「京都の紅葉と地域活性化」
オンライン編集長 渡辺 貢成:12月号
今月は季節の話題を取り上げました。紅葉を求めていろいろと歩きましたが、今年は私自身多くの宿題を抱えているため、紅葉見物はすべて日帰りで済ませました。京都の紅葉は一度行ってみたい思いながら、この季節は混雑を極め、パックツアーか1年前から予約をしないと宿が取れません。しかし毎年紅葉の盛りが違うので1年まえからの予約をする気になれません。そこで盛りを狙って日帰りを企て、今年は暖かかったので何時もより遅めにしました。
日帰りでは時間に制限があるため、嵯峨野周辺に目標をおきました。11月21日9時半に京都に着き、最初はタクシーで嵯峨野とは反対の東福寺にいきました。東福寺は紅葉で有名なお寺ですが、残念ながら紅葉は5分程度でまだ少し早かったようです。少し残念でしたがプロジェクトマネジャーの職業病で「嵯峨野は少し寒いから、最高かもしれない」と不利な状況でも常に自分有利に考え、自己啓発し、嵯峨野へ向かいました。
電車を乗り継いで嵐山につくと12時でした。狙いは天竜寺と隣の大河内山荘です。NHKの放送で大河内山荘の幻想的な美しさを見ていましたから、これが楽しみでした。最初に天竜寺塔頭の宝厳院から臨済宗天竜寺派総本山天竜寺に入りました。パンフレットの紅葉と比較すると7分程度ではなかったでしょうか。人間の欲望は常に最高を求めますが、7分はそれなりに紅、黄、緑の織りなす色合いがあり、これも捨てたものではありません。
天竜寺を通り抜けて、嵯峨野の太い立派な竹藪を通り過ぎると大河内山荘に着きます。ここは俳優の大河内伝次郎が30年間にわたって、映画の収入の大半をつぎ込んで創り上げたもので、四季折々の草木を楽しめる庭園です。この庭園は百人一首で有名な小倉山の南面約2万平方米の荒地からつくりあげられたものです。ここの紅葉は半分が黄色、半分は紅色でその配合が絶妙で、幻想的な雰囲気をかもし出していました。この紅葉に心安らぎ、十分満足できるものでした。
時間に余裕があったので近くの常寂光寺、祗王寺に寄り道し、タクシーが来ないのでJR嵯峨野まで30分歩くはめになりましたが、満足のいくのでした。
実はこのエッセイの本題はこれからです。京都へ来て毎回感心することがあります。年々庭がよくなっていることです。一時拝観料問題が取り上げられました。確かに拝観料だけでも馬鹿になりませんが、庭がきれいになることは拝観料を支払った結果であり、従来のようにただで楽しもうとしなくなったことは日本人が大いに成長したことと思っています。庭以外に大きく進歩したものがあります。それはお土産の種類が増え、内容が良くなったことです。
京都駅の地下のお土産コーナーは漬物、佃煮等多くの店が競い合っています。店の数が増えて、質がよくなり、食べ歩きできます。味がそれぞれ違いますから、自分の好みを探す楽しみがあります。さらに感心したのは京土産の商売上手です。一品500円パックが多いことです。家庭の主婦は旅に出ると近所用のお土産を買います。1,000円単位だと数個しか買いません。500円単位だと配る数が増えて、1,000円単位のパックより結果的に出費が増えますが、主婦は普段の義理を果たせると喜んでいます。そして京土産はみやげ物として喜ばれますから、顧客満足度の高い商売をしています。これらは店先という現場の知恵が商品を創り出しているからです。
日本の地域開発がすべて官製地域開発に依存したため、工夫する努力を忘れ、リスクなしに地域活性化する棚ボタ方式を踏襲してきました。棚ボタ方式の地域開発のお土産をみますと全国共通の生産者にとって割安の、購入者にとって割高の商品が並んでいます。この土産を貰う方はうんざりしています。
京都だから人が行くのではなく、京都をまもる人々の美に対する見識と努力が人々を集めているのであり、金儲けだけで地域開発が成功することはありえないことを実感しました。
以上
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