「マネジメントと日本人の特性」
オンライン編集長 渡辺 貢成:11月号
今回はプロ野球で日本ハムが優勝したので、これを旬の話題として「一般日本人のマネジメント観」について取り上げました。
日本ではカタカナ言葉が氾濫しています。テレビでも日常会話でも、ビジネス・プレゼンテーションでも、カタカナ言葉が多く使われています。この2行の文章の中文字数で30%はカタカナです。
しかし、誰も文句を言いません。カタカナを使うと「カッコいい」と思っているふしがあります。IT関係者は好んで使います。マネジメント、ソリューション、アーキテクチャ、ITガバナンスです。質問してみると80%の人は正確に答えられません。しかし、誰も文句を言いません。それでも日本社会は成立しています。それは何故でしょうか。
その答えは各自がそれぞれ自分流に解釈して、行動を起こしており、衝突したとき、現状に合わせて話し合いが行われ、残業を含めて修正しているからだと思います。
では米国だったらどうなるでしょうか。衝突は確実に訴訟に発展します。従って言葉は正しく定義し、その定義の下でビジネスが行われます。自分流が通用しないのです。
カタカナ言葉で「マネジメント」ぐらい多く使われ、また勝手に解釈されている言葉はありません。よく使われている解釈はマネジメントサイクルで「Plan,Do,Check,Act(PDCA)」があります。その他の言い方として「やりくりする」という解釈もあります。この解釈はそれなりに正しいのですが、ずいぶんと内容に差がありますね。解釈の相違で行動が異なります。では、PDCAが正しいかを考えてみてください。正しいともいえますし、正しくないともいえます。
何が違うのでしょう? PDCAで大切なことはPlanとしての「あるべき姿」が人によってちがいます。この「あるべき姿」を最初に示さないと、参加する大勢の人が何を目標として進むべきかわかりませんから、実は正しいDoができないことになります。次がまた難物です。ある程度仕事を進めると、計画通りに進捗しているかCheckしますが、測定基準がないと、その差を把握できません。やっとその差を測定したところで「あるべき姿」に戻すActionをとります。遅れるには遅れる原因がありますから組織体制や顧客、協力会社を含めた幅広いActionが必要で計画を立てるより困難です。工夫と組織を動かすやりくりが必要です。PDCAを実行する場合でも、これだけ整然としたやり方が求められています。しかし、これでもまだ一つ不足しています。マネジメントの概念の中に時間の概念が包含されていることです。アクションはタイミングよく、決められた時間内にということです。ビジネスは1秒が勝負になることがあります。プロジェクトではありませんが企業経営ではグローバル化時代でも平気で先送りする経営が行われています。マネジメント(経営)に時間の概念があることを知らない経営者の行為です。
では、皆さん方は「マネジメント」をこれほど厳密に実施しているでしょうか。私が見るかぎり、「あるべき姿」を描かずに「やりくりする」を得意にする大勢の人々を見かけます。最後に帳尻を合わせるという手法です。
プロ野球の世界ではどうでしょうか? 日本では現役スーパースターが監督になります。当然「あるべき姿」は優勝ですが、彼は具体的に何をすればいいのか指示しないようです。「練習と、努力と頑張り」です。
日本人も少しづつ利口になりました。「具体性のないマネジメントは競争に勝てないね」ということです。監督に外人を選びはじめました。2年連続外人監督が率いるチームが優勝しています。彼らはマネジメントを基本から学び、マイナーリーグで基本に忠実に実行し、実践的勘とやりくり術を身につけています。長期的な戦いと短期決戦とではやり方を変えています。しかし、ここには「基本」があり、「実践的なやりくり」があり、コミュニケーションによるチームの一体感があります。NHKの対談でヒルマン監督は日本人選手は監督が彼の役割を与え、その内容と理由を説明すると意気に感じて役割を果たすと話していました。彼は3年間の監督業を通じて日本人を研究して、何が効果的か常に考えて行動しています。日本をよく知っている監督が日本人を彼ほど上手に使えないこと理解してください。マネジメントとはこのような内容が含まれています。
成功プロジェクトを解析すると@契約の概念がある、A基本に忠実である、Bコミュニケーションによるチームの一体感があることがわかります。
私たちは「マネジメント」という言葉一つにしても、正しく理解し、これを謙虚に実行していく必要があります。「マネジメント」は決して外人の十八番ではありません。日本人は技術を評価するが「マネジメント」を軽視しているから、外人ほどの効果を発揮できないことを理解してください。
以上
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