分からたくさん電話をかけています。A考えて、ある程度の質問をまとめて電話をすれば、すべては2〜3分で終わります。
 (途中略)
草々

は&も:(爆笑)!!
も:「電話が長いのはダメ人間!!納得!この読者、他にも経験則をたくさん持っていそうやねぇ。」
は:「ホント、ほんと。飲み会じゃなくて、普段から、こういう先輩の話をゆっくり聞きたいよね。」
も:「前号の“菜の花さん”もそんなこと言ってたね。」
は:「若者だけじゃなくて、私たちも先輩の知恵をゆっくり聞きたいな。引出しがたくさん出来そう!」
も:「あら、あたしは今でも若者だよーん。」
は:「はいはい、気分はフレッシュでいたいってことで!(笑)。では、次回もお楽しみに!」

 著者、編集チーム:木犀草(もくせいそう:ペンネーム)
関西弁バリバリのPS研究会メンバー。キャリア形成をメインテーマに研究活動中。木犀草の花言葉は「陽気、快活」。プロジェクトをサポートする木犀草になりたいな。当コラムの編集メンバー。
 編集チーム:花水木(はなみずき:ペンネーム)
IT企業の技術職で、現在もソフトウェア開発のプロジェクトチームに参加中。プロジェクトという閉ざされた空間で、いかに個人が幸せに過ごすかを追求、妄想している。PS研究会メンバーであり、当コラムの編集長。
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Partner Satisfaction PS研究会について:PS研究会は、財団法人日本科学技術連盟のソフトウェア生産管理(SPC:Software Production Control)研究会のひとつで、2002年から動機付け(モティベーション)に関する研究を続けています。2003年から、PMAJ(旧:JPMF)のIT-SIGのひとつ「パートナー満足と人材活用(PS&HM)ワーキンググループ」としても活動しています。詳しい紹介はこの連載の第1回目をご覧ください。
 バックナンバー
第1回目 〜このコーナーのご紹介〜
第2回目 〜ソフトウェア技術者が働きやすい作業場所とは?〜
第3回目 〜プロジェクトチームにおける新人の居場所〜
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